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2016年3月20日 (日)

相手が黙り込む質問を恐れない   『聞く力、話す力』より(5)

このシリーズの最後は、インタビュアーだった著者が思い入れのあるテレビ番組から、2つのショッキングな質問を取り上げます。ひとつは討論番組中に高校生が発した「なぜ人を殺してはいけないんですか」。もうひとつは、マフィアのボスに対する「あなたは人を殺したことがありますか」です。

「なぜ人を殺してはいけないんですか」
いきなりそう聞かれたら、あなたはどう答えるでしょうか。これはあるテレビニュース番組の中で実際に飛び出したものです。終戦記念日にちなみ高校生を集め、いろいろな議論をしているとき、一人の男子生徒が口にしたのです。ところがスタジオにいた大人たちが、その問いかけにきちんと答えられなかったと話題になりました。

この問いかけに、なぜ大人たちはきちんと答えられなかったのか?
おそらく「人を殺す」という行為はいけないことだ、という了解が誰の心のなかにもあり、それは問う必要もないほど当然のことだったからでしょう。人を思わず黙らせてしまう質問。そんな問いはほかにどんなものがあるのでしょう。「私たちはなぜ存在するのか」「なぜ勉強しなければいけないの」「友情とは何か」そして…

「あなたは人を殺したことがありますか」
これは著者が初めて聞いたとき、耳を疑った質問で、質問したのは、マイク・ウォレスという名のインタビュアー。『60ミニッツ』というアメリカの報道番組でのことでした。質問をぶつけた相手は、マフィアのボス。
にこやかに進んでいたインタビューの場は、この質問で一瞬、凍りつきました。

かすかな間があいたあと、マフィアのボスはにやりと笑って言った
「いいえ」。そしてこう言い放ったのです。「嫌いな奴をのぞいてはね」。聞くほうも聞くほうなら、答えるほうも答えるほうです。こう質問されたら、相手はふつう答えないか、話をそらすものです。でもマフィアのボスは逃げなかった。いや逆に言えば、マイク・ウォレスは相手を逃がさなかったのです。

聞くことは賢くなること、人間力を養い、人間として成長すること
さらりと「あなたは人を殺したことが…」と問いかけ、答えさせる。マイク・ウォレスの人間力がそれを可能にしたのでしょう。この人にはちゃんと向きあわなければいけない、そう思わせるものが彼には備わっていたのです。聞く力を磨くことは、人間力を養うということ、つまり何より人間として成長することではないでしょうか。

参考文献:『聞く力、話す力 ~インタビュー術入門~』(松原耕二著/河出書房新社「14歳の世渡り術シリーズ」)

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