知っておきたいクリーニング業法による依頼者保護
クリーニング店の約款に「スーツ上下など、一組になったものの片方が紛失した場合には、片方の賠償だけさせていただきます」「お客様が当店から品物をお引取りになって一か月以降は、いっさいの苦情は受け付けません」などが明記されていることがあります。普段は気にしていなくても、いざトラブルが発生すると納得できないこともあるでしょう。
たとえば背広のズボンだけなくなった場合、上着だけで着用できるものではありません。ですから、法的にはズボンが紛失したことで、上着の価値も喪失したことになり、このような場合はスーツ上下両方の価格から賠償額が算定されます。ワンピースのベルトがなくなったりした場合は微妙な感じがしますが、元々のセット商品ならスーツ同様の扱い。
多くの業者の約款では「引渡し後一ヶ月以上の面倒はみない」となっていることが多いようですが、「クリーニング標準約款」では、「引き取ってから半年以降は苦情を申し立てることはできない」となっています。また、「通常コースでの事故の際の賠償金額は5万円まで」も、注文ランクによってクリーニング店側が賠償額を限定することはできません。
クリーニング店のシミ抜きに関するエピソード 『日本一の秘書』という本の著者(リアリティを大切にするタイプ)は、食事時にワイシャツにシミをつけることが多かったという。必然、クリーニング店にお世話になることが多かったが、いくつか店を変えても、なかなか満足な仕上がりが得られなかった。そこで、評判のクリーニング店の腕前をチェックしようと思い立ったという。
実験のためには、派手にシミのついたシャツが大量に必要となる。以下は、衣類にシミがつくのをじっと待っていたときの体験なのだが、不思議な事が起こった。「シミをつけたい」と念じながらスパゲティを食べると、パスタの先からトマトソースがシャツに跳ね返ったりしないのだ。シミをつけたいと思えば思うほど、シミはつかない。
そこで、これまでの体験を思い起こすと、シミがつくのを恐れて、こわごわフォークを動かしていた。すると、てきめん、トマトソースはシャツの袖口や胸元にはねてシミを作ったのだ。この体験から著者はひとつ学んだ。パスタや赤ワインが出たときはおそれてはいけない。「シミなんかいくらついても構わない、といった態度で悠然と食べることだ」と。
コーヒーカップとクリーニグ代、どちらが高くつく コーヒーを運ぶ熟練ウェイターは、体勢を崩したらそのままカップを床に落とすそうです。カップは消耗品であり、一杯分のコーヒーのコストもしれているとわかっているからです。ところが、新米ウェイターは、一杯のコーヒーを救おうと体勢を崩しながらも一歩も二歩も足を進めてしまうとか。
結果、お客さまの洋服にコーヒーをかけてしまうことになりかねません。大げさにいうと二次被害を引き起こしてしまうのです。店側が平謝りしなくてはならないわ、クリーニング代は出さなければいけないわ……といった大事に発展してしまいかねないのです。「損して得取れ」の諺は、まさにこのような状況を指しているのかも。
参考文献:『ニホンを洗濯する クリーニング屋さんの話』(鈴木和幸著/駒草出版刊)
『日本一の秘書』(野地秩嘉著/新潮社刊)
『「教え方」の教科書』(古川祐倫著/すばる舎刊)
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