オズボーンのチェックリスト(5)小さくできないか?〈Ⅰ〉 発想法(13)
前回チェックリストが「重厚長大」なら今回は「軽薄短小」で、今日的なテーマといえます。この稿を書き始めるに際し思い出したのは2014年度全米ベストセラーで、日本では2015年のビジネス書大賞「書店賞」に輝いた『エッセンシャル思考(※1)』でした。この本のサブタイトルが「最小の時間で成果を最大にする」だったからです。
減らす、小さくする、濃縮する、低くする、短くする、軽くする、省略する、分割することはできないか?
・・・「減らす」ことでP&Gは見事に復活した(※2)
ビジネスウィーク誌1996年9月9日号に、「シンプルでいこう」との見出しの記事がありました。この中で、P&Gは従来とは違った取り上げ方をされました。「P&Gはこれまで『よりパワーアップして新発売!』とか、『レモンの香りが新しい!』とか、『超特大増量サイズ!』のような新製品を数十年にわたって出し続けてきたのだが…」。
これは逆にいえば、P&Gが過剰な数の商品アイテムを売ってきたともいえます。そこで同社は以前なら考えられなかったことを始めることにしました。それは商品アイテム数を1990年代の初頭に比べて3分の1にカットしたのです。まず、あらゆるヘアケア商品を半分に削ったところ、なんと売り上げが上昇したのでした。
・・・「小さくする」(穴をあける)ことでドーナツはドーナツになった(※3)
もともとドーナツに穴はありませんでした。ある説によれば、母親がドーナツ(正しくはドーナツの前身)を揚げているのを見ていた少年が、中によく火が通っていないのに気がつきました。そこで、彼はフォークで真ん中をくりぬいて穴を作りました。現在のドーナツはこのようにしてできあがったのでした。
・・・「濃縮」されてしまったことでノーベル賞の研究が生まれた(※4)
白川英樹博士は電気を通すプラスチック「導電性ポリアセチレン」の発見と開発でノーベル化学賞を受賞しました。そのきっかけは留学生の間違いからでした。彼はうっかり粉末作成の際に触媒を1000倍にしてしまったのです。ビーカーの溶液表面に膨潤したボロボロの膜ができていたのを見た白川先生は??? 何かが閃いたのでした。
調べるとそれは、ポリアセチレンの薄膜である可能性が高いと分かりました。触媒の濃度を間違えた結果と考えた白川先生は濃度をどんどん濃くして合成を行います。すると一定以上の濃度できれいな薄膜が得られ、特にガラスの表面で重合させると良いということが数日で判明したのです。それが初期型の「伝導性ポリアセチレン」でした。
※1:『エッセンシャル思考』(グレッグ・マキューン著/かんき出版)
※2:『あのブランドの失敗に学べ!』(マット・ヘイグ著/ダイヤモンド社)
※3:『アイデア・バイブル』(マイケル・マハルコ著/ダイヤモンド社)
※4:『日本にノーベル賞が来る理由』(伊東 乾著/朝日新聞出版)
ホームページ https://www.leafwrapping.com/
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