身近にある店員さん達のホスピタリティ
ホスピタリティは高級ホテル・高級品取扱店舗・医療機関などの専売特許ではありません。今回紹介するのは、行きずりの客が、たまたま訪れた「空港の和食店」、「街のお蕎麦屋さん」、「病院近くのファストフード店」で受けたステキな対応についてです。どれも心温まるお話で、日本人が本来持っていた接客のスタンスが色濃く表れた例だと思います。
高知空港施設内の和食店での「弔いのホスピタリティ」
妻を亡くした元校長から高知の日本料理店へ感謝状が届きました。彼は四国巡礼を終え、高知空港で待ち時間にそのお店に入り、ビール1本と高知名物のかますの姿鮨一人前を注文しました。加えて「申し訳ありませんがグラス2つで」と。注文を受けた若いウエイトレスは、どうしてグラスが2つ必要なのだろうと不思議に思いながら指示に従います。
まずビールとグラスを2つ出しましたが、グラスのことがどうしても気になったので席に目を向けます。すると客は、女性の写真をテーブルの中央に置き、その前のグラスにビールを注ぎました。続いて手にしていたグラスにビールを入れ、乾杯をしました。そこで彼女は
お鮨が出来上がって運ぶときに箸と箸置きを二組、小皿を二枚持って行きました。
元校長の手紙には、次のように書かれていました。「四国への旅は、家内の写真と一緒に出かけ、食事には一緒にビールを飲みました。しかし、お箸と小皿を2人分出して頂いたのは、 おたくの店が初めてでした。驚きました。感動で体が震えました。帰りの飛行機の中では、涙が止まりませんでした。ほんとうにありがとうございました」と。
たかが、お水。されど、お水。心憎い気遣いに脱帽
持病があって、旅先でも薬が手放せない人が、東京の神楽坂に友人を訪ねた時のことです。夕食に、「おいしそうなそば屋さんがある」と連れていかれました。食後、いつものように薬袋を取り出します。お水をお願いするのも面倒なので、今日はお茶で飲もうか、それともそば湯で・・・などと考えつつ錠剤を1回分手にした瞬間のことでした。
目の前にコップが置かれたのです。多分、お店の経営者の奥様なのでしょう、彼女は私の様子を見ていて、頼んでもいなのに気を利かせてくれたのでした。うれしいことに、氷が入っていません。「ありがとう!」と言いました。そして、口に含んでから、さらに驚きました。ほんのり温かいではありませんか! なんと、それは「白湯(さゆ)」だったのです。
若い女店員の心憎いばかりの思い遣り
店には、女性の店員が一人でした。朝のメニューにはテリヤキバーガーがないので躊躇していると、彼女は注文を聞き、「少しお時間をいただければ…」と言ってすぐに準備を始めました。その時、入院中の子供に持っていくことを話しました。このような店には、マニュアルとおざなりの対応しかないものと思っていたので、彼女の対応がとても驚きでした。
注文の品を受け取り、店を出ようとする客に、彼女は、「おだいじに」と声をかけてくれそうで、客は年甲斐もなく、ジーンとしてしまったそうです。そして、さらに驚いたのは、病院で子息の前で袋を開けてみると、中にはメッセージカードが入っており、「早くよくなってくださいね」と書かれてありました。
※参考文献:『ザ・お客様相談室 売上高貢献率120億円!』(岸正則著/文芸社刊)
『あなたが創る顧客満足』(佐藤知恭著/日経ビジネス刊)
『毎日が楽しくなる 17の物語』(志賀内泰弘著/PHP研究所刊)
『お客様からの感謝状』(佐藤寛著/ 実務教育出版刊)
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