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2023年12月

2023年12月26日 (火)

クリスマス(イブ)にまつわる3つの話

華やぐ街中で泣き出す5歳児に何が…… 街には、クリスマスソングが流れ、ウィンドウは豪華に飾りつけられ、サンタクロースが街角で踊る。店頭には玩具もたくさん並べられていて、5歳の男の子は目を輝かせて喜ぶに違いないと母親は思った。ところが、案に相違して、息子は母親のコートにすがりつき、シクシクと泣きだした。

「どうしたの。泣いてばかりいるとサンタクロースさんは来てくれませんよ」「あら靴の紐がほどけていたのね」。母親は、歩道にひざまずいて、息子の靴の紐を結び直してやりながら、何気なく目を上げた。すると視界には何もないのだ。美しいイルミネーションも、ショーウィンドウも、プレゼントも、楽しいテーブルの飾りつけも、何も見えない。

目に入ってくるのは、太い足とヒップが押し合い、突き当りながら行き過ぎていく通路だけだった。それは、なんとも恐ろしい光景である。母親が、5歳の子どもの目の高さで世界を眺めるのは、これが初めての経験だった。母親は驚き、すぐさま子どもを連れて家に戻った。そして、二度と自分を基準にした楽しみを子どもに押しつけまいと心に誓った。

16歳の少女に起きたクリスマス直前の出来事 ある少女がお買い物をした時レジに手袋を忘れた。そこで、店員がその少女を追いかけ、手袋を忘れたかの確認をした。忘れたことを知らせてくれた店員に感謝しながら少女と店員は再びお店に戻って、少女はレジで保管していた手袋を回収することができた。ここまでは、めでたしめでたしのお話だが、ことは難しい問題に発展した。

買い物を終えた少女が店員に追われ、付き添われて店に戻った。この状況を目撃した人が感じたのは、別のことだった。翌日少女周辺には、万引きをして捕まったという話が流布された。このとき、店が彼女に対する風評被害を払拭するためにとった手段は、クリスマス当日、少女に一番目立つレジの業務をサンタさんの衣装で手伝ってもらうことだった。

クレームそれとも善意の第三者か? 「クリスマスイブ用に買って帰った七面鳥がまずかった」と一人のご婦人がレシートと紙袋を持って店に現れた。持参した紙袋には食べ残しが。この状況を担当者は「クレーマーだ」と瞬時に想定した。しかし自己判断だけではと、他の部門数人とバックヤードで情報共有した。皆の答えはやはり「クレーマーに違いない」との結論だった。

そこに社長が通りかかり「何をしてるの?」。「実は、…きっと…と皆で話し合って」。すると社長は「それは君たちの解釈が間違っているかも。イブは年に一度、家族で集まり貴重な時間を過ごす場。そのような大事な家族のコミュニケーションの場で、メインディッシュの「七面鳥がまずい」と言ったのでは場の雰囲気が壊れて台なしになってしまう」。

「そこで誰もがまずいと思いながらそれを口に出さず、かえって一生懸命に食べたと、なぜそのような解釈ができないのか」と皆に伝えた。その上で、社長は「まずかったのに、なぜ骨だけお持ちになったのですか? とお聞きしてごらん」と指示すると、お客様は「実は何かの足しになればと思い伝えに来たのであって返金を要求しに来たのではない」と。

※参考文献:『成功の心理学 勝者となるための10の行動指針』(D.ウェイトリー著/ダイヤモンド社刊)

『ブーメランの法則』(ファーガル・クイン著/かんき出版刊)

『実践的クレーム対応』(武田哲男著/産業能率大学出版部刊)

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2023年12月21日 (木)

『タイム誌』が取り上げた9家族の調査

親は普通で、生まれた子供がすべてそれぞれの道で成功を収めている9家族を調査した結果報告。ただし、親は普通の人々で、親の七光りは皆無。この9家族の教育から共通点を引き出すと、次の6つの要素「移民」「親の教育熱心度」「親の社会活動」「家庭環境」「子ども時代の臨死体験」「親の教育方針(幼児教育と放任主義)」が見えてきた。

第一は、ほとんどが他国からの移民でした。移住者はそれだけで、本国人に比べてすべての面でハンディキャップを負います。簡単に言えば、百メートル競走を、スタートラインの後方、5メートルか10メートル地点から、スタートするようなものです。しかしこのハンディが、子どもたちに負けてなるものかという向上心と忍耐強さを与えていました。

第二に、両親は子どもの小さい頃、教育熱心でした。0歳から5歳までの学校教育以前の早い時期に、子供たちにさまざまなことを学ばせていました。つまり学ぶ心を、就学以前に植えつけていたのです。

第三は、親が社会活動家であり、世の中をよりよく変えていくための運動をしていました。子どもは親の行動を通して、社会の不合理を学びとり、それを変革していく姿勢を学んでいたのです。いわばこうして自分を取り巻く世界の理解を深めたのです。

4は、家庭の中が決して平穏ではなく、両親の言い争い、きょうだい喧嘩と無縁ではなかった点です。とはいっても両親の争いは決して暴力沙汰ではなく、社会の見方の違いからの意見の突き合せのようなものです。不登校や万引、喫煙、殴り合いの喧嘩も、子どもたちは十代の頃経験しています。移民の子としていじめられた子供もいますが、これが却ってなにくそという精神力を培っていました。

5は、子供時代に人の死を何度も見て、生きていることの貴重さを学んでいる点です。人の死を知ることは、自分の人生の限界を知ることに直結します。だからこそ、生きているうちに自らのやりたいことを成し遂げる馬力も、生まれてくるのでしょう。

最後の6つ目は、丁寧な幼児教育の後の、放任主義です。すべての子供が、何をしても許されたと言います。すべてを自分自身の責任に任されると、逆に子供は野放図なことはできません。「お前たちは、他人のゴールには絶対辿り着けない。お前がテープを切れるのはお前のゴールだけだ」と言われたのです。

この6つ「移民」「親の教育熱心度」「親の社会活動」「家庭環境」「子ども時代の臨死体験」「親の教育方針(幼児教育と放任主義)」のどれも、いわゆる教育ママやパパのやり方とは正反対。親が敷いたレールに子供を乗せ、猛スピードで後ろから押して行く方法とは好対照。そこに、私たちはネガティブ・ケイパビリティ(*)の力を見ることができます。

Wikipediaによると、ネガティブ・ケイパビリティ(Negative capability)は詩人ジョン・キーツが不確実なものや未解決のものを受容する能力を記述した言葉で、日本語訳は定まっておらず、「消極的能力」「消極的受容力」「否定的能力」など数多くの訳語が存在。

※参考文献:『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(帚木蓬生著/朝日新聞出版刊)

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2023年12月10日 (日)

保守的農業に風穴を開ける「有機農業」

情報を仕入れすぎるとよくない、と言うのは科学論文を書いたことのある人ならば、よくわかるはず。読むうちに、だんだん他人のものに引っ張られてしまう。すると自分のアイデアが枯渇する。ある指導者は、「本を読んじゃいけないよ」と教え、「よくない教科書というのは、よくできすぎている教科書、説明が至れり尽くせりの教科書だ」と。

「農業は保守的だ」などとよく言われる。うっかり「最新情報」を仕入れて、やり方を変えて、収穫がなければ元も子もないから、そうそう簡単に現場は変えられない。だから保守的にならざるをえない。コメの苗植えはなるべく田んぼにぎゅうぎゅうに詰めて植えることになっている。単位面積当たりの収穫量を上げるには、そう考えるのが自然。

ところが有機農法を長いことやっている人に聞くと、「それは違う」と言う。ぎゅうぎゅうではなく、7割程度に抑えたほうが言い、と。周りからは笑われることもあるそうですが、最終的にはその方が品質も良くて、収穫量も遜色ないと言います。この人は経験則で、こういうやり方を導いたのです。

アレルギー体質の子を持ったある農家の母親の決意  山形県で農業を営んでいた森谷さんには、アレルギー体質の子どもさんがいた。この子の体質改善のため、彼女は栄養価が高く農薬の心配がない自家製玄米を食べさせようと思いつく。そして、菓子作りの初心者ながら、専門書を見ながら小麦を玄米に置き換え、試行錯誤を繰り返し玄米の粉を使ったお菓子を作りはじめた。

一方、森谷家では美味しいお米は作れるものの販売が芳しくなく、奥さんの森谷さんがHPページを利用したインターネット販売を提案し、その担当に。販売の窓口となった彼女は、注文先にお米を発送するとき、「おまけ」として季節の果物や野菜を添えて送っていたが、あるとき、この「おまけ」に試作段階の「玄米クッキー」を入れた。

すると思いの外好評で、そのうち、お客様から「玄米クッキーの」問い合わせが入るように。 その後も新メニューを開発し、品評会で賞を受賞し続ける。そして、平成19年には「玄米おからクッキー」で山形県農産加工大賞を受賞。これをきっかけに森谷さんは、NHK文化センター山形で毎月2回「玄米の焼き菓子作り」の講座を受け持つことに。

最後に、ある農家の父親の述懐 「昔、普通の農場で働いていたころは、家に帰っても子どもたちのお帰りのハグをしてもらえなかった。まずシャワーを浴び、服を洗って消毒しないといけなかったからね。今はレタス畑から子どもたちの腕の中へ飛び込める。体に有害なものがついていないからね」。これは、有機農業の専門会社の担当者が鮮明に覚えていたエピソード。

参考文献:『「自分」の壁』(養老孟司著/新潮社刊)

『東北発!女性起業家28のストーリー』(ブレインワークス/東北地域環境研究室編/カナリア書房刊)

『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』(カーマイン・ガロ著/日経BPマーケティング刊)

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2023年12月 5日 (火)

年末に「カレンダー」のこと考えてみる

初は地球カレンダーから。地球の誕生を11日とすると、生命が誕生したのが48日、それから111日までは単細胞生物しかおらず、最初の魚類が出現したのが1225日、人類の祖先が現れたのが1231日の午後810分です。エジプトやメソポタミアに最初の文明が誕生してからは、わずか30秒しか経っていません。

ソビエト連邦時代のカレンダー改変による失敗  19298月、1週間を7日ではなく5日にし、4日働いて1日休むというプランが発表された。重要なのは、みんなが同じ日に休まないことだ。労働者は黄、緑、オレンジ、紫、赤の5色にグループ分けされて、それぞれ違う日に休みが割り当てられた。そうやって、つねに4つのグループが工場で働いているようにした。

ソ連当局によれば、これは労働者にもメリットの大きい政策になるはずだった。休日が増え、客足が分散して、文化施設やスーパーマーケットの混雑が緩和されるからだ。ところが実行してみると、ソ連の一般市民の生活はぼろぼろになった。作家のジュディス・シュレビッツによると、社交の機会が奪われて、社会が断絶されてしまったためだ。

グループが違うと同じ日に休みが取れない。これは夫婦間でも同じ。交代カレンダー制は1940年まで継続されたあと、機械のメンテナンスに支障をきたすという理由で廃止された。しかし、ソ連政府の実験は、時間の価値が良で決まるのではなく、大切な人と過ごせるかどうかにかかっているという真実を図らずも実証した。

「カレンダー」と「時間」にまつわる3話  ある地方の40代の若い経営者が、会社の規模はそれほどではないのに、地元のいろいろな会の役員をされていた。なんでこの人が、と観察すると、その方の社長室には7枚のカレンダーが貼ってありました。しかも、すべて違う会社の名前が入ったカレンダー。人のつながりをとても大事にする方だったのです。

あるメーカーがアップルの「ニュートン」を買ったお客に電話をかけ、どんな機能が欲しいか意見を聞いた。その中に、「ごちゃごちゃした予定を整理して、いくつものカレンダーを一つにまとめ、予定を一括管理できる製品が欲しい」があった。これを聞いた調査元はライバルは、ほかのコンピューター製品ではなく、卓上カレンダーだと気づいた。

「僕たちはけっして時間を手に入れることができない。なぜなら僕たち自身が、時間だからだ」とハイデッカーは言った。自分が時間そのものだとしたら、時間の上に立とうとか、支配しようとかいう考えは意味をなさない。何かを支配するためには、そこから離れて、外側に足場を見つけなくてはならないからだ。でも、時間の外に出ることなんて…。

※参考文献:『不愉快なことには理由がある』(橘玲著/集英社刊)

『限りある時間の使い方』(オリバー・バークマン著/かんき出版刊)

『仕事は99%気配り』(川田修著/朝日新聞出版刊)

20歳のときに知っておきたかったこと』(ティナ・シーリグ著/阪急コミュニケーションズ刊) 

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