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2023年8月

2023年8月 9日 (水)

猫の歴史と人間との関係性を示す犬とは異なる表情

Wikipediaによると、最古の猫の飼育例はキプロス島の約9,500年前の遺跡の高貴な人物の墓に、人骨から約40 cm離れて埋葬されていた。キプロス島には野生のネコ科動物は分布せず、人が持ち込んだものと考えられている。また、今日のイエネコは直接的・系統的起源は不明確ながら、紀元前3000年頃の古代エジプトで固定化されたといわれている。

日本での猫の歴史は、中国から経典を運ぶとき、猫も船に乗せたといわれている。日本列島に山猫がいたことは67千年前の遺跡から骨が出たことでわかっているが、飼い猫が日本にやってきたのは、9世紀の終わりごろだった模様。ちなみに、ヨーロッパに飼い猫がやってきたのもそんなに古くはなく、8世紀ぐらいだったとのこと。

ところで、同じ頃に受け入れられた猫ですが、ヨーロッパと日本で大きく保護体制が異なります。1882年に世界で初めて動物虐待防止法を制定したイギリスでは、ペットを飼育する上での法令が70以上、人口の46%が何らかのペットを飼っているというデータがあり、まさに動物愛護先進国で、ペットの保護施設も充実している。

そうした保護施設では、何らかの事情で捨てられたり飼えなくなった猫や犬、虐待を受けていた猫や犬を保護し、心と体の傷を癒し、ときにはトレーニングを経て新しい飼い主と引き合わせ、ペットたちに第2の人生を与えるべく活動している。彼らの第2の人生の門出を左右するものがあることを、イギリスの2つの大学が研究発表している。

イギリスのサセックス大学で哺乳類のコミュニケーションや認知を研究するタスミン・ハンフリーらの興味深い知見では、保護施設に収容されている猫の中で、ある表情をする猫は、しない猫に比べて、新しい飼い主が早く見つかり、引き取られる、ということがわかっている。それは、ゆっくりと瞬きをする、という表情なのだと。

私たちは、心から楽しいと笑顔になり、その際の目の形に似ているからだと考えられるとか。この表情を猫の顔から引き出すには、私たちの方から、猫の目を見て、ゆっくりと瞬きをする必要がある。すると、ゆっくりとした瞬きで返す猫と返さない猫がいる。私たちは、ゆっくりとした瞬きで返す猫のほうに愛着を感じる、ということのよう。

ところで、もう一方のペットの代表でもある犬にも、同じようなことがいえるということをポーツマツ大学の進化心理学者ブリジット・ウォーラーら研究チームが明らかにした。犬には眉がハの字に見える表情があるそう。眉の内側が引き上げられると、こうした表情になるとのこと。人間が悲しみ感情を抱いているときに表れる表情を犬もするのです。

この表情が、犬と私たちの関係の濃淡を決めているようなのです。保護施設に収容されている犬の中で、この「悲しみ」表情をする犬は、しない犬に比べて、新しい飼い主が早く見つかり、引き取られます。私たちはこの表情を他者の顔に見ると、自然と「かわいそう」と思ってしまう心性を持っています。猫とは真逆なのが興味深いですね。

参考文献:『以下、無用のことながら』(司馬遼太郎著/文藝春秋社刊)

『微表情から心を読む方法 人生を変える表情心理学』(清水建二著/さくら舎刊)

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