抗菌力など、人を癒す「木の7つの力」
人類(とくに日本人)は木材を利用してきた。日用品や住宅資材など生活の中でありとあらゆるものに木材を利用し、「森と木の文化」を育んできた。なかでも日本には豊かな森林に恵まれ、最も身近なものとして木材があった。そして、豊富な樹種に恵まれたことから木の特性を理解して上手に使い分け、無駄なく利用し、何度も再利用してきた。
調湿性・呼吸している木(抗菌性に優れる)
住環境の快適さを左右する要素は温度、風速、湿度の3つといわれる。住宅の内装材に木材を用いた場合とビニールクロスを用いた場合とを比較すると、後者の住宅では1日周期で大きな湿度変化を繰り返す。対して木材の住宅では湿度が50%前後で一定する。これは木材が室内の湿度調節(高ければ湿気を吸い、低ければ吐き出す)を行っているから。
湿度は人間の衛生面とも深い関係がある。病因となる細菌類、カビ類、ダニ類といった微生物は、彼らに都合のよい湿度のときにほこりなどを栄養源として繁殖していく。調査によると、空気中のほこり1グラム当たりに一般の細菌数が6万4千個、大腸菌が4800個、黄色ブドウ球菌が2700個、セレウス菌が2800個、緑膿菌が210個も発見されたという。
これら浮遊菌は、湿度が高いときや湿度が低い状態では長い間生き続けることができるが、湿度が50%前後では短時間で大半が死滅してしまう。同じようにカビ類は、湿度が80%以上にならなければ増殖を防ぐことが可能となり、ダニ類は湿度が70%以下になるとほとんどいなくなる。壁などの内装に木材を使えば、健康的な生活が保証されるようだ。
断熱性・熱が伝わりにくい木
人間の皮膚の表面温度は、環境によって敏感に反応する。コンクリート、塩化ビニールタイル、木材の3種類の材料の床に立った際の足の甲側の皮膚温の変化を測定すると、皮膚温の低下はコンクリートが最も大きく、木材が最も小さくなる。長時間立って作業する台所などでは、足の冷えを防ぐため木材の床が最適といえる。
吸音性・人間の耳に優しい木
室内で発生する音は、住宅の内装材で吸収することができる。木材や畳は音を適度に吸収してくれるが、コンクリートでできた部屋では、音が吸収されずに、いつまでも室内に残ってしまう。このように室内の吸音力が小さいと、反射音が大きく、音が響きすぎて耳障りに感じてしまう。反対に吸音力が大きすぎても音が聞きづらく不快感を与えてしまう。
緩衛性・衝撃を和らげる木
ただ歩くだけでも、足の裏は膝、腰などに衝撃を受けており、その程度は床の材料によってかなり違ってくる。割れやすいガラスの玉に砂を詰めて落下させ、どのくらいの高さから落としたときにガラス玉が割れるかを調べた実験がある。木材の上に落とした場合は35~40㎝だったが、プラスチックの場合は20㎝、大理石では15㎝で割れてしまった。
視覚特性・目に優しい木
光の感じ方には、色相、明度、彩度といった要素が関係している。木材の色は種類によってそれぞれだが、一般に黄赤系の暖色と呼ばれる色が多く、暖かいイメージがある。明度は物の重量感が影響するが、黄色っぽい木材は一般に明度が高く軽快ですっきりしたイメージ。赤っぽい木材は明度の低いものが多いことから重厚で深みのあるイメージになる。
触感性・歩きやすい木の床
摩擦の度合いを表す数字には、静摩擦係数(止まっている物体が動き出すとき)と、動摩擦係数(滑っているとき)がある。これらが大きすぎると疲労が増え、少なすぎると滑りやすくなり、両係数の差が小さいほど歩きやすく感じる。ヒノキやカエデの床では、摩擦係数が適度に大きく(両係数ともほぼ同じ)が、塩化ビニールタイルの床では差が大きい。
芳香性・快適さを感じる香しい木
木材の成分を抽出したものが精油。一つの木には50以上もの種類の成分が含まれる。ヒノキやヒバ、トドマツの精油は、アンモニアでは90%以上、亜硫酸ガスでは100%の脱臭率を示す。脱臭に加え、樹木成分には、殺ダニ効果にあり、屋久杉の精油は3日後までに90%以上を、桜の成分のクマリンは1日で全滅させる効果がある。
※参考文献:『恵みの森 癒しの木』(矢部三雄著/講談社刊)
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