ユーモアは人間心理と行動に重大な影響を及ぼす
米国の世論調査で、「最近の出来事」の記憶とその情報源を調べると、新聞やお堅いニュース番組より、バラエティ―番組のような「ニュース番組」との回答が多かった。また、「ストーリーにデータを効果的に盛り込む方法」という講義を笑いながら受講した学生のほうがコンセプトをその後の授業にも応用し、8週間経っても内容を確り覚えていた。
真面目さと陽気さは相反しない。近年のユーモア研究者たちの発見は、それこそ至るところで、「真面目さと陽気さは相反する」という誤った思い込みを覆し、陽気でいきいきとした生活がもたらす大きなメリットを明らかにしています。そうした研究成果が解き明かしたことがあるとすれば、深刻な事態に対処するために、自分自身が深刻になる必要はないということなのです。
ユーモアのセンスは筋肉に似ている。身体と同じように、ユーモアのセンスも定期的に使わないと衰えます。このことは、学生やエグゼクティブ対象の講座で「最近、あなたが腹の底から笑ったのはいつですか?」と質問すると、ほとんどの人が思い出せないことからも裏付けられます。ユーモアは遺伝信号によって決まるのではなく、トレーニングと実践によって強化されるスキルなのです。
仕事上のユーモア、4つの効果(行動科学の研究より)仕事上のユーモア効果は、①パワー:地位が高く知性が優れている人という印象を与え、相手の行動や意思決定に影響を及ぼす。②つながり:知り合ったばかりでも信頼感が生まれ、打ち解けることができる。③創造力:それまで見落としていた関連性に気づきやすくなる。④レジリエンス:ストレスが緩和され、挫折から立ち直りやすくなる。
あるユーモア実験の感想評価から。参加者はいくつかの項目において評価を求められた。すると、ユーモアのある感想を述べた人たちのほうが、「有能である」印象を与えた割合が5%高く、「自信がある」印象を与えた割合が11%高く、「地位が高い」印象を与えた割合が37%高いことがわかりました。コメントの後半のふざけたフレーズによって、評価が大きく分かれたとのこと。
オバマ大統領のユーモアに満ちた2011年の一般教書。大統領は、政府の効率性を向上させるべき分野として次の例を挙げました。「サケが淡水にいるときは内務省の管轄です。しかし、サケが海水にいるときには商務省の管轄になります」。そして、ひと呼吸置いて「問題がさらにややこしくなるのは、スモークされたときです」で会場は爆笑に包まれ、聴取者にはサケに関するスピーチが記憶されました。
『マネー・ボール』著者(マイケル・ルイス)と娘さんのトレーニング体験。8歳の娘を2日間の子ども向けユーモアレッスンに通わせ、彼も大人向けのレッスンを受講した。午前中3時間のレッスン後、昼休みに外に出たとき父親は、もう汗びっしょり。ところが、教室から出てきた娘は満面の笑みを浮かべて、こう言った。「すっごく楽しかった! めちゃくちゃ簡単だった!」と。これが子どもと大人の違いなのかと彼は思った。
出典:『ユーモアは最強の武器である』(ジェニファー・アーカー&ナオミ・バグドナス著/東洋経済新報社刊)
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