正しい順番があることを小笠原流礼法とミルクティーの淹れ方で学ぶ
源頼朝に仕え、武士の礼法を確立したとされる小笠原家。その33代目となる小笠原忠統(ただむね)氏によると、「かたち」が身につくと、かたちを追い求める人は、どこまでいってもかたちにばかり囚われがちとなる。しかし、「こころ」を大切にする人が、かたちを身につけると、自然で美しい立ち居振る舞いができるようになる、とのこと。自己の内面から発せられる真摯な心遣いが、美しい立ち居振る舞いとあいまって日常生活が満たされるときこそ、礼法はその究極に達するのである。
「こころ」とは、相手を思うこころである。「かたち」とは、その心を行動によって表すことである。つまり、「作法」は「かたち」である。「こころ」と「かたち」、どちらが先かといえば、もちろん「こころ」である。
次はミルクティーの淹れ方の順番です。ミルクティーを美味しく飲むには、ティーカップに先にそそぐのはミルクか紅茶かという議論が、100年前の英国ケンブリッジのある家庭の庭園でありました。発端は、大学教授などの集まりで、あるご婦人が、「紅茶にミルクを注ぐのとミルクを紅茶に注ぐのでは味が違う」と言ったからでした。
すると、科学知識に自信のある教授たちは、「それはまったくナンセンスだ」「何が違うと言うのだ?」などと言って、ご婦人の発言を一斉に嘲笑混じりに否定したそうです。彼らにしてみれば、紅茶とミルクが混じってしまえば科学的な違いなどあり得ない、との認識以外の判断基準が存在しうることに思いが至らなかったのでしょう。
そのうち、1人の男性が「じゃあ、ここで試してみようじゃないか」と提案し、ブラインド状態で順番を入れ替えながら複数のカップにミルクティーを用意し、ご婦人にテスティングを求めました。注目される中で、テスティングに応じたご婦人は、どちらが先かをすべて言い当て、その後のテストでも一度も間違えませんでした。そして、謎が残ったのでした。
この謎は2003年英国王立科学協会の「1杯の完璧な紅茶の淹れ方」というウィットに富んだプレリリースで解明されました。ミルクは紅茶の前に注がれるべきである。なぜなら牛乳のタンパクは、牛乳が摂氏75度になると変質してしまうから、というのがその理由。これほどミルクティーにこだわるのはまさにイギリス人らしいところですね。
参考文献:『誰も教えてくれない 男の礼法』/『統計を拓いた異才たち』/『統計学が最強の学問である』
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