やらなくてはいけないことをする⇔やりたいことをする 認知再構成(5)
「その日をどのように過ごすかは、とりもなおさず人生をどのように過ごすかである」と、作家のアニー・ディラードが言っているそうです。
「人生という短い時間のなかで、いま、あなたは何をしたいですか。明日はどうでしょうか。10年後はどうでしょうか」と、参考文献の著者は問いかけます。
心理学者のエレン・ランガーとジュディス・ローデンは、ある老人ホームの2つのフロアを任意に選んで、2つのグループをつくって研究を行いました。
一方のフロアで暮らす入居者には、彼らが必要とするすべてのサポートを提供しました。生活スケジュールを決めることから部屋の植物の水やりまで。介護者がありとあらゆることを彼らの代わりに行いました。
もう一方のフロアの入居者には、ある程度の責任と選択の自由を与えました。例えば、そのフロアの老人は自分で植物を選び、その手入れも任されました。
いつ映画を観るとか、どの場所で訪問者を迎えるかなど、生活の中での選択肢も多くあります。自分のやりたいことを選ぶ機会をたくさん与えられたわけです。
1年半が経って、2つのグループの違いを調べると、その差は歴然としていました。毎日の生活で多くの選択をしているグループのほうが、入居者自身と介護者のどちらの目から見ても、ずっと健康状態がよく、活発で、落ち込むことも少なく、自信に満ち、機敏で陽気だったのです。
そしておそらくこの研究において最も特筆すべき結果は生存率の違いです。
責任と選択の自由を与えられたグループの生存率は、すべてのサポートが与えられたグループと比較して2倍も高かったのです。
植物への水やりや観る映画を選ぶといった小さな選択が、人生の質を向上させただけでなく、寿命をも伸ばしたのです。
人を援助するときには、相手が若くても歳を取っていても、その人に必要なものすべてを与えるのではなく、選択肢を提供する必要があります。
「やらなくてはいけない」から「やりたい」に変わるとき、また、命じられて動くのではなく自由に選択していけるとき、高齢者だけではなく、それが20歳の若者であっても10歳の子どもであっても、その人の人生は大きく変容します。小さな選択が大きな違いを生むのです。
参考文献:『Q・次の2つから生きたい人生を選びなさい~ハーバードの人生を変える授業Ⅱ~』(タル・ベン・シャハ―著/大和書房)
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