クリスマス(イブ)にまつわる3つの話
華やぐ街中で泣き出す5歳児に何が…… 街には、クリスマスソングが流れ、ウィンドウは豪華に飾りつけられ、サンタクロースが街角で踊る。店頭には玩具もたくさん並べられていて、5歳の男の子は目を輝かせて喜ぶに違いないと母親は思った。ところが、案に相違して、息子は母親のコートにすがりつき、シクシクと泣きだした。
「どうしたの。泣いてばかりいるとサンタクロースさんは来てくれませんよ」「あら靴の紐がほどけていたのね」。母親は、歩道にひざまずいて、息子の靴の紐を結び直してやりながら、何気なく目を上げた。すると視界には何もないのだ。美しいイルミネーションも、ショーウィンドウも、プレゼントも、楽しいテーブルの飾りつけも、何も見えない。
目に入ってくるのは、太い足とヒップが押し合い、突き当りながら行き過ぎていく通路だけだった。それは、なんとも恐ろしい光景である。母親が、5歳の子どもの目の高さで世界を眺めるのは、これが初めての経験だった。母親は驚き、すぐさま子どもを連れて家に戻った。そして、二度と自分を基準にした楽しみを子どもに押しつけまいと心に誓った。
16歳の少女に起きたクリスマス直前の出来事 ある少女がお買い物をした時レジに手袋を忘れた。そこで、店員がその少女を追いかけ、手袋を忘れたかの確認をした。忘れたことを知らせてくれた店員に感謝しながら少女と店員は再びお店に戻って、少女はレジで保管していた手袋を回収することができた。ここまでは、めでたしめでたしのお話だが、ことは難しい問題に発展した。
買い物を終えた少女が店員に追われ、付き添われて店に戻った。この状況を目撃した人が感じたのは、別のことだった。翌日少女周辺には、万引きをして捕まったという話が流布された。このとき、店が彼女に対する風評被害を払拭するためにとった手段は、クリスマス当日、少女に一番目立つレジの業務をサンタさんの衣装で手伝ってもらうことだった。
クレームそれとも善意の第三者か? 「クリスマスイブ用に買って帰った七面鳥がまずかった」と一人のご婦人がレシートと紙袋を持って店に現れた。持参した紙袋には食べ残しが。この状況を担当者は「クレーマーだ」と瞬時に想定した。しかし自己判断だけではと、他の部門数人とバックヤードで情報共有した。皆の答えはやはり「クレーマーに違いない」との結論だった。
そこに社長が通りかかり「何をしてるの?」。「実は、…きっと…と皆で話し合って」。すると社長は「それは君たちの解釈が間違っているかも。イブは年に一度、家族で集まり貴重な時間を過ごす場。そのような大事な家族のコミュニケーションの場で、メインディッシュの「七面鳥がまずい」と言ったのでは場の雰囲気が壊れて台なしになってしまう」。
「そこで誰もがまずいと思いながらそれを口に出さず、かえって一生懸命に食べたと、なぜそのような解釈ができないのか」と皆に伝えた。その上で、社長は「まずかったのに、なぜ骨だけお持ちになったのですか? とお聞きしてごらん」と指示すると、お客様は「実は何かの足しになればと思い伝えに来たのであって返金を要求しに来たのではない」と。
※参考文献:『成功の心理学 勝者となるための10の行動指針』(D.ウェイトリー著/ダイヤモンド社刊)
『ブーメランの法則』(ファーガル・クイン著/かんき出版刊)
『実践的クレーム対応』(武田哲男著/産業能率大学出版部刊)
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