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2024年9月

2024年9月24日 (火)

孤児院の2人の聖女と乳幼児の死の原因

カルカッタ(現在のコルカタ)の聖マリア学院で、地理と歴史の教師から1944年には校長に任命されていたマザー・テレサは、1946年の9月、年に一度の黙想を行うため、ダージリンに向かう汽車に乗っていました。その際に、本人の言葉によると「すべてを捨て、もっとも貧しい人の間で働くように」という啓示を受けたといいます。

マザー・テレサが汽車の中で啓示を受けた同じ年の年末、神奈川県大磯町に「エリザベス・サンダーズ・ホーム」を開設した沢田美喜さん(旧姓・岩崎:旧三菱財閥令嬢)は、東海道線下りの夜行に乗車(特攻隊の生き残りの息子に会うため)していました。終戦翌年でもあり、本数も限られ、車中はぎゅうぎゅう詰めで通路まで人が溢れていたといいます。

列車が岐阜の関ヶ原にさしかかったとき、列車が大きく揺れたせいだったのでしょう、網棚から沢田さんの手元に細長い形をした風呂敷包が落ちてきました。びっくりはしたものの沢田さんはそれを網棚に戻します。するとその直後、二人の警官が列車に踏み込んできて、「これはだれのだ?」と。そして「おまえのだな、あけてみろ」と指示されます。

外交官夫人となり、何か国も赴任経験のある沢田さんは、ひるむことなく風呂敷を解いていきます。ただ、なんとなくおかしな臭いが漂ってきました。これはいったい……なんなのだろう? 風呂敷の中には、新聞紙で幾重にも包まれた「もの」が入っていました。細い紐が十字に掛けられています。それをほどくと、中から出てきたのは赤ん坊の死体でした。

骨と皮だけになった赤ん坊の肌は、濃い茶色に見えました。これは、米兵と日本人女性の間に生まれた子だわ。かわいそうに…。なんてかわいそうなことを…。生ある者として生まれてきたのに、まるでごみのように捨てられてしまうなんて。沢田さんの心には、悲しみと悔しさと怒りがうずまきました。この体験が混血児の孤児院の開設に繋がります。

孤児院で明らかになった接触の大切さ

ヨーロッパで第二次世界大戦のすぐ後に起こった乳幼児の生存についての劇的な実例がある。孤児院での赤ちゃんは十分食事が与えられ、技術的にもよく看護されていたにもかかわらず、死亡率が極めて高かった(職員が殆んどいなかったため、赤ちゃんは手段としての接触はたくさん受けたが、感情表現的あるいは看護としての接触は殆んどなかった)。

その対策として、赤ちゃんを抱き、なだめて、食事を与えるために、未亡人か子どもがいない高齢の女性たちを雇い入れた。すると、乳幼児の死亡率はほとんどゼロにまで落ちた。接触して、抱いて、なだめ、看護することが、本当に乳幼児の命を救ったのである。戦争ですべての家族を失った高齢女性の多くは、うまく赤ちゃんを生き延びさせ、成長させた。

乳幼児期に、他者から受ける接触が、その後の人生で受ける接触よりも多いことは驚くべきことではない。母親と乳幼児との間における接触頻度や間隔はともに、12か月から2歳の間がピークになる。この期間を過ぎると、接触は一貫して減少する。実際には、最初の6カ月に男児は女児より多くの接触を受けるが、その後は女児がより多くの接触を受ける。

参考資料&文献:Wikipedia「マザー・テレサ」項

『名もなき花たちと』(小手鞠るい著/原書房刊)

『非言語行動の心理学』(VP・リッチモンド著/北大路書房刊)

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2024年9月17日 (火)

日々の生きる姿勢が最大の老化防止策⁉

65歳から90歳までの入居者の自己決定権の認識を操作する実験

施設の世話係が、2つの階の入居者を別々に集め、ある階では入居者一人ひとりに鉢植えを配り、鉢植えの世話は看護師がしてくれること、また自由時間(映画鑑賞、入居者との交流、読書、TV&ラジオ視聴等)のなどを含め、入居者にはある程度の自由は許されているが、彼らの健康は有能な職員が責任を持って管理する、というメッセージを伝えた。

これに対し、別の階の入居者には、一人ひとり好きな鉢植えを選ばせ、鉢植えの世話は自分でするように伝え、自由時間の使い方は別の階と同じ内容を伝え、この新しい施設を楽しい場所にできるかどうかは、入居者次第だということを強調し、「皆さんの人生ですよ。どんな人生にするかは、みなさん次第です」とのメッセージを伝えた。

選択権には多少違いはあったが、施設職員は2つの階の入居者をまったく同じように扱い、同様の世話をした。そして三週間後にどのような違いがあるかを調べたところ、選択の自由度が大きい入居者(後者)は、そうでない入居者に比べ、満足度が高く、生き生きしていて、身体的な健康状態は90%改善された。一方の階の人々には70%も悪化が見られた。

松下幸之助氏70歳時想起の「座右の銘」

パナソニック(旧・松下電器)を創業した松下幸之助氏が、晩年、座右の銘にしていた言葉があります。それは、「青春とは心の若さである/信念と希望にあふれ、勇気にみちて/日に新たな活動を続けるかぎり/青春は永遠にその人のものである」で、昭和四十年、幸之助翁が七十歳の時にサムエル・ウルマンの「青春」をベースにつくり上げたものでした。

サムエル・ウルマン「青春」(作山宗久訳)

青春とは人生のある期間ではなく、心の持ちかたを言う。

薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな肢体 ではなく、

たくましい意志、ゆたかな想像力、炎える情熱をさす。

青春とは人生の深い泉の清新さをいう。

 

青春とは怯懦(きょうだ)を退ける勇気、安易を振り捨てる冒険心を意味する。

ときには、二〇歳の青年よりも六〇歳の人に青春がある。

年を重ねただけで人は老いない。理想を失うとき初めて老いる。

 

歳月は皮膚にしわを増すが、熱情を失えば心はしぼむ。

苦悩・恐怖・失望により気力は地に這い、精神は芥になる。

六〇歳であろうと一六歳であろうと人の胸には、

驚異に魅かれる心、おさな児のような未知への探求心、人生への興味の歓喜がある。

君にも吾にも見えざる駅逓が心にある。

 

人から神から美・希望・喜悦・勇気・力の霊感を受ける限り君は若い。

霊感が絶え、精神が皮肉の雪におおわれ、悲歎の氷にとざされるとき、

二〇歳であろうと人は老いる。

頭(こうべ)を高く上げ希望の波をとらえる限り、

八〇歳であろうと人は青春にして已む。

 

※参考文献:『選択の科学』(シーナ・アイエンガー著/文藝春秋社刊)

『「青春」という名の詩 幻の詩人 サムエル・ウルマン』(宇野 収&作山宗久共著/産能出版部刊)

※参考Webサイト:https://konosuke-matsushita.com/column/cat64/leader48.php

https://mobility-career.jp/2022/10/10/seishun/

https://konan-es.com/past/8.hobby/hobby.htm

http://fukushima-net.com/sites/meigen/720

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2024年9月12日 (木)

「路上芸術」といわれるマンホール雑学

どうしてマンホールの蓋は丸い?

なぜマンホールの蓋は丸型(円形)なのかというと、きちんとした理由がそこにはある。1937(昭和12)年7月号の『電気学会雑誌』には、『蓋には丸型と角型とがあるが角型は破損しやすく、取り扱いにくく、かつマンホール内に落ち込む危険があるから普通丸型を用いる』とあり、角型は角度によってはホール内に蓋が落ち込むので採用されなかった。

マンホールは全国に約1600万個、その蓋は約1万種類

202465日『朝日新聞』朝刊「マンホールが開く、下水道の世界」によると、下水道を保守管理する出入り口であるマンホールは、全国に約1600万基あります。そのうち老朽化した蓋は350万基にのぼると言われ、下水道の管路も全体の2割にあたる10万キロは敷設から30年経過し、更新が追いついていないとのこと。

マンホールの蓋は地域にゆかりのある花や鳥、風景、建物、地元のゆるキャラなど、デザインは約1万種類あると言われている。職人が手作業で樹脂の着色料を注入した色つきの蓋も。その精巧な作りは「路上の芸術」と呼ばれ、多くのファンがいる。その歴史は古く、1977年に那覇市で地元の魚「ガーラ」(アジ)のモチーフが登場したと。

世界最古のマンホールの蓋は?

世界的にみると、現存する蓋としては、ポンペイ遺跡(イタリア)にある大理石製のものが最古といわれている。ただし、下水道はメソポタミア文明やインダス文明の頃から堀をつくる形で引かれていたので、さらに古い時代から下水道の蓋が使われていたと考えられる。なお『ローマの休日』に登場の「真実の口」は、元々はマンホールの蓋といわれる。

マンホールサミット

姫路城や富士山、漫画「銀河鉄道999」等々、全国各地のマンホールの蓋を集め、魅力を発信する「マンホールサミット」は、2014年から始まり、昨年、愛知県岡崎市で開かれた11回目のサミットには2日間で13千人が集まった。地域にゆかりのある花や鳥、風景、建物、地元のゆるキャラなど、デザインは約1万種類あると言われている。

個性的マンホールのふた、主な「アニメキャラ」

『鉄腕アトム』(千代田区)/『セーラームーン』(港区)/『シン・ゴジラ』(新宿区)/『ウルトラマン』(世田谷区)/3月のライオン』(渋谷区)/『あしたのジョー』『銀河鉄道999』『仮面ライダー』(練馬区)/『リカちゃん』『こち亀』『うる星やつら』(葛飾区)/『シティーハンター』(武蔵野市)/『ブラック・ジャック』(東久留米市)等。

日本のマンホールの種類

ご当地マンホール:城/文化財/富士山/街並/時計台/宇宙・星座/乗り物/景勝地/花火・記念/海浜/ダム・ヨット///消防/スポーツ/ゆるキャラ/キャラクター・レジャー/折り紙・民芸品/特産品・農業/果物/動物/虫・架空の生き物/恐竜/土器・昔話/伝統・文化他

花鳥風月なマンホール:魚5種&海の生き物/7/15/樹木2/その他

※参考文献:『路上の芸術』(村瀬直志編/ホビージャパン刊)

202465日『朝日新聞』朝刊「マンホールが開く、下水道の世界」

『マンホール』(石井英俊著/ミネルヴァ書房刊)

Webピックアップ

『厳選 デザインマンホール大図鑑』(カラーマンホール研究会編/グラフィック社刊)

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2024年9月 4日 (水)

有史以来最大の媒体はクチコミ

クチコミに関するグッドマンの法則

・苦情を言ってくるお客様は、26件のうちの一人と分析しています。つまり同じ思いのお客様が他に25人もいることになります。

・苦情の感情を持ったお客様は、そのことを平均して910人に話します。

・その結果、一件の苦情の申し出があったとき、250人前後の方が何らかの苦情を知っていると思った方がよいのです。

ケーキ店選択時、どちらのメッセージに影響されるか(全国の消費者1000人調査)

A 「あの店のケーキ、最高の美味しさなの(口コミ)」87%、

B 「当店のケーキは、最高の美味しさです(広告のイメージ)」13% 

媒体別「情報」の信頼度

(口コミ)は・・・・・(とても信頼できる)10%(信頼できる)60%、(どちらともいえない)28% (信頼できない)2% (まったく信頼できない)0

店頭で見る情報・・・・(とても信頼できる)3%、(信頼できる)42%、(どちらともいえない)48% (信頼できない)6% (まったく信頼できない)1

インターネットの口コミ情報・・・・・(とても信頼できる)2%、(信頼できる)39%、(どちらともいえない)49% (信頼できない)9% (まったく信頼できない)1

店員から聞く情報・・・・・(とても信頼できる)1%、(信頼できる)31%、(どちらともいえない)57% (信頼できない)10% (まったく信頼できない)1

マスコミに取り上げられた情報・・・・・(とても信頼できる)1%、(信頼できる)27%、(どちらともいえない)50% (信頼できない)17% (まったく信頼できない)5

企業の広告・・・・・(とても信頼できる)0%、(信頼できる)14%、(どちらともいえない)64% (信頼できない)10% (まったく信頼できない)2

参考までに「情報」別に5段階評価の上位2ランク(とても信頼できる)と(信頼できる)を合算した数値を「信頼できる」に置き換えると、

友人・知人からの情報(口コミ)70%   店頭で見る情報 45

インターネットの口コミ情報 41%    店員から聞く情報 32

マスコミに取り上げられた情報 28%   企業の広告 14

クチコミはどのように広がるか

マイケル・カファキーは「クチコミは…堂々と、だが静かに広まっていく。その間、広告業者たちは、クチコミと同じくらい劇的な効果をあげる広告をつくろうとがんばるが、結局うまくいかない。市場にはハイテクを駆使した誇大広告があふれている。クチコミとは、そうした広告をふるいにかけるため、我々の脳が備えたローテク技術なのである」。

クチコミが受け手の態度に与える影響

クチコミには、既存の考えを補強する働きだけではなく、意見を変更させたり、新たな意見や態度を創出させたりする働きも含まれる。

アトキン(Atkin,1962)の実験では、利用スーパーを変更した人のうち、理由が広告にあった人は48%であったのに対して、クチコミにあった人は80%に上った。

(文中「クチコミ」と「口コミ」併用は原典尊重のため)

※参考文献『苦情学』(関根眞一著/ 恒文社刊)

『小が大を超えるマーケティングの法則』(岩崎邦彦著/日本経済出版社刊)

『コトラーのマーケティングコンセプト』(フィリップ・コトラー著/東洋経済新報社刊)

『新マーケティング・コミュニケーション戦略論』(亀井明宏&ルデイィ-和子著/日経広告研究所刊)

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