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2024年4月

2024年4月23日 (火)

「聴」の語源と営業面で「聴く」の効用

『字通』『字訓』『字統』の著者であり、漢字研究の第一人者・白川静博士の説は、三千年前の中国で「耳」という字や「徳」という字の一部などが組み合わされて生まれた複雑な旧字体が、時代とともに変化して「聴く」になった。そこからこの字には本来、「神の声を聴くことのできる聡明さ、人徳」という意味が含まれているというのです。

『こころの声を「聴く力」』という本によると、「聞く」という字は「門」に「耳」と書く通り、門のところへ訪ねて聞く、「問う」という意味になるそうです。一方、「聴く」という字は、カウンセリングの世界などでは耳偏に十四の心、そう書くと見立てて、十四歳の頃の繊細で柔らかな感受性で相手の言葉を受け止めることだという解釈があります。

売り上げを上げている人ほど、「聴く、聴く、聴く」 ベテラン店長の「優秀な販売スタッフ」の3つの条件は ①ただひたすらに聴く ②途中で話の腰を折らないで聴く ③話のすべてを聴く(もちろん時間無制限)

会話における「聴くことの重要性」について、近代臨床心理学者の一人、カール・ロジャーズは次のように説いている。「人は話すことにより、心が癒される」と。

会話のバランス「80対20の法則」 お客様にお話ししていただく時間を80%、スタッフが話をする時間を20%の配分で会話するというもの。場合によっては、お客様が80%でも物足りないかもしれないと。

そして、会話における「8020の法則」には、もう一つの意味があるとのこと。それは、スタッフの話を「世間話80%、商売20%」にするというものだそうです。

生命保険会社の10名の優秀社員の中の4名の吃音者 B氏はD生命保険会社での優秀保険セールスマンの表彰式に招待されていた。そして驚いた光景に出くわした。表彰された10名のトップセールスマンのうち、4名が吃音気味の人であったというのである。B氏はその後N社の研修に出席することになっており、その場で、この貴重な話題を提供したところ、次のような結論を得たという。

吃音症の人は、一般の人に比べて、当然のことながらぺらぺらしゃべる能力は劣る。すなわち語る技術は不得手である。したがって、①いやでも相手の話をじっと聞くほうに回らなければならない。②どうしても話す必要のあるときのみ、十分頭の中で空稽古して練られた短い言葉を発する。③言葉を十分使えない分、販売ツールを念入りに準備している。

「聞く」「聴く」「訊く」の3段階レベルアップ法 相手の話に対して、興味を持っている姿勢を示すために、話をぼんやりと「聞く」ことから次第に「聴く」姿勢に改める。すると、相手にあなたの熱意が自然と伝わる。「私の話を熱心に聴いてくれているな」と感じれば、相手も「こいつにはもっといろいろな話を聞かせてやろう」という気持ちになる。その次に、タイミングを計って「訊く(質問)」こと。

※参考文献:「心の声を「聴く力」」(山根元伊代著/  潮出版社刊)

『図解 相手の気持ちをきちんと〈聞く〉技術』(平木典子著/PHP研究所刊)

『商品よりも「あと味」を先に売りなさい』(大なぎ勝著/日本実業出版社刊)

『セールスセンスを磨く プレゼンテーション技術』(森田琢夫著/井上書院刊)

『苦手な人との会話はこう切り出しなさい!』(蟹瀬誠一/角川マガジンズ刊)

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2024年4月18日 (木)

椅子の良し悪しで人生が左右されるかも

テレワークをはじめた人の多くが悩むのが、長時間作業による腰や肩、首などへの負担。背板や座面が固い椅子を利用している場合はなおさら。そこで有力な選択肢となるのが、オフィス家具メーカーの椅子。オーソドックスなオフィス向けのほか、長時間の利用を想定し通気性に優れた素材にこだわった製品、著名なデザイナーによる高級製品もある。

その設計には通気性のある素材の採用、エルゴノミクス(人間工学)に基づいたデザインなどの工夫が施されている。機種によっては、マッサージ機能を備えたものや、休憩や仮眠時には背もたれを倒してほぼフラットになるもの、オットマンやフットレストがついたものなどがある。長時間作業をしたままでも疲れにくいと、テレワーカーの間でも評判。

フロイト椅子へのこだわり  ナチスから逃れるための逃避行時に携行が許されたのはひと家族でスーツケース一つ分の必需品だった。しかし、このときのフロイトの持ち物は椅子だった。彼の娘マティルデによると、フロイトはいつもの姿勢、つまり「両足を片方の肘掛からだらりと垂らし、上体を後ろに傾けて本を上に掲げて」座っているときに、最もくつろいで見えたそうだ。

彼は、背もたれと同じように肘掛けも二重構造にした特別な椅子を、職人につくらせていた。超現代的な見た目の椅子だ。人間は一人ひとりが特異であり万人が使えるものなどない、というフロイトの思想がよく表れたエピソード。当時、精神病患者には標準化された治療が一律に施されたが、彼は患者の病歴、生活環境、性格を考慮に入れた治療を用意した。

椅子の座り方(非言語情報)だけで自在に感情表現  タモリさんの「いいとも!」を思い出すと、彼はゲストを紹介し、ゲストの着座後、プロフィールを質問してみたり、現状について質問したりします。入り方のパターンは多彩ですが、ほぼ共通しているのは(相手との面識が薄いときは特に)、柔らかい口調で、ゆっくり話すこと。また、椅子にもたれてゆったり座ることが多かった。これは、自分がリラックスしていることを示し、相手にも緊張せずに話してもらいたいから。

そして、話が展開していくうちに、「ここだ!」という場面では、斜めにのけぞったり背筋を伸ばしたりしながら、高く強い口調で興味を示す。柔らかく平静な状態から変化を見せるので、相手はハッと集中する。ただ、必要以上にハイテンション表現を続けない。

そのため、視聴者には大げさではない自然なやりとりに観える。さらに盛り上がって大きく笑う時は、相手側に前のめりになってから大きくのけぞって笑ったり、体をまわしながら観客席を見て笑ったり。客席を見るのは、みんなを笑いの共感に巻き込みたいから。若手芸人のようにバタバタとは動かないが、ポイントとなる場面で大きく体を動かす。

また、必要に応じて手の動きも入れ、立ち上がって動作をマネたりも。様々なパターンがあり飽きさせない。このように、ごく自然に雑談を交わしながら、相手を乗せて視聴者まで楽しませる。そのために、いろんなノンバーバル(非言語)テクニックが取りこまれている。それがごく自然なので、あまり気づかれない。これが、タモリさんのすごさ。

※参考文献:『テレワーク大全』(小林暢子著/日経BP刊)

『天才はしつこい』(ロッド・シャドキンス著/CCCメディアハウス刊)

『タモリさんに学ぶ雑談の技術』(難波義行著/こう書房刊)

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2024年4月11日 (木)

さまざまな美術館(展)とその楽しみ方

《パックマン》はなぜMOMAに所蔵されているのか

このゲームは、1980年に現バンダイナムコエンターテインメントから発売されたアーケードゲームです。プレーヤーは、迷路のなかでパックマンを操作し、「ゴースト」を躱わしながら「クッキー」を食べ尽していきます。世界中で一大ブームを巻き起こし、発売から7年間も増産されるなど、最も成功した業務用ゲーム機の1つとして知られています。

美術館はこのゲーム全体、つまり「コード」を所蔵しており、ある展示では、このゲームが実際にプレイできる状態で展示されていました。1920年に野心溢れる3人の女性たちを中心に設立されたMOMANY近代美術館)は、近現代美術専門の美術館だが、この作品の収蔵にはイギリス、アメリカの有名ジャーナリズムから批判があったという。

これに対し、このゲームの所蔵に携わったキャリア25年の学芸員は、「率直なところ、私はビデオゲームや椅子がアートかどうかという議論にはまったく興味がありません」と切り返し、さらに「デザインというものは、人間の創造的表現の中で最高の形式の一つだと考えています。偉大なデザインを有するものならそれで十分すぎることなのです」と。

モネの《睡蓮》にカエルが描かれているか?

岡山県にある大原美術館(倉敷の実業家大原孫三郎による日本で最初の西洋・近代美術館として1930年に開館)で、4歳の男の子がモネの《睡蓮》を指差して、「カエルがいる」といいました。さて、この絵にカエルは描かれているか。描かれてはいません。それどころか、モネの作品群である《睡蓮》には、「カエル」が描かれたものは1枚もないのです。

では、男の子はどこにカエルを見たのでしょうか? たまたまその場にいて、カエルが描かれていないことを知っている学芸員が、「えっ、どこにいるの」と聞き返したところ、その男の子は「いま水にもぐっている」とこたえました。これもひとつのアート鑑賞のあり方との解説が『13歳からのアート思考』という本に紹介されています。

世界的建築家のベースとなった栃木の2つの美術館

広重美術館が2000年に海外で話題作となりました。設計を担当した建築家の隈研吾氏は、地元の職人と一緒に作ると決めて、和紙は、地元の和紙職人が手漉し、石は、地元の石切り場で採れるグレーの地味な石を使いました。木はもちろん裏山のスギです。屋根もすべて地元産のスギを使い、徹底的に地元を大事にすることで完成したのが広重美術館です。

非常にアクセスの悪いこの美術館をCNNが取り上げ、世界中に放映されました。もう一つは石の美術館(ほとんど無報酬で、御歳70歳の二人の石の職人さんと五年をかけて竣工)。この石の美術館は、イタリアの「石の建築賞」を2001年に受賞。こうした予想外なことが重なり、隈氏は海外からコンペやコミッションなど多くの依頼を受けるように。

名画にこの過激とも思えるコピーはありか 

美術展でゴヤの「二人のマハ」が展示されたときの、着衣のマハの絵に、きわめつきのこのコピー「私をこのまま帰す気?」が。マハの目線で訴えたわけ。確かに、寝そべる美女にそう言われては、黙っているわけにはいかなくなる。要件をしっかりアピールし、ちょっとセクシーで、クスッと笑いも起きる。これぞプロのコピーというものだろう。

※参考文献:『13歳からのアート思考』(末永幸歩著/ ダイヤモンド社刊)

『隈研吾という身体』(大津若果著/ NTT出版刊)

『日本語の技法 読む・書く・話す・聞く―4つの力』(斎藤孝著/東洋経済新報社刊)

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