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2023年11月15日 (水)

医療におけるティーチングとコーチング

『超ホスピタリティ おもてなしのこころがあなたの人生を変える』(鎌田實著/PHP刊)によると、医師は患者さんを治療するとき、専門家としていろいろな方法を指導します。そのとき、具体的な方法論をティ―チするだけでは患者さんの身につきません。例えば、糖尿病の患者さんに、カロリーの計算だけ教えても挫折することが多いでしょう。

そこで大切なことは、まずその方法論が患者さんになぜ必要なのかを十分理解してもらい、動機づけを行うことです。なぜカロリー制限をしなければならないのか、なぜ運動が必要なのかを納得してもらった上で、カロリー計算や運動の仕方をコーチして覚えてもらうのです。途中で失敗しても、失敗するのが人間ですと、腕のいいコーチャーは言います。

患者と医師の相性はとても大切 鎌田實著『言葉で治療する』(朝日新聞出版刊)に、東京のある大学の糖尿病の専門外来の女医に診察を受けていた76歳の女性からの手紙が紹介されていました。

患者「月末に生活雑感をまとめて知人に送っています」

女医「あら。送られる人は迷惑しているでしょう」

患者「肺活量を高めるため、歌をうたいながら土手の上を歩いています」

女医「あら。ご近所様は迷惑ね」

患者「毎日、3キロほど泳いでいます。クロールは握りこぶしで水をかき、バタフライはビート版を足に挟んで、手のかき方も練習しています」

女医「あら。ちょっとやりすぎね。そんなに強迫観念にかられて頑張っていると、あるとき、突然、何もかもいやになって全部投げ出すようになるのよ。食事療法もみんなほっぽって、しまいには、ここがおかしくなるの」

その女医は、机の上のカルテから目を離さず、自らのこめかみを指して言った。

「笑い」は糖尿病等の病の特効薬 糖尿病に関する書籍や情報は身近にあふれ、対策はしているものの、効果があまり出ないという悩みを抱える患者が多いようですが、そんな方にお伝えしたいのが『生命のバカ力』という本に出てくる実験例です。糖尿病患者が先生の対策講義を聞いてから食事すると、ガッと血糖値が上がり、吉本興業の漫才を聞いてからだとあまり上がらなかった。

なおこの本には、「笑は自然な大笑いや微笑みだけでなく、作り笑いや思い出し笑いでも病気の治療効果がある」と書かれています。似たようなお話はアメリカにもあって、有力雑誌の編集長だったノーマン・カズンズ氏が自らの体験をもとに書いた『笑いと治癒力』(岩波書店刊)という本があります。この本はベストセラーになりました。

著者は慢性的な激痛を伴う膠原病におかされ、生存の可能性はほぼゼロという厳しい診断を受けましたが、絶望せず、あるヒントから「笑い」を唯一の治療薬とした自発的な闘病を始めました。すると、少しずつ効果があらわれ、そのうち10分間腹を抱えて笑うと激痛を少なくとも2時間は抑えられるようになりました。

そして、笑いの鎮痛効果が薄らぐと、またお笑いネタ満載の映像のスイッチを入れました。

また、カントにも「笑い」に対する解説があります。彼は『純粋理性批判』の中で、大声の笑いは「腸と横隔膜を動かすことにより体が健康であるような感覚を生み出し、病気に対する医師の的確な処方箋の役目を果たしてくれる(投稿者意訳)」と書いています。

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