日清食品「カップヌードル」の販売戦略
20世紀は世界中が物質的繁栄を求めてモーゼンと走り続けた世紀である。で、そのレースに見事、わが日本は上位入賞を果たした。が、食べ残しのゴミの山に埋まって暮らす僕らに、カップヌードルのCMは、あえて「hungry?」と問いかける。そう、ハラは一杯でも、ぼくらは実はすごくhungryなのかもしれない。『天野祐吉のCM天気図傑作選』より
1992年スタートの「カップヌードル」テレビCM「hungry?」シリーズは、単純で明るいユーモアが大評判になり、ヨーロッパ、香港、ブラジルでもオンエアされ、人気を博した。そして93年、広告業界で世界最高のコンクールといわれるカンヌ国際広告映画祭 (第40回) において、同シリーズの「シンテトケラス篇」と「モア篇」がグランプリを獲得。
オズボーンの9つのチェックリストと「日清食品」「カップヌードル」
①転用(Put to other uses):高槻工場が線路沿いにあったことから、工場の屋根の上に「魔法のラーメン」などと書いた大きな看板を取りつけた。
②応用(Adapt):てんぷら料理にヒントを得て、油を使った乾燥処理の方法を講じることにした。
③変更(Modify):カップヌードルは発売当初売れなかった。経団連に持ち込み試食会をして感想を求めたところ「カップの中にめんを入れるなんて邪道だ。日本の今までの食生活を冒涜している」とか<麺をフォークで食べるとは、それも歩きながらとは行儀が悪い」、「せいぜい災害時の非常食かレジャー用で、たくさん売れるものではない」といった具合に酷評される。問屋筋でも「百円とは高いのと違いますか」と熱心に売ってくれそうもない雰囲気。そこで安藤は問屋ルートへ流すよりも、消費者に直接ぶつけ、反応を見てから市場へ流す作戦をとる。
④拡大(Magnify):チキンラーメンの競合商品の乱立で苦労した経験から、カップ麺は創業者利潤をしっかり確保できるように、茨城県藤代町に3万1千平方mの土地を確保し、30億円かけてカップヌードル専用の関東工場を完成させていた。模倣を常とする業界で、スタートから大きく引き離す作戦だった。
⑤縮小(Minify):ラーメンの屋台に並ぶ時間を節約できないか。
⑥代用(Substitute):機内食のトレイの中に素晴らしいものを見つけた。直径4,5センチ、高さ2センチほどのアルミ容器である。マカデミアナッツを入れ、紙にアルミ箔をコーディングした蓋できっちり密閉してある。いまではジャムやママレードの一回使用分が詰められたりする、あの容器である。当時、日本では見かけないものだった。
⑦置換(Rearrange):学校の給食をパンからめんに置き換えられないか
⑧逆転(Reverse):めんを容器の中に入れようとするから進まないのだ。中身を下に置いて、逆に容器を上からかぶせたらどうだろう。面の塊の上にカップをかぶせる。くるっと一回転して落ち着かせると、めんは見事に中間保持されていた(『奇想天外の発想』)
⑨結合(Combine):オロナミンCの命名は、大塚製薬の「オロナイン軟膏」と武田薬品の「アリナミン」の頭とおしりを結合したものと、大塚正士と語っている。
※参考文献 『天野祐吉のCM天気図傑作選』(天野祐吉著/朝日新聞出版刊)
『わかりやすいマーケティング戦略』(沼上幹著/有斐閣アルマ刊)
『安藤百福の【一日一得】』(石山順也著/KKロングセラーズ刊)