稲盛和夫氏の著書『実学』から学んだ3つのこと
稲盛氏に「夜泣きうどんの屋台を引く」というたとえ話があります。「しばらく会社に出てこなくてもよろしい。屋台一式を貸すから5万円の元手で1カ月間、毎晩京都のどこかでうどんを売ること。そして、1カ月後いくらにし持って帰って来るかが実績だ」というものです。これを実践すれば、コスト意識の高い経営幹部が育つ子とのご見解でした。
「夜泣きうどん」の屋台を引くためには、まず仕入れをどうするか?うどん玉を買うには、製麺所で調達する、スーパーで生麺を買う、固い干し麺を買って湯がいて出すなどが考えられる。次に、いい味を出すための出汁のために高い鰹節を買う。鰹節を削っているところで屑をもあらうなど、原価を安くしていかにいい味を出すかの創意工夫が必要となる。
「かまぼこ」や「揚げ」や「ネギ」にしても、スーパーマーケットで買う、工場や農家から直接仕入れるなど、いろいろなやり方がある。そして肝心なのが売値。一杯300円の「夜泣きうどん」も500円も選択自由。安ければいくらでも売れるだろうが、利益を得ることはできない。お客さんをどう満足させて売れるベストの値段を探し出さなくてはならない。
「このようにうどんの屋台ひとつでも、いろいろな選択肢がある。一晩に出てくる差はわずかでも、年間にすればものすごい差になってくる。また、屋台から大きなフランチャイズ・チェーンに発展させる人もいるし、何十年屋台を引いても何も財産を残せない人もいる。いい商売、悪い商売があるのではなく、それを成功に導けるかどうかなのである」と。
先日のテレビ番組では稲森氏の「土俵の中で相撲をとる」を取り上げていました。これについて同氏は、「土俵際でなく、まだ余裕のある土俵の真中で相撲をとるようにする」ことを心掛けるべきだと。なぜなら、土俵に追い詰められ、苦し紛れに技をかけるから、勇み足になったり、きわどい判定で負けてしまうことがあるからだと。
それよりも、どんな技でも思い切ってかけられる土俵の真中で、土俵際に追い詰められたような緊張感を持って勝負をかけるべきだ、というのです。これは企業財務に関して言えば、「つねにお金のことについて心配しなくても、安心して仕事ができるようにすべきだ」に通じ、そのような強い思いが、京セラを速い時期より無借金経営に導いたのだと。
稲盛氏の経営哲学の根底にあるものは、「人の心をベースとして経営する」ということでした。人の心は大変大きな力を持っているが、ふとしたはずみで過ちを犯してしまうという弱い面も持っている。人の心をベースにして経営していくなら、この人の心が持つ弱さから社員を守るという思いが必要で、これがダブルチェックシステムを始めた動機だと。
そして、そのような保護システムは厳しければ、厳しいほど、実は人間に対し親切なシステムなのだと繰り返されます。「ダブルチェックの原則」を間違いの発見やその防止のためのテクニックであると考える人もいるかもしれない。しかし、このような厳格なシステムが必要な本当の目的は、「人を大切にする職場をつくるためなのである」と。
参考文献:『稲盛和夫の実学』
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