その曲が球場に鳴り響くと何かが起きる!
私は、研修の谷間に頭休めと気分転換を兼ねて気軽に読めそうな文庫本を中心に数冊買うことにしています。そして今年の春に購入した中に『20歳(はたち)のソウル』(幻冬舎文庫本)が入っていました。そしてこの本が、その後の2か月の間に、私の周りで大きなうねりを生じていたことについて書くことにします。
この7月に書名と同じタイトルでロードショーされましたので、本もしくは映画で内容をご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、簡単にストーリーを紹介すると・・・。この物語の主人公は、千葉県のスポーツ強豪校のひとつに船橋市立船橋高校(略称は市船)吹奏楽部に所属した浅野大義(たいぎ)さんです。
浅野さんは母校に「市船ソウル」という応援歌を残します。そして市船はスポーツ競技会場で吹奏楽部の後輩たちがこの「市船ソウル」を熱く演奏するのですが、不思議なことにこの曲が流れると野球ならその回に点が入るのだと。私は、そんな・・・と思い2022年7月27日の千葉県の決勝戦をテレビで観戦したところ、本当にその通りの展開となり感動したのでした。
主人公は卒業2年後、20歳の若さで肺がんでなくなっており、自分の作品が母校を鼓舞し続け春夏の甲子園の切符を手にしたことは知りません。ある意味悲しい物語ですが、ブログ筆者が2か月にわたり心を揺さぶられ続けたのはどうしてかと思いをめぐらしたところ、思い当たったのが「カドカワ」が一時期を風靡した「メディアミックス」の効果でした。
プレゼンテーション研修の際にメディアミックスについて触れることがあります。簡単に言えば、情報を介する手段として言葉という単独メディアだけよりは、画像などの別のメディアを併用した方がはるかに相手の記憶に残るので、たとえ紙の資料を用意している場合でも、新しい技術やサービスについてプレゼンする際にはメディアミックスが大事なのだと。
では、メディアミックスをするとどのくらい効果があるかを2例紹介しましょう。まず最初はアメリカ空軍(※1)から。彼らは説明の仕方(①ことばだけで説明したとき、②図表だけ見せたとき、③図表を見せながら、言葉で説明したとき)によって、3日後に記憶されている情報の量がどのくらい違うかを調べました。
それぞれを比較してみると、①ことばと②図表の組み合わせが最もよく、72時間後、ことばと図表(①と②)を併用した時の聞き手は、①ことばだけの聞き手の6.5倍以上、②図表だけの場合の3倍以上、記憶していたといいます。次は神経科学の研究(※2)から、情報を耳から聞いただけでは内容の役10%しか覚えられないが、耳から聞くのと同時にその画像を見ると内容の65%を覚えている可能性が高いと確認されたそうです。
メディアミックスを最大限活用したのは「カドカワ」でした。1970年当時に流されたキャッチフレーズ「見てから読むか」「読んでから見るか」を記憶している人も多いと思いますが、仕掛人の角川春樹さん、お見事ですね。これに『20歳(はたち)のソウル』は『聴いてら・・・』が加わりましたので、その効果に私は完全に取り込まれてしまったのでしょう。
※1:『発表する技術』、※2『ビジネスと人を動かす驚異のストーリープレゼン』
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