オズボーンのチェックリスト(8)逆にすることはできないか?〈Ⅱ〉 発想法(20)
反転、前後転、上下転、左右転、役割転換させたらどうだろうか?
・・・針穴の位置を「上下転させたらどうだろうか?」で生まれたミシン(※4)
ミシン開発の歴史は1790年に遡るそうですが、現代のミシンとも共通する3つの基本的特徴を備えたものは1846年9月10日エリアス・ハウにより特許申請されました。
3つの基本的特徴とは、先端に穴のある針を使用している/布の下にボビンがあって、二重縫いを可能にしている/自動的に布を送る機構がある となっています。
ハウ氏が針の先端に糸を通す穴を設けるというアイデアをどうして思いついたのかには逸話があります。彼はある晩、先端に穴のあいている槍を持つ野蛮人に捕らえられた夢を見ました。目覚めたとき、ハウ氏は針の頭(裁縫用針の形状はこうなっている)でも真ん中でもなく、針の先端に糸通しの穴を開けることに気がついたのでした。
・・・電球の取り外し方を「左右転させたらどうだろうか?」(※5)
アメリカのある都市で地下鉄の電球盗難が問題になりました。経費面と安全面で頭の痛いこの問題を任された鉄道の技術者には、電球の位置を変えず、経費もわずかという厳しい条件が求められました。しかし、彼はいかにも水平思考的な解決方法を思いつき、いとも簡単に解決してしまいました。電球の取り外しの回し方を逆にしたのです。
・・・本社とコールセンターの「役割転換させたらどうだろうか?」(※6)
1993年に創業し、文具類の通販で急成長したアスクルですが、1999年に設立した東京センター(東京江東区:物流中心)の5階部分を改修し、2001年に東京都文京区にあった本社とe-tailing centerをそこに移しました。本社を倉庫内に移すという大胆な発想は、「顧客の声を社内で共有したい」という岩田彰一郎社長の考えによるものです。
業務の拡大に伴い、2002年に4階部分もオフィスにしましたが、5階との間に直径10メートルの円形の穴を開け、上下でお互いの顔が見えて一体感を醸し出しやすいように工夫したといいいます。ここまでくると、会社が本社を中心に回っていくのではなく、情報が集積するe-tailing center中心に回っているようにも見受けられます。
アスクルは創業翌年、他社製品の取り扱いを始めました(プラス工業の子会社としてスタートしており、競合企業の製品取り扱いには社内の反対が多かった)。街の文房具店を代理店として共存を図るなどの手法が評価され、2002年にはポーター賞を受賞。先駆的な優れたビジネス・モデルとして内外に知られるようになりました(※7)。
※4:『アイデアのおもちゃ箱』(マイケル・マハルコ著/ダイヤモンド社)
※5:『イノベーション・シンキング』(ポール・スローン著/ディスカバー・トゥエンティワン)
※6:『日本のブルー・オーシャン戦略』(安部義彦&池上重輔共著/ファーストプレス)
※7:『「ひらめき」を生む発想術』(宮永博史著/シーアンドアール研究所)
ホームページ https://www.leafwrapping.com/
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