セミ・ヘビの脱皮から、組織の脱皮に思いを馳せる
夏の風物詩の一つにセミ時雨がありますが、その足元には「脱皮」したセミの抜け殻があちこちに見受けられます。この夏、公園で両手いっぱいにそのセミの抜け殻を誇らしげに捧げ歩く九少年を見かけたとき、10年ほど前に読んだ本のある一節を思い出しました。そこには親子のさりげない会話が記されていたのですが、その内容が深かったのです。
本の著者は『サラダ記念日』などで有名な歌人の俵万智さんで書名は『小さな言葉』ですが、その親子の会話を俵万智さんは、コピーライターとして高名な糸井重里さんのサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の「いいまつがい」というコーナーで見たそうです。その回のテーマは言い間違いばかりを集めていました。
その中で、俵さんが今までに特に印象に残っているのが以次のフレーズでした。「あっ、セミのなきがらだ」と子どもが言い、親は「ぬけがら」の言い間違いだと思うのだが、よく見ると「脱皮の途中で干からびてしまったセミ」だった、というもの。つまり間違いではなかったというお話です。
私はセミ時雨を浴びながら、生命のたくましさを感じることが多かったのですが、この文章を読んでから「脱皮」が命がけの行為であることに思いが至りました。そして調べてみるとセミの幼虫が「脱皮」に成功するのは全体の40%にも満たない(なきがら60%強)ことを知りました。彼らにとって「脱皮」は命がけの戦いなのです。
デジタル大辞泉の「脱皮」の解説は以下の通りです。
1.昆虫類や爬虫類(はちゅうるい)などが、成長のため古くなった外皮を脱ぎ捨てること。
2.古い考え方や習慣から抜け出して新しい方向に進むこと。「旧弊からの脱皮を図る」
この解説1.2を包含したような内容が『ニーチェの言葉』に中にあります。
「脱皮しないヘビは破滅する。人間も全く同じだ。古い考えの皮をいつまでも被っていれば、やがて内側から腐っていき、成長することなどできないどころか、死んでしまう。」
『脱皮成長する経営』という本には、「脱皮には、ヘビのように脱皮を繰り返すことで単純に体を大きくしていくタイプと、セミやトンボ、カゲロウのように脱皮することで姿形だけでなく、活動空間や食べ物まで変えて変態を遂げるタイプの二種類の脱皮を思い浮かべることができる。本書でイメージして欲しい脱皮は後者である」と。
そして、この本の主人公ともいえる前川正雄氏(※)が用いる脱皮には、組織の文化を更新し、あらたな製品で新しい顧客を対象としたビジネスを展開して、成長を遂げていくといった意味を有しているそうです。同氏によると、「組織を同じ姿で成長させてきたのではない。過去の姿や取り組みを捨て去りながら成長させてきた」のだと。
参考文献:『小さな言葉』『ニーチェの言葉』『脱皮成長する経営』
※前川正雄氏(前川製作所・会長歴任後顧問に)
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