オズボーンのチェックリスト(2)他からアイデアを借りられないか?〈Ⅰ〉 発想法(7)
発想法の一つに「アナロジー(類推)発想法」があります。これは、2つの事物の間にある類似した特徴を比較することであり、また心の中の望遠鏡を使ってアイデアを探し出そうとする行為でもあります。理解を深めるために、次にあげるイノベーションと自然界に存在する、似ているものとを比べてみましょう(※1)。
ヘリコプター:蜂鳥(はちどり=主に中南米に生息し飛翔力が強く空中に静止することができる)は旋回することも後ろに飛ぶこともできる。
皮下注射:サソリは尖った尻尾の先を使って毒を刺す。
ソナー :コウモリは人類よりずっと以前からソナーを使っていた。人間の耳には聞こえない音を出し、行く手にあるものを反射させる。
麻酔 :多くのヘビは、獲物を食べる前に毒液を使って相手の感覚を麻痺させる。
戦車 :亀は難攻不落の装甲車といえる。
飛行機 :飛行機がフラップ(下げ翼)を使ってブレーキをかけるのは、鳥が尻翼を使ってブレーキをかけるのと同じ原理。
自然観察からナイキの人気シューズやファスナーが生まれた(※2)
自然界に触発されるのは、前出の例ばかりではありません。アナロジー発想法は巨大企業や偉大な発明家たちの常套手段なのです。クリエイティブな思考の持ち主は、自然界から盗めるものを探しているのではなく、自然界から学ぼうとします。自然界を観察し、様々な問題を解決するために最高のアイデアを真似しようとするのです。
ナイキのデザイナーたちは、オレゴン動物園で山羊(ヤギ)を観察し、全天候型ゴーテック・トラクション(山羊の蹄のようなひっかかりがある)を開発しました。
クラレンス・バーズアイは、カナダを旅行中に天然に凍りついて解凍された魚を食べました。この自然の知恵をバーズアイが活かして、冷凍食品産業が生まれました。
ルネ・ラエンネック医師は、子どもたちが長い筒の一端を耳にあて、筒の反対側に音が増幅されて伝わるのを聞いて遊んでいるのを見て、聴診器のヒントを得ました。
ジョルジュ・ド・メストラルは田舎を散策していて、野草の種が被服にくっつくことに気づきき、種についている微細な鉤を真似て、面ファスナーを開発しました。
ヨーン・ウツソンは、昼食のときに食べていたミカンの切れ端を見ていて、シドニー・オペラハウスの、あの一目見たら忘れられないデザインを思いつきました。
新幹線の車体はカワセミの流線型のクチバシに倣ってデザインされ、互いにぶら下がり合いながら成長するツタの懸垂曲線をヒントにつり橋の構造が考案されました。
※1:『アイデア・バイブル』(マイケル・マハルコ著/ダイヤモンド社)
※2:『「クリエイティブ」の処方箋』(ロッド・ジャドキンス著/フィルムアート社)
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