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2024年2月 8日 (木)

F・ベドガーとD・カーネギーの笑顔

遡ること87年前の1937年に初版(同年に日本でも発刊)が出たデール・カーネギーの『人を動かす』がビジネス書の永遠のベストセラーだとすると、セールス本のベストセラーはフランク・ベドガーの『私はどうして販売外交に成功したか』といわれる。この本の冒頭に1917年来の知己というカーネギー氏が「発刊に寄せて」を書いている。

「本書こそ、私が今日までに読んだ販売術に関する著書のうちで、最も有益で、最も示唆に富んだ労作である。本書は保険の外交員だけでなく、すべてのセールスマンに益するところはなはだ大で、フランク・ベドガーの死後も末長く不滅の貢献をなすであろう。私は本書を1ページごとに精読した。そして、私は情熱を傾けて本書を推薦する」

ベドガー氏は、セールスの秘訣を「見込客の事務所に入る直前、立ち止まり、人生で一番嬉しかった事柄を思い浮かべ、心から溢れ出る笑顔を作る(毎朝30分この練習)。その笑顔が消えかけた瞬間に入室する。そうすればいつでも愉快そうに笑うことができ、そして部屋の中で会う人からも、これと同じような意味の笑を誘い出すことができる、と。

『人を動かす』の第二章「笑顔を忘れない」に紹介された「広告」より

「クリスマスの笑顔」

元手がいらない。しかも利益は莫大。

与えても減らず、与えられた者は豊かになる。

一瞬のあいだ見せれば、その記憶は永遠に続く。

どんな金持ちもこれなしでは暮らせない。また、どんな貧乏人もこれによって豊かになる。

家庭に幸福を、商売に善意をもたらす。

友情の合言葉。

疲れた者にとっては休養、失意の人にとっては明るい兆し(光明)、悲しむ人にとっては太陽、悩める者にとっては自然の解毒剤となる。

買うことも、強要することも、借りることも、盗むこともできない。無償で与えて初めて値打ちが出る。

この広告は、上記コピーの後に、「クリスマスセールで疲れ切った店員のうちに、これをお見せしない者がございました節は、恐れ入りますが、お客様の分をお見せ願いたいと存じます。笑顔お使い切った人間ほど、笑顔を必要とするものはございません」で結ばれている。

近年は、共稼ぎ世帯が多く、忙しさゆえに家庭内の会話が乏しくなっている感があるが、カーネギーは、そうした家庭事情も「笑顔」で問題解決可能と指摘している。殺伐とした世相を反映してクレーマーの存在が問題視される世相についても、お客様との最初の接点で「笑顔」があれば違った結果になるのではとの示唆も。

友情をはじめ、人間関係がぎくしゃくして、ストレスをためる人も多い世の中になりつつあるが、これについてカーネギーは「笑顔」での問題解決を説く。疲れた者にとっては休養、失意の人にとっては光明、悲しむ人にとっては太陽、悩める者にとっては自然の解毒剤となる、と。これらは現代にもピタリとあてはまるのではないだろうか。

本稿の最後はウィリアム・ジェームズ。彼は「動作は感情に従って起きるように見えるが、実際は、動作と感情は並行する。動作は意志によって直接統制することができるが、感情はそうはできない。ところが、感情は、動作を調整することによって、間接に調整することができる」と。意図的な「笑顔」が感情にプラスの影響を与えるとの見解だ。

※参考文献:『人を動かす』:デール・カーネギー著/創元社刊

『私はどうして販売外交に成功したか』:フランク・ベドガー著/ダイヤモンド社刊

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