海軍カレーの都市伝説とカツカレー物語
日本のカレーは海軍発祥の説が広く語られているが、どうやらこれは都市伝説のひとつらしい。というのは、明治5年(1872年)に刊行された『西洋料理指南』というレシピ本に、すでにカレーが登場していることと、翌年(明治6年)には陸軍幼年学校でライスカレーが昼食に供されていたとの記録がある。これかのことから海軍説には疑問が残る。
明治時代、白米中心の食事をとっていた日本海軍では、ビタミンが欠乏して起こる脚気が深刻な問題となっていた。 そこで栄養改善のため導入されたのがイギリス海軍で提供されていたカレー風味のシチューにとろみをつけたカレーであった。
とはいえ、カレーの普及には海軍が大いに貢献していることは間違いなさそう。伝えられるところでは、明治時代、白米中心の食事をとっていた日本海軍では、ビタミン欠乏に起因する脚気が深刻化した。そこで栄養改善のため導入されたのがイギリス海軍で提供されていたカレー風味のシチューにとろみをつけたカレーであったのだ。
そのカレーの具がたまねぎ、にんじん、ジャガイモ、肉と相場が決まったのは、東郷平八郎がイギリスに留学中ビーフカレーを大いに気に入り「肉じゃが」を考案した。その後、海軍のシェフがカレーに何を入れていいか分からず「肉じゃが」を応用した。元水兵たちが料理屋を開いたり自宅で作ったりして、〝海軍のカレー〟が世間に広がったらしい。
発祥が不明確なカレーに対し、「カツカレー」には元祖を名乗る3店があると、2023年12月25日『日本経済新聞 夕刊』が、「なるほど! ルーツ探検隊」で〝カツカレー発祥に3つの説〟を報じている。この記事によると、開発時期は異なるが、浅草、銀座、新宿にそれなりの根拠(常連客に著名人)を持った老舗が存在するとしている。
まずは、常連に渥美清氏、永六輔氏が登場する浅草寺裏の河金で、「元祖かつカレー河金丼」を店頭に大きく掲げている。店主の河野貴和さんは誕生について「カツレツやカレーライスなどの洋食屋台として始めたのが大正7年(1918年)。お客さんから「さっと食べられるようにカレーにカツをのせてくれ」と頼まれ、創業時からメニューにあったと。
次は、常連に石原裕次郎氏、歌手のKANが登場する、1947年(昭和22年)創業の老舗洋食店・銀座スイス。この店でのカツカレー誕生のきっかけは、元プロ野球選手・千葉茂氏の一言「カレーとカツを一緒にしてくれ」だったそう。銀座スイスの創業日は2月22日で、この日を「カツカレーの日」として記念日登録し、認定されているとのこと。
最後は、常連に三国連太郎、柴田錬三郎氏が登場するのは、1921年(大正10年)新宿に創業で「昔ながらのあたらしい味」を掲げるとんかつ店「王ろじ」。店主は「とんかつ」という名称は「うちが最初に使ったとフレンチシェフだった父は言っていましたが、カツカレーを出したのは昭和30年代前半だと思います」。また「とんかつ」の名称も元祖だと。
※参考資料&文献:Wikipedia「海軍カレー」
『ニッポン「もの物語」』(夏目幸明著/講談社刊)
『日本経済新聞』(2023年12月25日夕刊)「なるほど! ルーツ探検隊」
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