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2022年7月

2022年7月30日 (土)

アフター5に行くならどっち? 「大阪環状線総選挙」という“仕掛学”の試み

この2年ほど研修のほとんどはパソコンの画面を通してオンライン研修でしたが、先日久しぶりに以前からお付き合いのある会社さんのリアル研修のため3日間大阪に出張しました。移動日は大きなスーツケースを携えており、乗り換えのJR西日本大阪駅では通常昇る階段をパスしてエスカレーターを利用しました。

夕方の帰宅時間帯でもあり、広い階段のわきに設置されたこのエスカレーターには行列ができていると覚悟していきましたが、これが意外にスムーズでした。研修講師という仕事柄、常に先を予測しながら行動を心がけているのですが、この時も「どうして・・・」と頭を巡らせたところ、2か月ほど前に読んだある雑誌の記事を思い出しました。

『日経ビジネス』2022年5月23日号「大阪発のオモロイ仕掛学」には、人の行動を変える「仕掛学」を提唱する大阪大学大学院経済研究所の松村真宏教授の研究チームによる3年前(2019年7月末~8月初)の、「大阪環状線総選挙」という面白い実験(当日私が利用したそのエスカレーターのその横の階段でおこなわれた)のことが書かれていました。

「アフター5に行くならどっち?」と、実験では、エスカレーター横の広い階段左側部分を赤く塗り、白抜きで「福島派」、右側を青く塗り同じく「天満派」と大きく書きました。要するに、大阪環状線への乗り換え方向を示し、この会談を利用した人の数をリアルタイムで公表するという遊び感覚の仕掛です。

たまたま実験期間中は連日うだるような暑さで、階段を使ってもらえるか心配されたそうですが、実験の結果1週間の階段利用者のうち福島派は50,731票(人)、天満派は85,759票(人)となり、投票結果は天満派の勝利だったそうです。

研究チームによると、これがそのまま、それぞれの街の人気を表しているかは分からないとのことですが、階段利用者が1日あたり1,342人増加(全体の7.4%)したことが推計上ですが確認できたそうです。実験成功というか仕掛けがうまくいったのですね。

この大阪駅と同じような実験がアメリカの大学最寄りの地下鉄の駅で行われたことがあります。「学生は、階段を利用すること」というプラカードを立てたのです。すると、学生たちは階段を利用するようになりました。そして、これが間接的暗示法、簡単に言えば波及効果をもたらし、一般の利用者も階段を使うようになったそうです。

最後は前出の大阪大学・松村真宏教授の著書『仕掛学』に、教授がハリウッドで見かけた白い階段の間に一部黒い階段が混じることでピアノの鍵盤に見立て、実際に歩くと音が鳴るピアノ階段のお話です。2022年7月29日の毎日新聞のウエブ版によると、これと同様巨大階段ピアノ」が、福岡市中央区の西鉄福岡(天神)駅北口に登場しました。

44段ある大階段の中央の踊り場から下部分の4段目から18段目までを踏むと音が鳴るそうです。赤外線センサーが階段の端に設置されており、ステップを踏むことで赤外線が遮られ、それを感知して音が鳴る仕組みなのだとか。西日本鉄道と福岡市が街中のにぎわい創出と市民の健康増進を目的に、共同で9月11日までの期間限定で設置したそうです。

参考文献:『日経ビジネス』2022年5月23日号、『人は「暗示で」9割動く!』、『仕掛学』

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2022年7月23日 (土)

スポーツ競技と熱中症対策

今回は『医療者のための熱中症対策Q&A』という本の中から主にスポーツを取り上げます。特に熱中症のリスクが高い競技はありますか?  熱中症発症、死亡者は野球、サッカーに多いですが、重症の割合が高いのは陸上競技です。運動を行う環境や運動の強度、持続時間、特有のユニフォーム、ヘルメットなどの装備などが危険因子となります。

環境面でリスクが高い競技は?暑熱環境下ではいかなるスポーツも熱中症に陥るリスクがありますがが、特に日射を受ける野球やサッカーなどの野外運動やマラソンや競歩のように道路から輻射熱を受ける環境は危険度が高い。バドミントンや卓球のように、無風条件が要求されるスポーツは締め切った体育館で行うので、これも危険であります。また、登山のように身体を冷やして休ませる場所が得られにくい医療関係が身近にないような状況では、たとえ発症時は軽症で会っても重症化のリスクが高くなります。

インターバルトレーニングのような強度が高いものや、ランニング、競歩のような連続運動するもの、野球やサッカーの様に区切りの時間が長く思う通りに休憩や給水が取れないスポーツはリスクが高い。さらに剣道やアメリカンフットボール、フェンシングのようなヘルメットや防具、野球のような重ね着のユニフォームは高いリスク因子となります。

連続運動する場合には気楽に水分補給できる環境を整えることが必要であり、いつでもトイレに行ける環境を整えることで、選手や参加者たちが尿意を抑えるために水分を控えることが決してないように配慮する。ヘルメットや防具はできるだけこまめに外して熱の放散を促すように指導する。衣服も頻回に交換することを勧める。休憩時には日陰を確保し、症状出現の際は速やかに冷房の効いた部屋で休ませることができるようにしておく。

プールでも熱中症は起こるのでしょうか? 水の中でも運動をすれば、体内で熱を産生し汗をかきます。口渇を感じにくく、水分摂取量も怠りがちです。そのために水泳の練習中に熱中症を発症することがあります。また、プールの水温が高いと熱中症になる危険性が増します。

汗をかきにくい体質の人が気を付けることは? 特に気をつける必要があるのが室温と湿度です。冷房使用時は室温「28℃」を目安に、適切な温度となるように冷房を設定することが推奨されています。ただし、窓際など室内の場所によっては温度が高くなる場所がありますので、注意が必要です。また、湿度が高いと同じ室温でも汗が蒸発しにくくなるため、湿度は70%を目安にコントロールしましょう。なお、室温が24℃を下回り、外気との室温差が大きいと部屋に出入りする際に体の負担になるため、注意が必要です。

熱中症予防の食生活の基本は? アルコールや多量のカフェイン、糖分の摂取を避け、偏りのない食事を定期的に摂取し、十分な休息をとり規則正しい生活を送ることです。熱くなる前にはたんぱく質やビタミンCを中心に、暑くなってからはビタミンや水分、電解質を中心に摂取するとよいでしょう。

※:参考文献『医療者のための熱中症対策Q&A』

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2022年7月17日 (日)

熱中症にかかりやすい人と、その対策

最近はテレビで夏になると「熱中症に注意しましょう」という言葉を聞く機会が大変多くなりました。類似語の日射病が、直射日光による日焼けや熱が原因で起こる脱水症状や貧血などを指す限定的な言葉に対し、熱中症は広範囲な症状を含む医学用語です。したがって熱中症は太陽光が原因でなくても、気温や湿度の高い環境で起こるものを含んでいます。

熱中症のなかでも一番多いのは熱射病だそうで、これは体温が異常に上昇することで脳障害が起こり、意識がうすれ、放置すると死に至る危険性もあるそうです。人間は汗をかくことで(打ち水すると気化熱で涼しくなることに通じる)体温を下げることができるのですが、汗をかきにくい(汗を出す汗腺が少ない)人は熱中症になりやすいのです。

ところで、熱中症リスクと密接な関係にある汗腺の数は、ロシア人180万個、日本人230万個、フィリピン人280万個といわれています。つまり、寒い国で育った人ほど熱中症リスクが高いことになります。なお、汗腺の数は、3歳ぐらいまでに育った環境(室内温度や土地の気候)に影響を受けるそうですから、心当たりがある方は注意が必要です。

社会耐性が乏しいと目される人を温室育ちなどと形容したりしますが、無菌環境にいると、免疫力が低下して菌に弱くなってしまいがちです。日本は世界的に見てもトップレベルの清潔な国で、抗菌や除菌グッズなど様々なものが売られています。そうした環境ならではの問題の一つが、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー疾患の増加です。

丁寧に体を洗いすぎると、本来必要な常在菌までがいなくなり、そのために逆に悪玉菌が繁殖しやすくなるのだそうです。また、集団食中毒の原因としてたびたび話題になるO-157 も、実は清潔な国にしか存在できないきわめて弱い細菌で、汚い場所では発生できず、清潔志向が行き過ぎた国でのみ発生し、除菌を進めるほど皮肉にもより発生しやすくなるのだとか。

さて、本稿の最後は、もっとも熱中症に気をつけなければいけない年配者についてです。お年を召すと筋肉量が減少しますので、体内の水分が若い年代より少なくなっています。また、動脈硬化が進んでいることや自律神経の機能が低下することにより、汗をかきにくく、体にこもった熱を放出しにくくなっているのです。

加えて、感覚神経や運動神経の機能が低下することにより、水分補給や避暑行動をとるのが遅くなりがちです。他にもトイレの回数を減らすために水分摂取を控える、エアコンを嫌う、といった高齢者によく見られる傾向も熱中症を引き起こす要因になっています。このことは、「服薬中」「持病あり」「体調不良」の方にも当てはまりますのでお気をつけください。

参考文献:前・中段『逆説の法則』、後段『食べて飲んで身を守る!熱中症レシピ』

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2022年7月 8日 (金)

メガネのフレームにこめられた「変身願望」とは?

前回のブログ(2022年7月2日更新)で、「似合うメガネ」「良い印象を与えるメガネ」のどちらを選ぶ・・・を取り上げる際に、以前ピックアップしておいた資料を見直したところ、その中に「メガネのフレームにこめられた『変身願望』(※)」がありました。似合う・印象をよくするとは別に、メガネに託された変身願望を今回取りあげることにします。

 

①メタルフレーㇺのメガネをかけている人は、自分をクールに見せたい:

メタル(金属)のグッズはメガネに限らず、知的・合理的なイメージを与えます。言い換えれば、冷たくてクール、人工的で、あまり人好きしないイメージかもしれません。しかし、その深層心理を探れば意外と情熱的な人が多かったりします。メタルフレームのような「硬い」ものを身に付けている人というのは、ややもすればあふれ出しそうな自分の感情をそういった硬質のアイテムで抑制しているということのようです。本人は無自覚なのでしょうが、「熱っぽさとクールさ」が同居しているということなのでしょう。

 

②太めの黒縁メガネをかけている人は、自分を「デキる人」に見せたい:

かつては「がり勉・融通のきかない正直タイプ」の定番だった黒縁メガネも、今では、若い女性のファッション・グラスとして利用されています。メイクや髪型の変化を楽しむように、若い人で縁の太いメガネを大胆にかけている人は、「自己顕示欲の旺盛なタイプ」と見ているようです。しかし、裏を返せば、それだけ素の自分に自信がないとも解釈できます。メガネや帽子は、心理学的には自分の素顔を隠す小道具であり、自分を守るプロテクターとしての意味合いを持ちますので、不安や自信のなさの現れとも受け取れます。

 

③縁なしメガネをかけている人は、自分を「そのまま」見せたい:

ファッショナブルなメガネを試してみたい、いろいろな自分を演出してみたいという願望はあっても、勇気がなくて、なかなか実践できない性格と考えられます。大幅なイメージチェンジに抵抗のある、保守的な性格がそこから読み取ることもできるでしょう。

 

④サングラスの人は、「人との関係」が不安な人:

サングラスは、瞳の色が薄い欧米人にとっては、紫外線から瞳を守る必需品ですが、瞳の濃い日本人にはどちらかというと装飾品というイメージが強いようです。ただ、サングラスには、「目(顔)を隠す」仮面としての役割も見逃せません。「顔を見られていない」という安心感からか、普段よりも大胆な行動ができるという人も多いようです。心理学的にもう少し深い意味を探りますと、「人に対して警戒心を抱いて、本心を隠そうとしている」「自分にやましいことがあって、それを見せたくない」があるそうです。格好つけていうようで、人の目を気にしている「気の小さい人」なのかもしれません。

参考文献※『得するしぐさ ダメなしぐさ』

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2022年7月 2日 (土)

「似合うメガネ」「良い印象のメガネ」のどちらを選ぶ?

ある写真家の方がメガネ屋さんの店員さんに「こちらの四角いフレームですとよりシャープに見えて、こちらの丸いフレームですとお優しい感じになりますね」というアドバイスをもらい結局、この方は二種類のメガネを購入しました。それから1か月後に振り返ってみると、優しく見える見えるフレームの出番が圧倒的に多かったそうです。(※1)

ご本人にとって意外な結果だったのでしょう。このエピソードの後に添えられた文章は「かつて、ロンドンに住んでいた1970年代から80年代にかけてのバンクロックの時代、人を引き寄せるような着こなしが必要だ。自分が身にまとう服やメガネにも人に与える波動があるのだから」と。

メガネと面立ちとの相性について、ある本(※2)に以下のように紹介されていました。

眉が直接的で輪郭が四角い顔立ちなら四角い顔のフレーム。眉が曲線的で面長ならオーバル型といわれる横長のもの。丸顔には面長とは逆に縦幅があまりなく、フレームの上部に色やデザインで特徴があり、下のカーブが柔らかい曲線になっているものがお薦め。

 

メガネのフレームの特徴は

ラウンド型(丸形)のフレーム:個性的でユニーク、クリエイティブな印象。

オーバル型(楕円形)のフレーム:優しくエレガントな印象。

スクエア型(四角形)のフレーム:知的で固い印象。縦幅が狭いものだとシャープな印象。

バタフライ型(蝶々のような形)のフレーム:都会的でこだわりのある印象。

多角形型のフレーム:知的ながらも柔らかさのある印象。

ブローライン(上部だけに枠があるタイプ)のフレーム:洗練されたクールな印象。逆にブローだとかなり個性的。

 

最後はとても個性的なメガネ屋さんのお話です(※3)馴染みの美容院で「結構職人気質のオーナーが、お客さんに似合う眼鏡しか売らない」という話を聞き、その店のドアを開けるとバーカウンターで、カップルがお酒を飲んでいました。一瞬間違えた!けれどよく見ると、壁には一面、眼鏡のフレームが並んでいました。  

カウンターに座るとオーナーが抹茶を立ててくれて、くつろぐ中での眼鏡の話をする、というスタイルだったとか。しばらくすると、目と目の距離や、頬の角度、耳の位置など、さまざまな計測をし、顔の色も調べる。オーナーの客観的な判断により選ばれた10本ほどのフレームの中から、客は好みのものを選ぶという流れだったそうです。

このオーナーと話していて、著者が一番印象に残った言葉は「せっかく目が悪くて、メガネをかけるんだから」でした。40年近く、自分にとって眼鏡とは、いやいやかけるものでしかなかった。けれども彼と話しているうちに、「そうか、自分には、眼鏡を選ぶ楽しみが与えられていたのか」と思えてきたというのです。

参考文献

(※1)『人を幸せにする写真』

(※2)『男の「外見」コーチング 一瞬で「できる男に変わる服装術」』

(※3)『ちいさな言葉』

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