「今どきの若い者(モン)は・・・」に関する3題
世代間ギャップを語るときに年長者が「今どきの若い者は・・・」と表現することがよくあります。では、この認識は何時頃からあったのでしょうか。これまで目にしたものには「エジプトの遺跡に落書き」や「古代ヒッタイト王国の粘土板」などがありますが、実在を確認できていないようなので、もっとも信頼性のある情報をを探ってみました。
出店は柳田國男氏の『木綿以前の事』で「昔風と遠世風」の稿に先年日本に来られた英国のセイス老教授から自分は聴いた。かつてエジプトの古跡発掘において、中期王朝の一書投の手録が出てきた。今からざっと四千年前とかのものである。その一節を訳してみると、こんな意味のことが書いてあった。
「曰くこの頃の若い者は才智にまかせて、軽佻の風を悦び、古人の実質剛健なる流儀を、ないがしろにするのは嘆かわしいことだ云々と、是と全然同じ事を四千年後も言っているのである。日本などにも世道澆季(せどうぎょうき)を説く人は昔からあった。正法末世(しょうぼう末世)という嘆きの声は、数百年間の文芸に繰り返されている。」
次はWOWOWで2022年6月放映の「今時の若いモンは」について。主な登場人物は女性新入社員の麦田さんと、「ったく 今どきの若いモンは・・・」を連発する彼女の上司・石沢課長で、この二人の絡みでストーリーが展開。番組では麦田さん役をNHK朝ドラ『舞いあがれ!』にヒロイン福原遥さん、石沢課長を反町隆史さんが演じています。
ある日の夕方、麦田さんの心のつぶやき「あ~つかれた~残業きつい 早く帰りたい・・・」「でも上司も帰ってないし帰りづらい・・・」「あ~もー会社辞めたい・・・」を察した石沢課長がブラックコーヒーを麦田さんのデスクに置きながら、「ったく 今どきの若いモンは・・・」「やれやれ」「真面目に働き過ぎなんだよ」と。そして、
「オレらの若い頃は過労死なんて言葉無かったからな」「あとはやっとくからさっさと帰れ」「上司が残ってたから帰りづらかったんだろう?気づくのが遅くなってすまんな」と、強面の課長から思いもかけない言葉が飛び出したのです。こうした思い遣りは山本五十六(旧帝国海軍連合艦隊司令長官)氏に通じるところがあるように思います。
「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」で知られる山本氏は、「実年者は、今どきの若い者などということを絶対に言うな。なぜなら、我々実年者が若かった時に同じことを言われた筈だ。今どきの若者は全くしょうがない、年長者に対して礼儀を知らぬ 道で会っても挨拶もしない、いったい日本はどうなるのだ、などと言われたものだ。その若者がこうして年を取ったまでだ。だから実年者は若者が何をしたか、などど言うな。何ができるか、とその可能性を発見してやってくれ」
参考文献:『木綿以前の事』/『今どきの若いモンは①新装版』
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