さまざまな「老舗」定義と世界最古企業
老舗という言葉の由来
『語源由来辞典』によると、動詞「仕似(しに)す」に由来し、「似せる」「真似てする」などの意味で、江戸時代に家業を絶やさず継続する意味となり、長年商売をして信頼を得る意味で用いられるようになったと。やがて「しにす」が名詞化され「しにせ」になったようだ。老舗の「老」は長い経験を意味し、「舗」は店舗を意味することからの当て字。
広辞苑には「先祖代々から続いて繁盛している店。またそれによって得た顧客の信用・愛顧」と記されている。一方、東京商工リサーチでは、「創業30年以上事業を行っている企業」と。企業の寿命は平均30年程度といわれているから、その意味では老舗は寿命を過ぎても存続し、かつブランディングとしての資産価値を持つ長寿企業ということができる。
老舗の海外事例「エノキアン協会」
エノキアン協会(英語ではThe Hennokiens。1981年に設立された老舗企業の国際的な団体で、創業以来200年以上の社史、創業者の子孫が現在でも経営に関わっていること、現在でも健全経営を維持していることなどが加入資格。パリに本部があり、イタリアやフランスを中心に欧州8か国と日本で46社が名前を連ねる。
日本企業では虎屋のほか、718年創業の法師、1637年創業の月桂冠、1669年創業の岡谷鋼機、1707年創業の赤福、1645年創業のヤマサ醤油、1690年創業の材惣木材、1716年創業の中川政七商店の8社が加盟。エノキアン協会の総会は、レオナルド・ダ・ヴィンチが生涯の最後を過ごしたフランスのクロ・リュッセ城で城主が中心となりおこなわれる。
東京のれん会
東京には老舗の集まりとして「東京のれん会」がある。同会は、戦後まもない1951年(昭和26年)に設立された団体で、「江戸・東京で3代、100年以上、同業で継続し、現在も盛業」の条件を満たす53店舗からなる。「東京のれん会」の例は、老舗を創業ないし設立から100年以上経っている企業を老舗企業とするとの見解にも一致する。
帝国データバンクの老舗データベース
日本の老舗企業は5万社とも10万社ともいわれる。老舗の定義によってはその数は変わってくるが、帝国データバンクのデータベースによれば、老舗企業は日本に約2万社あり、企業全体のわずか1.6%。そのうち200年以上経っている江戸時代以来の老舗企業は508社、300年以上の老舗企業は435社とだんだん少なくなるが、それでもかなりの数に上る。
日本最古の・世界最古の老舗企業
それは大阪の「金剛組」。創業は大化の改新以前の元号もない時代(578年)で、2011年までに1433年も続いている。江戸時代までは四天王寺のお抱え宮大工として毎年一定の禄を得ていたが、明治以降、四天王寺が寺領を失い、戦後には、金剛組は需要の少なくなった寺社建築ばかりでなく、マンション、オフィスビルなど一般建築も手掛けるようになった。
参考文献(下記)に取り上げられた老舗企業7社
「アンパンを考案したとされる木村屋総本店」、「東北の石巻に本社を置き、衛生管理を徹底する白謙蒲鉾店」、「江戸菓子の代表格ともいえる飴の栄太郎總本舗」、「味付け海苔を開発した山本海苔店」、「フルーツショップの草分け千疋屋総本店」、「ユニークCMで知られるカステラの文明堂」、「洒落た店舗でも楽しめる稲庭うどんの佐藤養助商店」
※参考文献:『時代を超えて愛される秘密 老舗』(鶴岡公幸著/産業能率大学出版部刊)
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