パッケージ・サイズが消費に与える影響 感覚マーケティング(3)
既成概念が人の判断を狂わせることはよくありますが、なかなかそのことに理解を示さない人が多いこともたしかです。今回は、同じ量をスモールとミディアムに表現を分けると、食べる量が違い、食べた感覚は逆になるとう不思議なお話を紹介します。既成概念によって、私たちの食生活が大きく脅かされかねないのです。
製品消費量に「スモール」「ラージ」の表示が影響を及ぼすか?
たとえば、ラージ・サイズのポップコーンを購入した場合、スモール・サイズのポップコーンを購入した場合に比べ、消費者はより多くの量を食べます。飲み物も同様で、32オンス(約900ミリリットル)入りの炭酸水を購入した場合は、20オンス(約670ミリリットル)入りの炭酸水を購入した場合に比べ、消費者は多くの量を飲みます。
同量でも「スモール」表記の方が「ミディアム」より量を少なく感じてしまう
パッケージのラベル表記が製品の消費に及ぼす効果を明らかにするための実験では、参加者にミックス・ナッツのパッケージを示し、中身が何グラムかと尋ねました。回答の平均値は、60個入りパッケージにミディアムと記されていると約64グラム、60個入りのパッケージにスモールと表記されていると51.78グラムとなりました。
だから同量でも「スモール」表記だと「ミディアム」よりたくさん食べてしまう
今度は、消費量についての実験です。実験参加者にパッケージに「ミディアム」「スモール」と書き分けた60個入りミックス・ナッツを渡し、実際に食べた量を比較してみました。すると、スモールと表記されている場合は平均約40グラムであったのに対し、ミディアムと表記されている場合は平均30グラムでした。
不思議なのは「スモール」「ミディアム」で知覚と実際の消費量が違うこと
次に、自分がどのくらいの量を食べたかを尋ねました。すると、スモールとされている場合は平均46.3グラム、ミディアムの場合は平均53.9グラムとなり、実際に食べた量と逆の傾向が見られたのです。ミディアムという表記を見ると、消費者はより多くの量を食べたと感じる一方で、実際に食べた量はむしろ少なくなるのです。
「罪なき大食い」現象はこのようにして起きていた!
人は(特にダイエットを意識していると)、自分自身の行動に対する罪悪感を覚えていないときほど、より多くのものを食べる傾向があります。スモール表記されたものを食べることは、まさに罪悪感を覚えにくい行為なのです。このためスモールを選択すると、実際にはかなりの量を食べていても、あまり食べてないと感じてしまうのです。
参考文献:『感覚マーケティング ~顧客の五感が買い物にどのような影響を与えるのか~』(アラドナ・クリシュナン/有斐閣)
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