名著『自助論』に登場する興味深い話
「人生は自分の手でしか開けない!」と題した「自助論」の序文より
「天は自ら助くる者を助く」。この格言は、幾多の試練を経て現代にまで語り継がれてきた。その短い章句には、人間の数限りない経験から導き出された一つの真理がはっきりと示されている。自助の精神は、人間が真の成長を遂げるための礎である。自助の精神が多くの人々の生活に根づくなら、それは活力に溢れた強い国家を築く原動力となるだろう。
ベートーベンの座右の銘「自らの力で自らを助けたまえ」
ある時、ピアノ奏者のモシュレスが、ベートーベンにオペラ「フィデリオ」のピアノ用楽譜を手渡したが、その最後のぺージのかたすみには「神の助けによって、つつがなく演奏が終わるように」と記されていた。それを見たベートーベンは、すぐにペンを取ると、その下にこう書き足した。「神に頼るとは何たることだ。自らの力で自らを助けたまえ」と。
志が高ければ、いずれ収まるところに収まる
ある日のこと、大工の彼は知事が腰かける椅子の修理を命じられ、カンナをかけていた。だが、その仕事ぶりがバカ丁寧過ぎるため、傍らで見ていた人が理由を尋ねた。すると彼はこう答えた。「実をいうと、私がこの椅子に腰かける日のために、少しでも座り心地をよくしておこうと思ったので」と。しかも不思議なことに彼はその後実際に知事となった。
「ひょうたんザル」の教訓
アルジリアのカビール地方の農夫は、猿の手が丁度入る位の穴が開いた瓢箪を木に確りと括り付け、中に米粒を入れておく。夜になると、猿が来て瓢箪の穴に手を突っ込み、米粒を鷲掴みにする。そして握った手をそのまま引き抜こうとするが、きつくて抜けない。手を緩めればいいのに、そこまで知恵が回らず、夜が明けると農夫に生け捕りにされる。
ニュートンを襲った不幸
彼の飼い犬ダイヤモンドが、机の上に立ててあった蝋燭を何かのはずみで倒し、貴重な書類が一瞬のうちに灰になってしまった。長年の研究の成果が跡形もなく失われてしまったショックで、彼はその後しばらくの間健康を害し、理解力もかなり減退したという。しかし『年代記』を15回書き直し、『自叙伝』を9度改めた精神力で立ち直りも早かった。
手際の良い仕事のたとえと、多くの仕事を処理する心得
「手際のよさとは、箱に物を詰める仕事に似ている。荷造り上手は、下手な人間の2倍近くも多くの荷物を入れられる」
この指摘をしたという聖職者は、同時に「多くの仕事を処理するいちばんの近道は、1度に1つしか仕事をしないことだ」とも言っている。
10日仕事で金貨50枚は高い?
ある時、ベネチアの貴族がミケランジェロに胸像を依頼した。彼は10日で像を作り上げ、金貨50枚を請求した。貴族は「たかだか10日で仕上げた作品にしては法外な代金だ」と抗議した。だが、ミケランジェロはこう答えた。「胸像を10日で作り上げられるようになるまでに、私が30年間の修業を積んできたということを、あなたは忘れている」と。
モンタギュー夫人の有名な言葉
「礼儀作法には金がかからない。しかも礼をつくすだけで何でも手に入る」
立派なマナーは生活にうるおいを添える。立派なマナーとは立派な行動の別名であり、それは礼儀正しさと親切心から成り立っている。人と人とが有意義で愉快な交際を続けるには、親切心が重要な役割を果たす。
※参考文献:『自助論』(サミュエル・スマイルズ著/三笠書房刊、初版は1849年英国)
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