カギとなるコミュニケーション力 『リーダーシップの哲学』より(2)
組織には必ず力学が働きます。うまくやったらやったで、周囲から疎まれ、大半の人が積極的に協力してくれないこともあります。その時カギとなるのがコミュニケーションであり、人の気持ちを理解することだと良品計画の松井氏。その秘訣を松井氏は社員食堂のおばさんとの付き合いで身につけたというのです。
松井氏の社会人生活は1973年、西友スーパーマーケットから始まった
教職希望だった松井氏はある事情から西友ストア―(現・西友)に入社しました。最初の配属先は、東京都杉並区の富士見ヶ丘店で、翌年に高円寺店に。新人社員でも、売り場にいる大勢のパートさんをまとめなくてはなりません。経験豊富な30~50代の主婦たちは、指示には従いますが、納得しないときには身が入りません。
バックヤードで働く気性の荒い鮮魚や精肉の職人たちとも、うまく付き合わなくてはなりません。とりわけ重要なのが、社員食堂のおばさんです。食堂に寄せられる苦情にもめげない、ツワモノ揃いのおばさんたちを懐柔しておかないと、おいしい料理にありつけず、大盛などの便宜を図ってもらえません。
そこで、相手の考え方や置かれている状況に気配りし、職人たちの輪に入ってお酒を酌み交わし、食堂のおばさんには差し入れをするなど、コミュニケーションをうまくとることに心を砕きました。こうして最初の3年弱の店舗経験で学んだのは、世代や立場を超えたいろいろな人との付き合い方でした。
新入社員にはさほどリーダーシップは求められませんが、人間関係は仕事の基本となります。その意味で、松井氏のリーダーシップの萌芽はこの時代の体験にあったようだと回想されています。なお文中に「おばさん」という不適切な言葉がありますが、原文を尊重したためであり、よろしくご理解ください。
松井氏は人事部厚生課の課長時代に能力開発担当となり、長期の業績低迷を打破するため、部長以上の役員300人を対象に意識改革のための教育プログラムに取り組みました。研修メニューの一環として、アサヒビールやホンダなど業績好調の一流企業から社外講師を呼び、講演をしてもらいました。
講演者が異口同音に言ったのが、大事なのはやがていなくなる上司ではなく、その後に自分を支えてくれる部下だと。そして、さまざまな研修を実施しても幹部の意識は変わりませんでした。この体験から松井氏は、「変革では、意識改革は先に来ない。仕組みを変えた後でようやく意識も変わっていく」との思いを抱きました。
参考文献:『リーダーシップの哲学』~12人の経営者に学ぶリーダーの育ち方~(一條和生著/東洋経済新報社)
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