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2024年8月

2024年8月30日 (金)

「ジェラート」の歴史を年代順に辿ると

最初に登場するのは聖書

ジェラートの起源は諸説いろいろあるようですが、<日本ジェラート協会>によると、ジェラートの歴史として最も古い記録は旧約聖書だそうで、中にでてくる「乳と蜜」が該当するらしい。同協会によると、「長老たちは夏に氷雪で冷やしたミルクシャーベット風の食べ物を愛飲していたと考えられます」とのこと。

ジェラートを最初に求めたのはシーザー

ヨーロッパ一帯からアラブ・エジプトを平定し、クレオパトラとのロマンスでも有名なローマの英雄ジュリアス・シーザー(BC10044年)。彼は、若者をアペニン山脈に走らせ、氷や雪を運ばせて乳や蜜、ワインなどを混ぜて飲んだと伝えられています。史実によれば、これが純粋に嗜好食品としてジェラートを求めた最初といわれているとか。

暴君で名高いローマの皇帝ネロ(DC3768年)は、アルプスから奴隷に万年雪を運ばせて、バラやスミレの花水、果汁・ハチミツ・樹液などをブレンドしてつくった「ドルチェ・ビータ」を愛飲していたといわれています。この「ジェラート風」はローマ市民の間にも広がり、裕福な家庭では自宅に氷の貯蔵庫を設け、宴会などで楽しんだと伝えられている。

古代ヨーロッパ文明の中心は地中海

シシリー島は東西文明の十字路ということもあり栄華を極めた。9世紀前半から2世紀半に亘りアラブ王サセランに支配され、イスラム文化が定着。アラブの「シャルバート」も伝えられ、その後「ソルベット」(シャーベットのイタリア語)へと変わっていく。シシリー島の様々なソルベットの中には、果実をふんだんに使った「カッサータ」があった。

アイスクリームが中国からイタリアへ伝わったという説も

それを持ち帰ったのがマルコ・ポーロ(12541324年)。彼の「東方見聞録」のなかには北京で乳を凍らせたアイスミルクを味わったという記述があり、その製法を伝えた。これがヴェネッィアで評判となり、氷菓の製法は北イタリア全土に広がったとも。その一方で、アラブから伝わったシャルバートがジェラートの発展に寄与したとの見方も。

メディチ家が果たした役割

1533年、ルネッサンスにも多大な影響を与えたフィレンツェの大富豪メディチ家から、カトリーヌ・ド・メディチがフランス王アンリ2世に嫁いだ。彼女は菓子やアイスクリーム職人を始め、多くの料理人を伴ってお国入りし、婚礼ではイタリアの豪勢な料理が提供された。なかでも各種フルーツをあしらったシャーベットは、フランス貴族を驚嘆させた。

ジェラートが現在の形になったのは16世紀になってからのこと。フィレンツェ出身の芸術家・建築家であるベルナルド・ブオンタレンティがジェラートを正式に開発し、それがフィレンツェの大富豪メディチ家によって秘匿(製法は国家の秘法)されてきたという。息女の婚姻によりフランス王室に伝えら、その後、ヨーロッパを中心に急速に広まった。

映画『ローマの休日』で欧州から全世界に

映画の中で、オードリー・ヘプバーン演じるアン王女はスペイン広場でジェラートを頬張る。このシーンは観客を魅了し、人々は、これまで以上にジェラートに憧れるようになったという。母国イタリア以上にインパクトがあったのがアメリカ。その衝撃がいかに大きかったかは、米国での映画公開日827日が世界で「ジェラートの日」になったこと。

※参考文献:「日本ジェラート協会」「竹田牧場」などの関連Webサイト等

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2024年8月 9日 (金)

署名作家たちは限りなく猫を愛していた

夏目漱石の「猫の死亡通知」

『作家と猫』(平凡社刊)に掲載された葉書の「死亡通知」をそのまま転載。

「辱知猫儀久々病気の処、療養不相叶、昨夜いつの間にかうらの物置のへっつい(竈)の上にて逝去致候。埋葬の儀は車屋をたのみ箱詰めにて裏の庭先にて執行仕候。但主人『三四郎』執筆中につき、御会葬には及び不申候。以上 九月十四日」

前記出典の(編集部注)によると、掲載された「猫の死亡通知」は、漱石の門下生で、ドイツ文学の小宮豊隆氏(著書『夏目漱石』で芸術院賞を受賞)に宛て1908年に送られた葉書の文面による。文中に登場する「猫」は小説『吾輩は猫である』のモデルとなった猫とされ、小宮豊隆氏は、漱石の小説『三四郎』 の主人公のモデルであるとも言われている。

向田邦子さんの愛猫紹介

マハシャイ・マミオ殿

偏食・好色・内弁慶・小心・テレ屋・甘ったれ・新しいもの好き・体裁屋・嘘つき・凝り性・怠け者・女房自慢・癇癪持ち・自信過剰・健忘症・医者嫌い・風呂嫌い・尊大・気まぐれ・オッチョコチョイ……。

きりがないので止めますが、貴男は誠に男の中の男であります。

私はそこに惚れているのです。

内田百閒の「迷い猫広告」

『作家と猫』(平凡社刊)に掲載された葉書の「死亡通知」をそのまま転載。

「三たび」迷い猫について皆様にお願ひ申します 

家の猫がどこかに迷ってまだ帰ってきませんが、その猫はシャム猫でも、ペルシャ猫でも、アンゴラ猫でもなく、極く普通のそこいらへんにどこにでもいる平凡な駄猫です。

しかし戻って来なければ困るのでありまして、往来で自転車に轢かれたり、よその橋の下で死んでいたり、猫捕りにつれていかれたり、そう云うこともないとは申されませんが、すでにいちいち考えて見て、或いは調べられる限りは調べて、そんな事はまずないと思うのです。

つまり、どこかのお宅で、迷い猫として飼われているか、又は、あまり外へ出た事がない若猫なので、家に帰る道がわからなくなって、迷っているかと思われるのです。

どうか似たような猫をお見かけになった方はご一報ください。お願い申します。

大変失礼なことを申すようですが、猫が無事に戻りましたら、心ばかりの御礼として三千円を呈上いたしたく存じます。

その猫の目じるし

1雄猫、2背は薄赤の虎ブチで白い毛が多い、3腹部は純白、4大ぶり、一貫目以上もあったが痩せているかもしれない、5顔や目つきがやさしい、6眼は青くない、7ひげが長い、8生後一年半余り、9ノラと呼べば返事をする。電話番号

(編集部注)溺愛していた飼い猫「ノラ」が19573月に失踪し、悲嘆に暮れていた百閒は『朝日新聞』に迷い猫の広告を出す。その後は約2週間ごとに五種類のチラシを印刷、百閒の住む麹町界隈で新聞の折り込み広告として配られた。広告で百閒はノラの目撃情報を募るとともに、「その猫の目じるし」として愛猫の特徴を列記している。

※参考文献:『作家と猫』(平凡社刊) 参考までに「章立て」を記すと

Ⅰ 猫、この不可思議な生き物 「猫の定義」ほか9名の作家が登場

Ⅱ 猫ほど見惚れるものはない 向田氏「マハシャイ・マミオ殿」含め10名の作家が登場

Ⅲ いっしょに暮らす日々 12名の作家が登場

Ⅳ 猫への反省文 5名の作家が登場

Ⅴ 猫がいない 内田百閒「迷い猫の広告、漱石「猫の死亡通知」含め8名の作家が登場

Ⅵ 猫的生き方のススメ 5名の作家が登場

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2024年8月 7日 (水)

橋物語「自殺防止」「執筆法」「告白」

その昔のイギリスの話です。ブラックフライヤーズ橋という自殺の名所といわれた、文字通り黒い橋がありました。何とか自殺を減らしたいと考えた市の行政官は、橋の色を黒から明るい緑色に塗り替えました。すると、色を変えただけなのに、自殺者が3分の1に減ったのです。緑色はアセチルコリンを分泌させ、ストレス解消という効果があるとか。

青色灯の自殺防止、防犯効果と麻薬中毒の関係

青色防犯灯も犯罪の予防効果があるといわれている。イギリスの都市グラスゴーで景観のために街灯を青色に換えたら犯罪が減った(青色だと静脈が見づらく麻薬中毒者が去った?)ことが発端となり、今や日本各地の自治体や自殺の多い駅のホームにも採用されている。他の場所と雰囲気が違うことを警戒して犯罪や自殺が減ると考えられている。

「ヘミングウェイの橋」と呼ばれる執筆法

彼は物語の展開がわかっているときだけ、その日の筆を擱くようにしていたのです。アイデアとエネルギーをすべて出し尽くしてその日を追えるのではなく、次の話の分岐点が鮮明になったところで終わりにする。そうすることで、次の日にまた取りかかるときは、話が見えているのでスタートが簡単だからなのだと。

吊り橋効果

アメリカで行われた心理学の実験では、危険な場所にいた男性ほうが、同一女性に倍くらいの魅力を感じた。ゆらゆら揺れる不安定な橋の上では、手すりを強く握りしめなければならないため、緊張の中で男性の心臓が早く鼓動し、息を切らし、汗をかいていたのでしょう。状況による生理的な違いが感性に働きかけた可能性が指摘されている。

実験は、ブリティシュ・コロンビア州の公園で行われた。魅力的な女性調査員が男性たちに近寄り、「授業の一環として、風景の美しさに関する調査をしているので、質問に答えてください」と言う。研究者たちは、質問に答えた男性のうち、その後何人がアシスタントの女性に電話をかけデートに誘ったか、声をかけられた場所別にその人数を記録した。

すると驚いたことに、安全な場所にいた男性よりも、深い渓谷にかかっている、渡るのに勇気のいる吊り橋の上にいた男性のほうが、女性に魅力を感じる確率がはるかに高かった。橋の上で話しかけられた男性のうち、65%が彼女に電話し、デートに誘った。ベンチで女性に話しかけられた男性のうち、電話をしてデートに誘ったのは36%だった。

吊り橋は高所だから緊張する。高所恐怖症でなくても多少はドキドキする。そうしたドキドキ時に告白されると、脳はおバカさんなので、そのドキドキしている理由を勘違いしてしまう。「あれ、自分はときめいているのか?」と。つまり、本当は吊り橋が怖くてドキドキしているのに、「告白してきたあの人が魅力的だから…」と早とちりするらしい。

※参考文献:『感性がビジネスを支配する』(小暮桂子&青木かおり著/フォーストプレス刊)

『仕掛学』(松村真宏著/東洋経済新報社刊)

『時間に追われない「知的生産術」』(ティアゴ・フォーテ著/東洋経済新報社刊)

『一瞬の表情で人を見抜く法』(佐藤綾子著/ PHP研究所刊)

『単純な脳、複雑な「私」』(池谷祐二著/朝日出版社刊)

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