教育現場の方言取扱い変化と方言作品例
小学校の学習指導要領では、「発音のなまりや癖を直し、必要に応じて共通語で話す」(1968年)から「方言・共通語は身につけるべき大切な能力」(2008年)のように、方言の位置づけが変わった。国語教育で方言が重視されるようになって、小学校の国語の教科書で方言の章が設けられたことにより、さまざまな副教材が刊行・発売されている。
NHK教育テレビ(現Eテレ)では、2003年から幼児向けの番組「にほんごであそぼ」を放送。この番組は毎週5日間、各10分の放送で、有名な文学作品の一節や各地の代表的な方言を寸劇風に紹介し、また、「雨ニモマケズ」「春はあけぼの」「私と小鳥と鈴と」などの各地方言訳を放送しており、「日本グッドデザイン賞大賞」(2004年)など8賞を受賞。
宮沢賢治「雨ニモマケズ」の大阪府大阪市方言訳
雨にも負けへん 風にも負けへん 雪も暑いのにも負けへん 丈夫なからだにうんでもうて 慾ばらんと あんまり怒らんと いつもおとなしゅう笑うてる 一日玄米四合と 味噌と ちょっとの野菜もろうて なんでもかんでも 自分のこと おいといて ようみて わかって 忘れへん 原っぱの松の木蔭で こまい萱葺の小屋んなかで 東に病気の子どもがおったら 行って看病したろ 西にしんどそうにしとるおかんがおったら 行ってその稲の束を背負って 南に逝ってしまいそうなもんがおったら 行ってこわがらんでもええと言うて 北にもめてるもんおったら しょうもないから やめとかんかと言うてしまう 雨の降らんときは 泣きぬれて 寒い夏は おろおろして みんなにどうしようもないもんと言われ 褒められんと 相手にされんと そんなもんに自分はなりたい
清少納言『枕草子』~春はあけぼの=の福島県会津地方方言訳
「春は朝っぱらがええ だんだんすろっぽくなり
山のはじっぽが あがりぐなってくっと
むらさきがかった雲が よごさ ぬたばったみでぐなる」
金子みすず「私と小鳥と鈴と」の石川県金沢市方言訳
私が 両手ひろげても、お空は ちょっとも 飛べんげんけんど、飛べる小鳥は 私みたいに、ぢぺだ 速くは 走れんげんよ。
私が からだ ゆらいても、きれいな音は 出んげんけど、あの鳴るすずは 私みたいに たんと 唄知らんげんよ。
鈴と 小鳥と ほれから私 みんなちがうし みんないいげん。
『大阪弁で読む《変身》』(西田岳峰訳/幻冬舎)は大阪弁で訳した世界で唯一の本
「グレゴール・ザムザはある朝けったいな夢から目が覚めてみたら、ベッドん中で馬鹿でかい虫に変わっている自分に気がついた」(中略)
「おれ、どないしてん?」(中略)
〈グレゴールはみなのおるほうをのぞきこんだ。……「ほな」と口を開いたグレゴールは自覚しとった。冷静さを保っとんのは自分だけやと〉
※この稿:2025年2月13日『朝日新聞・夕刊』より
方言カルタ例
▷あっけづばご たがいで、ちゃっちゃとうだれ(酒田)
共通語訳:ごみ箱持ってさっさと捨てなさい
▷あがすけな、やろこあんつぁが、もうとしょり(山形)
共通語訳:生意気だった若者がもう取り寄りになった
▷うっしょまえ、けっちゃに着てで、いずいごだ(仙台)
共通語訳:後ろ前、逆さに着ていてきつい感じだよ=
▷あっぱめは、ねてあっても、かえーしきゃの(八丈島)
共通語訳:=赤ん坊は寝ていてもかわいいね
参考文献&資料(各文末※表記は除く):『滅びゆく日本の方言』(佐藤亮一著/新日本出版社)及び、NHKEテレ幼児向け番組「にほんごであそぼ」関連サイト
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