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2024年11月 5日 (火)

外人が見た「日本文化」の長所&異質性

「お詫び」と「お礼」

日本人がお礼を言うとき、「ありがとう」という感情の代わりに「どうもすみません」と言うことがある。後者は厳密には「申し訳ありません」という意味だ。「すみません」が「ありがという」とイコールになる理由は、日本文化の考え方にある。誰かが自分に何かをしてくれた場合、それは相手側の負担になったと考えるのだ。

『甘えの構造』の著者、土居建郎は、在米中に恩師に対して「サンキュー」とは言えなかった。日本人の心理としては、「サンキュー」は相手と対等を意味するからだ。土居は、目上の人に対しては「申し訳ありません」と言う方が適切と感じた。英語圏の「サンキューカード」状にも、多くの日本人が「恐れ入ります(身に過ぎたことで恐縮です)」と書く。 

日本のギフト文化

日本でギフトを贈るのは、驚かせたり楽しませたりするより、日頃の感謝や敬意を表す行為であることが多い。ときには、贈る行為が贈るもの自体よりも重要だ。手の込んだ包装紙や風呂敷を使うのも、手間暇かけてギフトを用意したことを伝えるため。日本人が贈り物を目の前で開封せず、長くそのまま飾っておく傾向があるのは、そうした理由があるから。

そういうわけで、日本でのギフトにふさわしいのは、この世にひとつの芸術品ではない。有名ブランドのお酒、高級なキャンディやフルーツの方が、室内装飾品やアクセサリーよりも喜ばれる(家が小さいという日本の事情もあり、長期的な置き場所を必要としない消えものの方が望ましい)。重要なのは中身より双方の関係である。

それが念頭にあることを示すため、贈るときはギフトを両手に持ち、軽くお辞儀をしながら差し出す。おそらく少なくとも一度、大抵二度は拒まれるので、受け取ってもらえるまでに差し出し続ける。反対に受け取る立場になったときは、やはり1.2回は遠慮するのが礼儀だ。その後、お辞儀をしながら、両手で品物を受け取る。

その場で開封することは基本的にないが、開封することになった場合はきれいに包みをはずして、わきに置く。品物と包装に象徴的な意味があるので、日本でのギフトはデパートで買うのが一番簡単。そうすれば赤という色にはどんな意味があったとか、4組の品物は不吉になるかどうか、ひとりで気に病まずに済む。安心して、手土産を持っていける。

名刺交換

名刺を交換する際は、文字を相手の方へ向け、両手で持って渡す。受け取るときも両手を携えて受け取り、礼を述べてきちんと目を通してから、会議のテーブルに表向きに置いておく。渡すときに持つのは上の両側の角。机の向こう側から滑らせて渡したり、米国のカジュアルな場でよく見かけるように親指と人差し指で弾いたりするのもご法度。

仕事を進めるにあたって、名刺交換などは些細なやりとりに思えるかもしれない。紙媒体よりもEメールと電子アドレス帖が主流の時代にはなおさらだ。それでも日本では名刺交換という儀式の意味は大きい。このときの印象がその後の交渉を左右することもある。名刺をめぐる慣習を知っておけば、外国人にとっては貴重な切り札になるかもしれない。

※参考文献:『マナーとエチケットの文化史』(べサニー・パトリック著/上原裕美子訳/原書房刊)

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