交通信号と鉄道信号この似て非なるもの
鉄道では色、形、音、人間の動作といった一定の目印を用いて意思を伝える手段を鉄道信号という。鉄道信号に含まれるものには信号、合図、標識の3種類がある。
信号とは、列車や車両に対し、一定の区間内を運転するときの条件を色、形、音などで示すことを指す。信号の指示内容を表すことを一般的には「表示」と記すが、鉄道の世界では「現示」を用いる。簡単にいうと「現示」とは、信号の指示内容を表すことである。「現示」するものは信号しか存在しないので、合図や標識と区別しやすいのだ。
色というのは信号機の電球の色を指す。青、黄、赤の3色を基本とし、制限速度を現示する場合は2色を組み合わせて行うケースも。ところで、電球の色のうち、青と黄は鉄道の世界では呼び方が異なり、青は緑色、黄は橙黄色(とうこうしょく)と呼ぶ。これは呼称の問題ではなく、実際にそのような色をしているからで、自動車交通の信号機も実は同じ色。
道路に設置されている信号機が表示する信号の色や順序は道路交通法施行令第二条に規定されている。進んでよいを意味する青、速やかに停車できない場合を除いて停止することを意味する黄、停止することを意味する赤。いっぽう、鉄道の信号の色と順序は停止信号を意味する赤、注意信号の橙黄色(道路の信号対応色は黄)、進行信号の緑(同青)である。
そこで、鉄道の信号では順次制限速度を上げ、赤の次に橙黄、橙黄の次に緑となるように配置したのだ。道路上に設けられた歩行者用の信号機のように、鉄道も停止信号と進行信号としか現示しない信号も存在する。この場合、現示する順序は赤→緑→赤と決まってしまう。鉄道と道路交通との間では赤から始まるか青から始まるかの違いだけ。
交通信号「止まれ」はなぜどこの国でも赤なのか
広くて、さまざまな世界にあって、交通信号の〝青(緑)〟は「進め」、〝橙〟は「注意」、〝赤〟は「止まれ」であることは世界。共通である。習慣の違いを考えれば、〝青〟が「止まれ」で、〝赤〟が「進め」というような国があってもよさそうなものであるが、世界中のどこの国でも、やはり、交通信号〝赤〟は「止まれ」で、〝青〟が「進め」なのである。
交通信号の本来の役目は、交差点などにおける交通の流れを整理し、円滑に進めることである。交通の安全性のことを考えれば、いうまでもなく「止まれ」のメッセージの方が重要。
また、交通信号は屋外に設置されるものであるから、雨の日でも雪の日でも埃が舞う強風の日でも、メッセージを確実にドライバーや歩行者に伝えなければならない。
「止まれ」のメッセージがより重要だとすれば、それには、いかなる悪条件下でもドライバーや歩行者により伝わる色を使うべきである。可視光の中で、雨滴や雪や埃などの〝粒子〟に最も散乱されにくく、ドライバーや歩行者の目に届きやすいのが、波長の長い〝赤〟。また〝赤〟は血の色でもあり、最も「ハッ」とするという精神的効果も皆無ではないだろう。
参考文献:『鉄道ダイヤを支える技術 副題:閉そく・信号・合図・標識』(梅原淳著/秀和システム刊)
『いやでも物理が面白くなる 副題:交通信号「止まれ」はなぜどこの国でも赤なのか』
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