「楽観」と「悲観」が人生に及ぼす影響について
心理学者のマーティン・セリグマンは、2年間にわたりメットライフ生命保険に採用された1万5千人以上の新人外交員の営業成績を追跡調査した。楽観度と実際の販売実績を比較したところ、楽観度の高い外交員の売上は、悲観的と判定された外交員の売上を37%上回っていた。さらに、楽観と悲観の上位10%の比較では楽観派が88%も上回った。
セリグマンの別の研究によると、説明スタンスを悲観的なものから楽観的なものに変えるだけで、気分が楽になり、グリッド(やり抜く力)が増すという。このことは個人ばかりでなく、集団にも当てはまる。彼はメジャーリーグの野球チームに関する新聞記事を分析し、ある年の監督の談話(楽観と悲観の比)から、翌年のチーム成績を予測できたと。
では、私たちが日常接する人がどちらのタイプかを見極めるにはどうすればよいでしょうか? 私が研修で実演するのは、水の入ったペットボトルとコップを用意し、演壇の上でコップに半分水を注ぎます。そして、受講生に尋ねるのです。このコップには「半分しか水が入っていない」と思うか、それとも「まだ半分残っている」と思いますかと。
実は、これは劇作家のバーナード・ショーの受け売りです。彼は、ある討論会で次のように発言しました。「さて、二人の前に、ウィスキーが半分入ったボトルを置くとしましょう。楽観主義者は『なんて嬉しいんだろう! まだ半分も入っている』と喜びの声をあげますが、悲観論者のほうは『残念だなあ! もう半分しか残っていないよ』とつぶやくと。
最後は京セラ創業者・稲盛和夫氏の言葉から。氏は「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」という姿勢を示していらっしゃいます。新しいことを成し遂げるには、まず「こうありたい」という夢と希望をもって、超楽観的に目標を設定することが何より大切です。そして、「必ずできる」と自らに言い聞かせ、自らを奮い立たせるのです」と。
「しかし、計画の段階では、『何としてもやり遂げなければならない』という強い意志をもって悲観的に構想を見つめ直し、起こりうるすべての問題を想定して対応策を慎重に考え尽くさなければなりません。そうして実行段階においては、『必ずできる』という自信をもって、楽観的に明るく堂々と実行して行くのです」と。
「昨日よりは今日、今日よりは明日、と次から次へと新しいことを考えていく。つまり、常に創造的なことを考えるということが、私(稲盛和夫氏)の習い性になっています。そのおかげで、私は新しい技術を次々と生み出してこられたのだと思いますし、京セラも今日のような大企業に成長してこられたのだと信じています」と。
参考文献:『プレッシャーなんてこわくない』(ヘンリー・ウェイジンガー&J・P・ポーリウ=フライ共著/早川書房刊)
『あなたは人にどう見られているか』(松本聡子著/文藝春秋社刊)
『京セラフィロソフィ』(稲森和夫著/サンマーク出版刊)
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