ピカチュウだけが世界共通キャラ名の謎
アニメやカードで子どもたちに人気のある『ポケットモンスター(ポケモン)』の主人公「ピカチュウ」は、稲妻を表す「ピカリ、ピカッ」といい擬態語と、ネズミの鳴き声を模した「チュー」という擬声語がくっついてできた合成語である。高圧の電気をピカッと放って相手を攻撃するネズミの特徴をうまく組み合わせている。
仮に日本語に擬声語や擬態語がなかったら、ピカチュウは何と呼ばれていただろう。「電ネズミ」や「稲妻ネズミ」とでも呼ばれていただろうか。あるいは怪力や剛力という普通名詞から「カイリヤー」「ゴーリキー」というポケモン名が生まれたように、稲妻やネズミという単語をもとにして「イチビー」「ネズミ―」と命名されていただろうか。
ポケモンが世界中で人気を博す中で、多くのポケモンが日本語版の名前から外国語版の名前へと呼び方を変えていったが、ピカチュウだけは世界中とこへ行っても「ピカチュウ」と呼ばれている(英語では語頭にアクセントを置く)。「ピカチュウ」が「ピカッ」「チュー」というオノマトペの合成語であるために、名称を変える必要がなかったのであろう。
キャラクター名では彦根市の「ひこにゃん」も同様である。「ひこ」は彦根の彦であるが、「にゃん」は猫の鳴き声を模倣した。「ニャンニャン」からきている。彦根の猫だから「ヒコニャン」という名前がつけられたわけだが、これが「ひこねこ」ではドラ猫や野良猫のような普通名詞のようで、「ひこにゃん」が持つ愛らしさやリズム感は伝わってこない。
動植物の名前にしても、「郭公(カッコウ)」「ぺんぺん草」「ミンミンゼミ」「ガラガラヘビ」など、オノマトペに由来しているものが数多く存在する。いずれも国語辞典に載っている馴染み深い語である。擬声語や擬態語がなかったら、ぺんぺん草は「なずな」、ガラガラヘビは「クロタルス」といったように、それぞれ正式名称で呼ばれていただろう。
日本語の中でオノマトペが際立って多くみられるのが童謡。『犬のおまわりさん』(佐藤義美作詞)では「ニャンニャンニャン」「ワンワンワン」、『おつかいありさん(関根栄一作詞)では「ごっつんこ」「ちょんちょん」などのオノマトペが出てくる。オノパトペがなかったら、これほどまでに子どもたちに慕われる歌にはならなかったのではないだろうか。
「モフモフ」はいつ頃生まれたか
2007年に出版された小野正弘氏他による『日本語 オノマトペ辞典』には、4500語の擬音語・擬態語が収録されているが、「モフモフ」は収録されていない。一方で、宇野良子氏らがウェブコーパスを調査したところ、2006年から2009年に使用頻度が多かった新動詞の上位900語の中に「モフる」があったとしている。
また、「モフる」は「モフモフ」から作られた新動詞であるとし、「モフモフ」の意味として、「犬・猫の毛や頬ずりするものの感触」、「スコーンやメロンパン等の食感」、「魚やゲームキャラクターなどが緩慢に動く様子」が挙げられている。「肉球の隙間に毛がモフモフしています。」というように使う。
いま主流になっている動物に対するモフモフの使用は、2003~2004年ごろに2ちゃんねるで『「もっふ」と遊ぼう!』といった形で見られ始め、ついに、2010年女子中学ケータイ流行語にエントリーされた。2017年当時、モフモフと検索すると、パンに対するより動物について使われている事例が多い。
参考文献:『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』(窪園晴夫編/岩波書店刊)
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