「ほめる」と「叱る」のメカニズム
先日、地元の柏商工会議所様にて『コーチングを活用したコミュニケーション術』セミナーを担当させていただきました。セミナーでは、「ほめる」のパートで「強化学習」と「恐怖学習」についてお話しました。今回はおさらいの意味も含めてそれらについて書きます。コーチングの7大要素のひとつに「承認」があります。本来、承認(アクノレッジメント)は、「あなたがそこにいることに気付いているということ、受け止めたという言明」ですが、一番分かりやすいのは「ほめる」行為でもあります。しかし、「目は口ほどにものを言い」の「語らずとも察する文化」で育ってきた日本人にとっては、この「ほめる」は、なかなか難しい領域かもしれません。中には「ほめる」の真逆である「叱る」のほうが、更に難しいと悩んでいる方も多く見受けられます。
叱られたときとほめられた時では異なるメカニズムが働く
人は、ほめられると快感をつかさどる脳内物質であるドーパミンの分泌を促します。このことから良いことをしたらほめる。この作業をこまめに繰り返すと、良いことができそうな条件がそろっただけで「よし、頑張ろう!」という前向きな気持ちになりやすいです。それは、ほめられる前からドーパミンの分泌が始まり、快感の前倒しが始まるからです。
ほめるは正に「強化学習」である
つまり、ほめるという報酬(刺激)を繰り返し与えることで、再びほめられたいと感じ、より一層良いことをする(反応)ようになります。こうして「刺激」と「反応」の呼応を強めることを「強化学習」と言います。ただし、いたずらにほめ続けると快感が薄れていきます。そして、脳はまたほめられるんだと期待してしまいます。ほめてもらえるのではないかと期待した時にほめられないと、ドーパミン系の活動が止まり、時には怒りに転化することもあります。
ほめる報酬を間引いてセロトニンの分泌を促す
これを防ぐためには、より高いレベルの行動ができたときだけほめるなど、ほめる回数を間引いていくといいです。報酬が適度に間引かれると、セロトニンという脳内物質の分泌が増え、落ち着きや満足感をつかさどり、報酬を待つことが出来る忍耐力やすぐに結果が出なくても諦めない心を育てます。
叱り過ぎは「恐怖学習」になる
では、叱られた時のメカニズムとはどうなのか?叱られると「すくみ反応」が生じます。これは恐怖のあまり行動を抑制してしまう反応です。この原理を使った学習を文字通り「恐怖学習」と呼びます。動物がある場所で何度か餌が取れると、次も行きます(強化学習)。ところが、ある日ライオンに襲われそうになったら二度と近づきません。これが「恐怖学習」です。
●強化学習は一歩一歩進んで成長していきますが、恐怖学習は一発で強烈に学習しますから叱り過ぎはトラウマになる危険も伴いますね。いすれにしても「ほめ過ぎ」「叱り過ぎ」は、弊害を伴うようです。何事も程々が良いのでしょう。
参考文献:『日経トップリーダー』 2013 11月号
2018年4月6日(金)~明日から現場で活かせる!自ら考え動く、自律型のビジネスパーソンへ!『やる気と気づきを引き出す「新入社員研修」』(株式会社アークブレイン様主催公開セミナー)
2018年3月9日(金)『知っているつもりから脱却!信頼とチャンスを掴むリーダーのビジネスマナー実践講座』(株式会社アークブレイン主催公開セミナー)
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