改版辞書・辞典の「言葉」「表現」「用語」からジェネレーションを知るⅡ
今回取り上げるのは、言葉の解説が時流に合わせてかなり深堀されたと思われる2022年1月改定の岩波『広辞苑第7巻』です。例えば、料理時の「炒める」は、これまでの「食品を少量をの油を使って加熱・調理する」が「熱した調理器具の上に少量の油をひいて、食材同士をぶるけるように動かしながら加熱・調理する」と変わりました。
この変化を教えてくれたのは、図書館で読んだ『いつもの言葉を哲学する』(古田徹也著/朝日新聞社出版)でした。確かに料理初心者には「炒める」という行為が伝わらず、満足な料理に仕上がってなかったように思うのです。
この解説に至るまでの編集者の苦労談「炒めるの真髄を見極めるべく、日々炒め物を作りまくり、料理をしていないときも、エアフライパンを片手に、炒める動作をしまくった。そうして、悩みに悩んだすえ、ついに天啓が降ってきて、前記の解説になった」が、『船を編む』の三浦しおんさんによる『広辞苑をつくる人』でした。
『広辞苑7巻』には他に、
「こする」:押しつけて摩擦する。すりみがく。⇒物と物とをぴったりとつけて、繰り返し触れ合わす。押しつけたままうごかす。摩擦する。
「なでる」:手のひらでやさしくする。⇒手のひらなどで優しく触り、形に添って一度または何度か動かす・・・なども新しい解説に変わっています。
『広辞苑』の丁寧でわかりやすい表現への変換を見て、研修講師の私が思ったこと。それは、多くの職場の上司たちが、きちんと受けとめられていないにもかかわらず、辞書編集者の方たちが、若い世代の多くが見たり習ったりして学ぶのではなく、マニュアルで技術の習得をすることが出来るように変化をきちんと読み取られていたことへの敬意の念でした。
最後に毎年11月頃に、自由国民社から発行される『現代用語の基礎知識』に触れます。これは毎年改定され、現代人として必要と考えられる用語にマスコミなどで使われる新語を加えて編集された辞典・用語辞典の一種で、年鑑の性格も持つそうです。1984年から、その年の世相を反映した新語・流行語大賞を選定して発表しています。以下に、印象深いものを紹介します(敬称略)。
1994年 同情するならカネをくれ(安達祐実)
1996年 自分を自分でほめたい(有森裕子)
2005年 想定内(堀江貴文)
2008年 アラフォー(天海祐希)
2013年 いまでしょ!(林修)
2017年 インスタ映え(Can Cam it girl)
2019年 ONE TEAM(ラグビーW杯2019 日本代表)
| 固定リンク
「管理職研修」カテゴリの記事
- 「今どきの若い者(モン)は・・・」に関する3題(2022.12.12)
- 稲盛和夫氏の著書『実学』から学んだ3つのこと(2022.11.10)
- 改版辞書・辞典の「言葉」「表現」「用語」からジェネレーションを知るⅡ(2022.09.12)
- 改訂版辞書・辞典の「言葉」「表現」「用語」からジェネレーションを知るⅠ(2022.09.08)