第一印象を裏切ると、評価は逆転する
二つのジューサーを比べた面白い実験があります。「薄っぺらい」ジューサー(比較的小さくて、単純な丸みを帯びた形状で、白と透明のプラスチックでできている)と「頑丈な」ジューサー(背が高くて、垂直な形状をしていて、なめらかな曲線の形状で、シルバーメタリックと黒の組合せ)の動作中の動画を被験者に見せました。
「薄っぺらい」ジューサーから頑丈なしっかりした音が出ると誰もが驚きます。見た目が安っぽいので、「チープな音しか出ないだろう」と思っているのですが、実際にはしっかり動くので、「なかなかいいね」と納得します。一方、これもまた驚くのですが、「頑丈な」ジューサーから安っぽい音が出ると、こちらは落胆します。「見かけによらない」と。
つまり、私たちはまず見た目でどんな音が出るかを予測し、その予想がいい方に裏切られると高い評価をし、悪くなると低い評価になります。その予想を裏切られた感覚が製品そのものの評価に転嫁するのです。このような消費者の反応は「丈夫」な掃除機と「かわいい」掃除機を比較した実験でも同じような結果が得られています。
印象によって行動が影響を受けるのは見た目だけではありません。BGMのテンポがゆっくりだと、顧客の店内移動をゆったりとさせ、売上高を増加させることができます。しかし、レストランでは滞在時間が長くなってしまいます。同じように食べているときに聴いている音によって味覚が変わることを、航空会社の機内食の例で見てみましょう。
食べているときに聴いている音によって、味覚が変わります。「ソニックシーズニング」、これは、食べているときに聴く音楽によって味覚に影響を受ける現象です。有名なのはイギリスの航空会社であるブリティッシュ・エアウェイズ(BA)の取り組みです。気圧は味覚に影響を及ぼし、気圧の低い上空では塩味と甘味がわかりにくくなるのです。
地上では食欲をそそる料理も機内では味気ないものになってしまうため、航空会社は調味料を変えたり、味を濃くしたりなどの工夫を凝らしています。BAでは、そうした取り組みに加えて、ファーストクラスでは食事の際に料理に合わせてBGMを変えています。ソニックシーズニングでは、低温は苦みを、高音は甘味を強く感じるとされています。
辛口のシャンパンを提供するときには低音で、かつ炭酸を感じる音を流すと効果的とか。「ほかの航空会社」よりもBAの機内食はおいしい」という調査結果もあるほど。「元々の料理がおいしいのでは」と思われる方もおられるでしょうが、実はBAもJALも機内食の製造元は同じです。環境によって人間の感覚が変わる一例といえるでしょう。
出典:『SENSE インターネットの世界は「感覚」に働きかける』(堀内進之介&吉岡直樹著/日経BP刊)
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