コールセンター研修

2012年12月 6日 (木)

コールセンター関連書籍から③ 〝アナウンサー風の話し方〟を〝芸名〟でするコールセンターのオペレーター

前2回の『督促OL』からは、なまなましい現実が伝わってきました。督促のようなアウトバウンドは大変ですが、事前の準備は可能です。それに対し受信のインバウンドは誰からどのような内容でかかってくるかわからない不安があります。そこで今回は、沖縄が舞台の小説『インバウンド(※1)』から、受信業務の一端を紹介します。

話し方をアナウンサーみたいにする、2つの理由
「何でバスガイドみたいな話し方をするんですか」の新人の質問に応えて、元琉球放送のアナウンサーだったという先生が答えます。「まず第一に、電話の向こう人が聞きやすいように。第二は、感情が相手に伝わらないようにするためなんです」「いわば、声の仮面です。ただし恐ろしい仮面じゃないですよ。美しく優しい仮面です。」

オペレーターが他人の名前(ビジネスネーム)を名乗る3つの理由
「名前を変える理由のひとつは、沖縄には同じ名前が多いので、苗字だけで区別をしにくい。次に、電話担当者の名前がきちんと伝わらないとお客が安心できないので、名乗ったときに相手にわかりやすい名前を使う。そして最後に、オペレーターはクライアントの代理を演じる仕事で、本当の自分として電話に出るのではないから。」

電話の向こうでお客様が怒っている。電話のこちら側にあなたがいる
「私たちの仕事は、電話を通じてお客さまのお怒りの矢面に立つ仕事のように見えます。ですが本当は違います。お客様と対応する役割を持った誰かの代わりに、まるで、その人であるかのように、その会社の人として、お客様と接する。そういう仕事なんです。だから、むしろあなた自身であってはいけない。そのことを忘れないで。」

●コールセンターのインバウンドのオペレーターさんの役割が、元琉球放送のアナウンサーという教育担当のお言葉によく表現されていると思いました。ことほど左様に、コールセンターのオペレーターさんはストレスのたまりやすい感情労働に従事しています。そんな皆さんに、職場でも手軽にできるストレス発散法を伝授しましょう。

『スタンフォードの自分を変える教室』から感情労働者のストレス発散法(※2)
呼吸のペースを遅くすると(1分間に息を止めずに4回から6回までに抑える。12回までなら心拍数は確実に上昇する(口をすぼめ、ストローから息を吐き出すつもりで練習すればたいして難しくはない。たいていの人には息を吐くのを遅くするほうが簡単なので、ゆっくりと完全に息を吐くことに意識を集中しましょう)そうです。

最もストレスの多い職業人を対象にした心拍変動のトレーニング・プログラム
この練習を定期的に行えば、ストレス耐性の強い意志力の保有量も増えることが研究によってわかっています。警官や証券トレーダーや顧客サービス窓口のオペレーターなど、最もストレスの多い職業の人びとを対象に、自己コントロールの向上やストレスの緩和を目的に実施されているそうです。わずかな時間でできるのがナイスですね。

※1:『インバウンド』(阿川大樹著/小学館)
※2:『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・カクゴニカル著/大和書房)

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

■研修、講演などのご依頼、ご相談は【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。今回は「コールセンター研修」の話題から。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年12月 2日 (日)

コールセンター関連書籍から② 避けて通れないコールセンターのクレームや怒鳴り声 でも、いろいろ対処法が

「いきなり怒鳴られたら…」は、コールセンター研修の定番質問です。これに関し『督促OL』は「怒られたら固まる前に思い切り足をつねる(或いは足の小指をもう一方の足で踏んづける)などして下半身に強烈な刺激を与えると、怒鳴られたショックによる金縛りが解け、そこから体勢を立て直せる」のだと、面白い対処法がありました。

クレームや怒鳴り声には付箋モードで反撃! あるオペレーターさんの知恵
「クレームとかでお客さまに怒鳴られると、とっさに言葉が出てこなくて・・・。だから、そういう時はこの付箋を読むことに集中するようにしているんです」。デスク回り貼られた付箋は「お電話ありがとうございます」「わたくし○○と申しますが、××さまのお宅でいらっしゃいますか?」などシンプルなものばかりとのこと。

クレーム専門スタッフからのアドバイス 謝るときは「具体的に」謝る
「申し訳ございません」を繰り返している電話って、聞いていてくどいんです。
お客様がこちらの態度に不満を持っていたらその気持ちに対して、商品の不具合を言ってきたらそのお手間に対して、お客様が怒っている内容を具体的に(お詫びの言葉の)前につけてから「申し訳ございません」と言うんです。

「カードが店で使えなくて大変だったよ!」→「お店で恥ずかしい思いをさせてしまい、申し訳ございません」
「さっきのオペレーターの態度が気に入らない! クビにしろ!」→「先ほどの者がお客さまに不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」

このように「具体的な言葉」+「謝罪」を繰り返すことで、「相手の気持ちをわかっている」と示すことができるという。
「クレームを言ってくださるお客さまは、謝ってほしいと思っているだけじゃなくて、自分の気持ちをわかってほしいから電話をかけてくるんですよ」

謝罪ばっかりだとクレーム対応が単調になりがちになる(アドバイス続編)
そこで、謝罪の間にもう一工夫加えます。「ありがとうございます」と言う言葉を挟むんです。謝罪は何度も繰り返すと誠意が薄まるので、黄金比は謝罪2に対してお礼1です。「申し訳ございません」が3回続くどいと考えてください。「申し訳ございません」を3回使っていいのは、クレーム対応を締めくくるときだけです。

●実践で培われた知恵はさすがですね。研修講師も脱帽です。とはいえ、クレーム対応はそれぞれの取扱商品、サービス内容によってニュアンスが異なりますので、他者の知恵は参考程度にとどめましょう。大事なことは、督促OLさんが先輩方のアドバイスに謙虚に耳を傾け、失敗を重ねながら武器レベルに仕上げたプロセスです。

『督促OL 修行日記』(榎本まみ著/文藝春秋社)

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

■研修、講演などのご依頼、ご相談は【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。今回は「コールセンター研修」の話題から。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年11月29日 (木)

コールセンター書籍関連から① 年間2000億円を回収するOLの 辛すぎる職場を乗り越える方法

今回は2012年9月に刊行された『督促OL 修行日記』の紹介です。新卒でカード会社の督促部門(コールセンター)に配属された女性が、苦難を乗り越え成長して行く様がリアルに描かれています。「今度電話してきたら殺す――」などの過激な表現があちこちに出てきますが、マスコミ紙誌に取り上げられ注目を集めています。

『文藝春秋(10月号』の「自著を語る」より 督促業務について(著者)
督促とはクレジットカードやローン、光熱費、家賃など、何かしらの支払いの滞っているお客さまに対し「お支払いをお願いします!」と入金のお願いをするお仕事の事です。(中略)そこで私に課せられたのは、社内でも指折りの問題債権と恐れられていた、キャッシング債権の回収。電話するお客さまのほとんどが支払い困難。・・・

『朝日新聞(11月11日朝刊)』の「読書―売れてる本」より (速水健朗氏)
本書に描かれたコールセンターは、まるで現代社会の最前線のようだ。「多重債務者」「クレーマー」「感情労働」……そんな現代版「ああ野麦峠」として本書は読まれているのだろう。(中略)著者は過酷な現場に立ち向かう武器を見つけ、一人前に成長していく。そんなサバイバルの姿勢、過酷な仕事を楽しむ術といった部分も読みどころだ。

●コールセンターには、お客さまからのお電話を受信する「インバウンド」業務と、こちらからお電話を差し上げる「アウトバウンド」業務があります。この本に書かれているのは後者です。配属当初、「ぼさっとしていないで、1時間に最低60本は電話して!」の指示を受けた著者が、苦心して身に付けていった武器を順次紹介します。

「入金の日にちと入金の根拠は絶対にお客さまの口から言ってもらうこと・・・」
入金の約束を守るお客さんは約6割。だから約束を破られたときのために、あらかじめ交渉の材料(約束を破った罪悪感)を用意するのだそうです。心理学の名著『ブラックメール(スーザン・フォワード著)』に、人間がつい無意識に動かされてしまう3つの感情は「恐怖心」「義務感」「罪悪感」とあり、この心理の応用とのこと。

「お金を返して!」と言わずに、お金を回収するテクニック
「人間の脳は疑問を投げかけられると、無意識に回答を考え始める」という性質があるそうです。この性質を利用して、「お客さま、いつでしたらご入金いただくことが可能でしょうか?」と質問形式にして切り出します。すると、「×月△日だったら払えると思うけど・・・」と答えてくれることが多いのだそうです。

厳しい督促をしながら、お客さんから好かれる担当者のテクニック
先輩に、お客さんから好かれている人がいたそうです(業務の性格上稀少例)。その方は、クロージングに差しかかると、口調がガラリと変わりました。「いろいろ厳しいことを申し上げましたが、くれぐれもご無理はしないでくださいね。お客さまのお体が一番大切なんですから・・・では、ご入金をお待ちしています」と。以下次回。

『督促OL 修行日記』(榎本まみ著/文藝春秋社)

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

■研修、講演などのご依頼、ご相談は【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。今回は「コールセンター研修」の話題から。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年2月25日 (土)

アウトバウンドへの取り組み⑰ 「切り返し話法」(7)

実は、1月末から2月にかけて「クレーム対応研修」で全国を回っておりました。その研修の場でも話題にのぼった「悪質クレーマーに対する切り返し」が、このシリーズの最終回となります。
前回の「資料を送っておいて」同様、実際の現場では、なかなか以下の応答例ようには参りませんが、参考文献『必ず黙らせる「クレーム」切り返し術(※)』の著者が述べられているるように、日頃から情景をイメージし頭の中でトレーニングしておくだけで対応力が格段に磨かれることは間違いありません。そうした観点で読んでいただければ幸いです。
なお、クレームに対する切り返しだけに、不穏当な表現が頻発しますが、その点は、あしからずご了承のほど…。

相手に対応策を委ねる応答例
クレーマー「謝って済むなら、警察も裁判所もいらねいだろ!」
対  応  者「もちろんです。わたくしどもも警察や裁判所の必要性は認識しております」
クレーマー「じゃあ、どう対応してくれるんだよ!」
対  応  者「どう対応すればよいのか、具体的におっしゃって下さい」

クレーマー「少しは頭を使えよ! どうすればいいかぐらいわかるだろう?」
対  応  者「申し訳ございません。私には理解できないものですから、お客様が具体的にどうなさりたいのか、おっしゃって下さい」
クレーマー「ほーう。具体的に言えば、その通りにしてくれるのかよ!」
対  応  者「あくまでもお客様のご要望として承ります。その上で当社としての判断ということになります」

電話での応答例
クレーマー「お前さっきなんで自分の方から電話を切ったんだよ。話は終わってねえって言ってんのがわからねえのかよ!」
対  応  者「私どもの結論は、先ほどお話した通りです。何度も電話をかけてこられるので、すでに業務に支障が出ております。これ以上お続けになられるのでしたら、警察に通報いたします」

クレーマー「お前、ぶっ殺されてえのかよ!」
対  応  者「お客様、ただ今不穏当な発言がありましたので、これからの通話はすべて録音させて頂きます」

●サービス業を営んでいる以上クレームは避けて通れません。不思議なことに、CSへの取り組みが進むとその数が増える傾向があります。たとえば、病院は患者さんを〝お客様〟と呼ぶようになってから、病室内のルール違反が増え、治療費未払いが増えているそうです。このような現実に直面すると、サービス提供者の側も理論武装を怠ることはできません。今回の参考文献の中にある、法的防衛条項は以下の通りです。

大声は威力業務妨害罪、金銭を迫れば脅迫罪、無理強いの謝罪文は強要罪が
客席で、従業員の制止も聞かずに大声を出し続けるのは、威力業務妨害罪(刑法234条)に該当する。執拗に「どうしてくれるんだよ!」と迫り続けるのは脅迫罪(刑法222条)になるし、ましてや「10万円で許してやる」などと迫れば恐喝未遂罪(刑法250条)、それでお金を得たのであれば恐喝罪(刑法249条)になるのだ。
また、無理やり謝罪文を書かせたりしただけでも強要罪(刑法223条)になってしまう。

法的根拠からクレームをハネのける応答例
クレーマー「土下座して謝ったら許してやらあ!」
対  応  者「お客さまは私に土下座を強要なさるのですか? これは脅迫と理解してもよろしいでしょうか?」

クレーマー「ネットに書き込んでやるからな、覚えていろよ!」
対  応  者「それはお客様の自由です。ただし実害が生じた場合には、組織として断固たる措置をとらせて頂きます」

クレーム切り返しは「沈黙」「オウム返し」「開き直り」での応酬も有効
悪質クレーマーはおしなべて口が達者なだけに、相手のペースに乗せらないためには、時に〝沈黙〟が有効な武器となることを知っておきましょう。〝オウム返し〟も相手のタイミングをずらすうえで有効の様です。また、悪質クレーマーは、組織全体を相手にすると長期戦になることを知っており、単独個人を狙い撃ちにして、相手の弱いところを突き、一気に勝負をつけたがる傾向があります。

このような時は、前述の「相手に対応策を委ねる」ような、〝脱力モード〟や〝開き直り〟の対応を心がけ、クレーマーの挑発に乗らないことが一番の防御策になると、著者は述べられていますので、ぜひ参考になさってください。

※『必ず黙らせる「クレーム」切り返し術』(神岡真司著/日本文芸社)

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

■本ブログ内容とは別に、お問い合わせ・ご質問等ございましたら、【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年2月18日 (土)

アウトバウンドへの取り組み⑯ 「切り返し話法」(6)

第78~81回までは応酬話法の基本型について書いてまいりましたが、今回と次回は、その応用例として「資料を送っておいて」と、「悪質なクレーム」に対する切り返しを取り上げることにいたします。クレームについては過去5回(右のINDEXからクレームの欄を参照下さい)取り上げておりますが、切り返しに関するところに特化して、今回取り上げることにいたしました。まずは、格好の教材といえる『「資料を送っておいて」と言われたらチャンスと思え! (※)』、からです。

「資料を送っておいて」と言われたらチャンスと思え!
「資料を送っておいて」と反応する企業の95%以上にはニーズがある。残りの5%というのは、本当はニーズには乏しいのだが、ムゲに断ると電話の相手の心証を損ねてしまうだろうと婉曲的に断るケースなどだ。興味・関心を持っていたり、課題を感じていることに対するヒントがもらえそうだと感じたら、「資料を送れ」などとは言わず、会って話を聞くに決まっている。

この〝ニーズ中間層〟からの受注率を高めると、業績はうなぎのぼり
「資料を送っておいて」の企業が持つニーズはそれほど強いものではない。ニーズがゼロではないが、強くもない中間帯の顧客の常套句が「資料を送っておいて」になる。そしてそのニーズ中間帯の見込み客がケタ違いに多いのが、営業の世界の現実なのだ。
この層からの受注率を高めることができると、業績はうなぎのぼりになる。

「資料を送っておいて」の対処法
はじめは少しでも見込みがあるか、断るための口実かを見極める。レベルがどのあたりかを感じながら相手との対話に挑む。具体的には「資料を送っておいて」には最初から素直には応じない。いくつかあるパターンは
A 「もちろん、資料はお送りいたしますが、資料としてお出しできないところを口頭でフォローいたしたい事情がございまして・・・」
B 「コンプライアンス上、心臓部をお送りできない事情がございまして・・・」
C 「若干情報交換などできればと思いますので、ご挨拶も兼ねて30分ほどお時間を・・・」
自社の製品パンフレットは、解説もなしに初めて見るお客さまに懇切丁寧にわかりやすく作られているとは限らない。パンフレット的な営業ツールは汎用的に作られているために、本当に伝えたいことがあっさりとしか載っていない場合も少なくない。

これでダメなら、その際の対応策は2つ
潔く「またちょっと、タイミングを改めてご連絡させていただきます」と電話を切ってしまって、相手をもっと上の人間に変えて再チャレンジする方法(相手がキーパーソンだったらこの手は使えない)。
もうひとつは、素直に資料を送付して、到着したであろう日の2、3日後にフォローの電話をして、そこでアポ取りにかかる方法。
丁寧な手書きの手紙を添えたり、パンフレットの下に付箋紙をつけて、相手が関心を持つかもしれないコメントなどを書いたりして、「FOR YOU感」を高めると、そのフォロー電話でアポが取れる確率が高まるのはいうまでもない。

●実際の現場では、この「資料送っておいて」はかなりあると思います。それを、上記のようにさばければ、確かに効率は上がり、業績も向上するでしょう。しかし、経験が浅いスタッフには、なかなかむずかしいかもしれませんね。その際は、昔ながらの下記のトーク例が参考になるかもしれません。

伝統的な手法
A 「ちょうど、来週そちらの地区を回る予定ですので、その時に資料をお届けさせていただきますが、5分位ご挨拶させていただける日は・・・」
B 「承知いたしました。そうしましたらご送付さていただきますが、持参でもよろしいですか」
C 「資料が一人歩きしてしまう危険性もございますので、できればご説明にあがりたいと存じますが・・・」
顧客のニーズや関心も中途半端で、「会ってもいいが、会った後でせっつかれたらイヤだなあ」とアポに応じることをためらっている層の何割かは、このトークで背中を押すことができる。もちろん、断るための口実派は、ここでも「送付」にこだわる。
ニーズがそこそこあるにもかかわらず、本当に忙しかったり、警戒していたりして資料送付にこだわっていると判断したら、先の2つの対応策を展開すればよい。

IT時代のトーク
A 「簡単な資料も用意してございますが、デモがメインになりますので、それを見ていただきたいのですが、お時間は取らせないようにいたしますので・・・」
B 「デモとして携帯用DVDプレーヤーでご案内したい部分がございまして…、お時間は取らせませんので・・・」
という対応も効果的だ。デモやDVDまで作りこんでいる以上は、チープな内容ではないことくらい相手にも伝わるので、訴求力が高まる。

※『「資料を送っておいて」と言われたらチャンスと思え!』(大塚寿著/双葉社)

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

■本ブログ内容とは別に、お問い合わせ・ご質問等ございましたら、【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年2月11日 (土)

アウトバウンドへの取り組み⑮ 「切り返し話法」(5)

『販売は断られた時から始まる』(E.G.レターマン著/ダイヤモンド社1982年刊)が出版された頃は、第79回で書いたように切り返しに関する表現が、「応酬話法」から「セールストーク」に切り替わる時期だっただけに、セールスに関して、現実以上の厳しさを感じたビジネスマン及びその予備軍は多かったことと思います。今回は8つの応酬話法の最終回ですが、近年セールストークや電話応対でよくつかわれるようになった「例話法」の紹介から始めます。

⑥例話法(※第三者話法)
「お隣の○○さまには、たいへん喜ばれておりますよ」など、他の例を持ち出して気をひく。
例話法の応用① 「感情」は「勘定」で応じよ 
相手が感情的になった場合は、冷静に、相手にメリットのある数字的なデ-タ(根拠)を示すのが効果的。(※1)

例話法の応用② 「拡大←縮小話法」
相手が問題点を絞り込んで攻めてきて、不利になったときは、論点を拡大、発散させてしまう(=拡大法)。「もう少し大きな視野に立って考えてみますと」のように切り返す。
逆の場合は、「論点を絞らせていただきますと」と縮小し、自分の得意な方面へ引き込む。(※2)

例話法の応用③ ものは言い方、見方はひとつ
失点を問われたら?「サッカーなどリーグ戦で勝ち点が同じ場合、得点が多い方が勝ちとなる得失点差の感覚」で答える。
トップ企業の場合には、細部においては新興勢にかなわないところもあるが、ブランド力、総合力、安心感では他を圧倒している。このような場合は、この得失点差の考え方は有効打となる。(※1)

●コンタクトセンターの研修で、スクリプトに書かれた例話法の応用に関して「宣伝文句的になるのでは…」との質問を受けることがよくあります。その際の解説としては、多少難しくなるのですが、マーケティングの世界で語られることの多い「イノベータ理論」で解説するようにしています。

●この理論によれば、新しい製品(サービス)を受け入れようとするとき、〝利用者から評判を聞いて、良い場合に購入(導入)を決める〟のが、マーケットには68%(品質本位の初期大量採用者34%と価格重視の後期大量採用者34%の合計)存在します。したがって、マーケットのかなりの部分を占めるこの層にとっては、他社(者)の利用実績は貴重な〝判断情報〟となるので、伝えることが親切なのだと。
さて、次は面談時に有効な資料転換法の電話応対時の応用例と、ピストン話法の応用例です。

⑦転換法(面談の際は資料転換法ともいう)
電話では、ピンチはチャンス、決してあきらめず、「お手元の資料をご覧ください」などと、注意を手元の資料に向けさせる方法(※3)。
①トークのキーワードを変える:トークのキーワードが相手に刺さっていないこともよくあるので、トークのキーワードを変えてみることも、アポ獲得率を高めるには非常に効果がある
②気持ちのモードを切り換える:気持ちのモードというものは自己暗示によっていくらでも変わる。ハイテンションにスイッチを入れ替えようとするモードの切り換えもあれば、売り込み型からヒアリング型に変えようという切り換えもある。いやな気持ち、テンションが挙がらないときは意識してスイッチの切り換えを行うとよい。
③気分が乗っているときに再チャレンジ
④コール担当者を替える

⑧ピストン話法:「ところで○○さま、・・・のようですね」と、まるで違った話を始め、一度はずして、また前に戻って続ける方法。
ピストン話法の応用 
分からないことを聞かれてしまったら? 動揺を態度に出さず、堂々と即答すること。その際、「困った」と言う思いが口調(表情)に出てしまうと、お客様から「頼りにならない」と思われます。先ずは動揺を態度に出さずに、次の7つのポイントを抑えて、堂々と即答すること。
①質問をしっかり受け止める ②分からないなりにすばやく返答する ③あいまいな推測で答えない ④語尾を濁さない ⑤調べて報告することを申し出る ⑥返答することになった場合は期日(時間)を決める ⑦即答できないことを詫びる (※4)

※1:『「切り返し話術」の上手い人が成功する』(守谷雄司著/成美堂出版)
※2:『絶対に負けない!「とっさの切り返し話術」』(中川昌彦著/成美堂出版)
※3:『法人営業バイブル』(大塚寿&井坂智博著/PHP研究所)
※4:『セールストーク実践のルール』(福島由美著/秀和システム)

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

■本ブログ内容とは別に、お問い合わせ・ご質問等ございましたら、【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年2月 4日 (土)

アウトバウンドへの取り組み⑭ 「切り返し話法」(4)

前号では否定法のコメントを控えましたが、こちらがかけた電話とはいえ、ときには(実際はかなりあるのかも・・・)抹殺法や否定法を試してみたくなるお相手と出くわすこともあるはずです。そのようなときは、早目の終話が得策でしょう。今回は、どのようなケースが〝見切り〟に該当するかの検証から入ります。

会話がパターン化、脇道一直線、一方的な相手ペースは見切り時か(※1) 
①基本的なところで意見の一致が困難なケース(根っからの○○ファン)
②相手との議論がパターン化し、同じことの蒸し返しのようになっているケース
③相手の言うことが、どんどん脇道にそれ、枝葉末節に入っていくケース
④一方的に相手のペースになっていて、それを変えられそうにないケース
⑤一方的に相手のペースになっていて、このままでは相手に負けてしまいそうなケース
⑥相手とこれ以上会話しても意味がないと見極めたケース(感情がこじれたり、話が堂々巡りする)
⑦時間の制約があったり、ほかに話すべきテーマがいろいろ控えているようなケース
⑧そのほか、打ち切ることに積極的なメリットのあるケース

● 以上の例は、長くお仕事に携わっている方は、何度となく経験がおありだろうと思います。しかし、対話中にはなかなか見切りのタイミングを判断しかねることも多いと思われます。そうした際に指針を与えてくれるのが、これから紹介する「質問法」といえるかもしれません。
第79回では④否定法(正面撃退法)まででした。

⑤質問法(聞き返し法)(※2)
「なぜでしょうか」「どうしてでしょうか」「・・・とおっしゃいますのは」「どのような理由で」と質問をして、さらに真意を探り出す方法です。
断りに対する悪い例と「質問」による切り返しの良い例 
お客「すでに他社と取引しているから」
悪い例「さようでございますか。それではいたしかたございませんね。たいへん失礼いたしました」
良い例「さようでございますか。・・・で今まで、なにか具合のよくない点はございませんでしたでしょうか。各社とも最高の技術を誇っておりますので、そんなことはないと思いますが、ただ、違った意味で各社ともそれぞれの特長がございます。○○社さんの製品が完全だといわれますと、何も申し上げようがございませんが、たとえば△△の点はいかがでしょうか。最近は、ご承知の通り技術革新ということで、当社でもその点に力を入れ、△△には十分お客さまのお気に入るよう設計してございます。これが、その仕様書でございます。どうぞご覧ください・・・。」

質問法の応用例(※3)
質問切り返し型:「御社では主にどの階層にプレゼンテーションの研修を行っていますか?」と聞かれた場合、
「とおっしゃいますと、どの階層をお考えなんですか?」と、逆に質問します。質問に対して質問で切り返すことにより、セールスを続けることが出来るのです。まともに応えると、そこでセールスが終わってしまいかねないので。

解決暗示型:「お宅はいつも納期が遅いからね」といわれたら。「その点は、大切なポイントだと思います」と、先ず相手を認め、「もしも、納期の点が解決しましたら問題ないのですね」と確認をしておいて、セールストークを進める。

利益強調型:「このパソコンの重さはわずかに1.5キロです。持ち運びはやはり軽い方がいいのではありませんか?」。お客は自分の利益を考えながら商品を買うべきかどうか悩んでいる。

成功例提示型:成功提示型は、成功した第三者の例を挙げて質問していく方法。「同じように、A社の田中さんは難しいとおっしゃっていましたが、今ではお得意様になっています」とか「文章においては、B社の山田さんはワードの個人の作業で十分とおっしゃっていました」と、採算者の例を挙げた後に、「どう思われますか?」。お客様は損しないということがわかると安心する。

●これまで見てきたように、「質問法」は攻守兼用の有力な手法ですが、これを身につけるには日ごろの鍛錬が必要になります。慶応大学関係者以外は一万円札でのほうがなじみの深いと思われる福沢諭吉氏は「両眼主義」を実践されていたそうです。多くの物事にはオモテ、ウラの両面がある。どちらが正しいではなく、常にその両方に目を向けるのが「両眼主義」で、これを心がけていると柔軟なものの見方ができるようになるそうです。臨機な「質問」ができるようになれそうですね。

※1: 『絶対に負けない!「とっさの切り返し話術」』(中川昌彦著/成美堂出版)
※2:『実例応酬話法』(吉岩松男:著者代表/河出書房)
※3:『セールストークの基本と実践テクニック』(箱田忠昭著/フォレスト出版)

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

■本ブログ内容とは別に、お問い合わせ・ご質問等ございましたら、【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年1月28日 (土)

アウトバウンドへの取り組み⑬ 「切り返し話法」(3)

フランク・ベドガー氏(永遠のベストセラー『私はどうして販売外交に成功したか』の著者)は「お客の断りの62%はウソの断りである。真実の断りは38%にすぎない」と語っています。前回の「オーム返し法」は、「切り返し」というよりは一般的な応対といえますが、今回からは、現場が直面する最大の課題ともいえるお客さまの「断り」や「否定的な発言」をどうかいくぐるかのテクニックに入ります。まずは「逆転法」、そして「抹殺法」「否定法」です。

②逆転法(イエス←バット法、肩すかし法):「はい、その通りです。しかし…」
「その通りです」「なるほど」と受けた後、「しかし」と応酬に転じる話法。
ただ「しかし」は、反論や否定、極端に言うと対決的、批判的な強い印象を与える言葉でもある。そこで、「しかし」に代えて、「ならびに」「あわせて」「と同時に」「さらに」「これらのことも」「そうは言うものの」と置き換えると、ニュアンスがだいぶやわらぐ。(※1)

店頭でも、電話でも通用しそうなイエス←バット話法の3例(※2)
①「白はいいけど、汚れやすいのでね」←「はい、たしかに白は汚れやすいものです。それだけに白が貴重なのではないでしょうか。クリーニングして、パリッとした純白のコートは人目を引きますよ。胸を張って歩いてください」
②「予算より高すぎる」←「お買いになるときは、どなたもお値段を気になさいますが、長くお使いになるうちに、そのよさが分かり、いいものを買ったと、きっとお喜びになりますよ」
③「このデザイン、少しおとなしすぎない?」←「はい、少し静かなデザインですが、それだけに長くお使いになってもあきがきませんし、また、流行にとらわれませんので、いつも新鮮です」

●上記3例はいずれも店頭におけるBtoCのトーク例です。電話でも応用可能な素材と思い取り上げましたが、BtoBとなると、逆転法も少し工夫を加える必要がケースによってはありそうです。そこで、逆転法の一歩先をいく手法を簡単に紹介いたします。

「イエス←バット方式」の上を行く、ホワイ←ビコーズ(WHY BECAUSE)型(※5)
相手の言い分に「イエス」を言わず、「ホワイ」と質問するやり方。 
「一個につき3万円も高い」といわれたら、
「ハイ、たしかに」「まさしく」なんて認めるのではなく、
「どうして高いと思われるのですか」と、その理由を聞き出す。

③抹殺法(黙殺法、聞き流し法、またはおとぼけ法ともいう)
切り返しに失敗するとさらに切られることがあります。抹殺法は、まさにそうしたリスクを伴う手法であることは間違いありません。使用に際しては、相手の状況をよく判断してから仕掛けるようにしてください。

たっぷり〝間〟を取って攻勢をかわす。
無言と沈黙は、切り返す体制を整えるための準備、助走に相当します。相手のペースに乗るのを避けたいとき、相手のリズムを崩したいときに、意識的に〝間〟を取るのが大変有効です。ちょっとしたかく乱戦法ですが、意外に相手の調子を狂わせる効果があります。これは弱者の(とる)戦略といわれるものに近いですが、もし相手が強者なら、奇策を弄することも必要でしょう。(※3)

「・・・ウチは要らないよ」に対する〝沈黙の間〟の切り返し効用例
「といいますと、やはり・・・(沈黙の間をつくる)・・・う~ん」。このように間を入れることで、断りに理由があるかないかがはっきりしてきます。
「やはり○○だから要らない」と話の筋が通っているなら、「明確に要らない」パターンといえるでしょう。しかし、筋の通らない理由はベドガー氏のいうウソの断りの可能性が強いので、そのようなケースの「要らない」はまったく無視してよく、堂々と「相手の会社へのメリット」を説明すればよいと筆者は書いておられます。
なお、テレアポを目的とした電話の場合は、相手に「直接的な効果」を説明するのがポイントで、性能を語る(これは営業活動の範疇との認識)のは避けるようにとのアドバイスもあります。(※4)

④否定法(正面撃退法)
「ご冗談でしょう」「いや、そうではありません」などと相手の意見を否定して、こちらの意見を述べる高等戦術ですが、抹殺法同様大きなリスクを伴います。ところで、
アウトバウンドは、こちらから電話をかけることが原則ですので、否定法を使うこと控えるべきでしょう。したがって、本稿では否定法についてのコメントは控えます。

※1:『「切り返し話術」の上手い人が成功する』(守谷雄司著/成美堂出版)
※2:『上手な接客セールス話法』(中村卯一郎著/ビジネス社)
※3:『絶対に負けない!「とっさの切り返し話術」』(中川昌彦著/成美堂出版)
※4:『稼ぐ営業マンは空気が読める』(深田周三著/ぱる出版)
※5:『ビジネスマンが交渉に強くなる本』(谷川須佐雄著/テイ・アイ・エス)

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

■本ブログ内容とは別に、お問い合わせ・ご質問等ございましたら、【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年1月21日 (土)

アウトバウンドへの取り組み⑫ 「切り返し話法」(2)

切り返しには5つの「目的」があるといわれています。(※1)
①相手の主張や攻勢をはね返すこと
②自己を防衛すること
③その場の主導権を握ること
④相手を攻め、自分が優位に立つこと
⑤活発で魅力的なコミュニケーションの実現

この「目的」達成には、先人が作り上げてくれた応酬話法の基本型が大いに役立ってくれることでしょう。以下4回、これを取り上げることにいたします。
今回は「オーム返し法」ですが、これを理解するためにはNLPのバックトラッキングを知っておくことで理解が深まると思います。NLPの関連用語と具体例をそえることにいたしますので、参考になさってください。

①オーム返し法:「さようでございます。ですから、もっと・・・・・」
話に詰まったときの巻き返しに有効なのがオ-ム返し法です。 
「今までのお話のポイントは、こういうふうに考えていいんですね」と、これまでの会話を要約したり、そっくりそのまま復唱してみること。これだけで、しらけたムードの少なくとも何分の一かは取り除かれます。(※2)

オーム返し法はNLPのバックトラッキングを知ることで理解が深まる
NLPは、Neuro Linguistic Programming(神経言語プログラミング)の略です。
バックトラッキングについては、(財)日本NLP協会のHPで以下のように解説しています。
バックトラッキングとは、日本語で「オウム返し」と呼ばれ、相手の言ったことを返すことを指します。その目的は、相手の話をちゃんと聞いていることを示すことと、相手に自分が発した言葉を再認識してもらうことにあります。
そのため、できるだけ相手の使った表現そのものを返す必要はありますが、一語一句同じでなくてはならないというわけではありません。

バックトラッキングには、3つのポイントがあります
1、相手の感情(感情のフィードバック)、2、話の内容の事実(事実のフィードバック)、3、話の要約(要約のフィードバック)。
その他、相手の話が長くなってきた場合は、話の内容の事実を確認したり、話を要約したりして、聞き手の理解を確認するためにバックトラッキングを利用したりもします。
バックトラッキングは、相手とのラポール(信頼関係)を築くために有効な方法としても挙げられ、これを行うと、相手は自分の話がよく理解され、受け入れられているという感覚を持ちます。
人の話を聞くことが仕事であるカウンセラーやセラピスト、コーチの方々など、よい聞き手を目指す方には、ぜひ身につけていただきたいスキルの一つです。

事実のバックトラッキング(フィードバック)(※2)
営業では、YESをとることが会話のうちでは重要といわれています。YESとりとかYES SET(イエスセット)と呼ばれています。
人はずっと脳内でYESという状態を続けると、一種のマヒ状態を起こして、オープンマインドになりやすい傾向があります。これはお客さまの緊張感や猜疑心のバリアをなくすことにつながります。

バックトラッキングは、YESを会話の中でとってしまう強力な手法です。
お客様が「今日は涼しいですね」と言ったら、あなたは(そうですね)では、バックトラッキングになっていません。
お客様が「今日は涼しいですね」と言ったら、あなたは(涼しいですね)、もしくは(今日は涼しいですね)と返す。これが事実のバックトラッキングです。

感情のバックトラッキング(フィードバック)
お客様が、悲しい顔で「今日、残念なことがあってさ」と言ったら、(悲しいと感じられているんですね)と返す。言葉に表れない感情に同調するのも、バックトラッキングの奥深いところです。

要約のバックトラッキング(フィードバック)
「昨日ディズニーランドに行ってさ」(ディズニーランドへ行って)←事実を返す
「すごい混雑しててさぁ」(こんざつしてて)←事実を返す
「もうね、長いやつなんか2時間も並んで、まいっちゃったよ」(うんざりされたんですね)←感情を返す
「当分ディズニーランドには行かないかなと」(当分行かないと)←事実を返す
(○○さんはディズニーランドで、混雑の中2時間も並ぶこともあって、もう当分行かないかなぁと、ちょっとうんざりされているわけですね)←要約して返す

※1:『絶対に負けない!「とっさの切り返し話術」』(中川昌彦著/成美堂出版)
※2:『“検討します”を言わせない営業術』(浅井隆志著/PHP研究所)

ホームページ  https://www.leafwrapping.com/

■本ブログ内容とは別に、お問い合わせ・ご質問等ございましたら、【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年1月14日 (土)

アウトバウンドへの取り組み⑪ 「切り返し話法」(1)

昨年、〝アウトバウンド業務を新たに手掛けたコールセンター〟の研修を担当いたしました。このセンターでは、インバウンド(受信)経験は豊富なものの、アウトバウンド(発信)業務の経験が乏しいため、スタッフの前向きな取り組み姿勢に反して、レスポンス成果(アポイント成立)が伴わない悩みを抱えていました。事前ヒアリングの結果、最大の課題は「切り返し」トークにあるとの講師判断から、このスキル強化をメインテーマに据えて準備を進めました。

1995年以降「応酬話法」をタイトルにした本は1冊も発行されていない
「切り返し」のマニュアル作成の一助になればと、研修先業種ならびに業際関連の応酬話法事例を調べようと国会図書館にでかけましたが、そこで思いがけない状況に直面したのでした。じつは、私が参考にしようとした「応酬話法」をタイトル、もしくはサブタイトルに掲げた本はこの15年間、一冊も発行されていなかったのです。
国内で出版されたものは一通り蔵書されている国会図書館でのことですから、これには少々驚かされました。下は年代別の「応酬話法」タイトル書籍の出版数と、同じ選択基準で「セールストーク」「切り返し」の検索結果です(単位:冊)。

       「応酬話法」  「セールストーク」  「切り返し」
1960年代      3          1          0
1970年代      2          2          0 
1980年代     11          5          0
1990年代      3         19          1 
2000年代、     0         28          8
2010年代      0          2          1

この表を見ると、本のタイトルが時代とともに変化していることがよく分かります。東証のダウ平均が最高値を付けた1989年末(12月29日)を境に、「応酬話法」から「セールストーク」に流れが変わっています。
右肩上がりの時代は、「売らんかな」の応酬話法でよかったのでしょうが、モノが売れない時代になると、スマートに「セールストーク」で迫る風潮になったのでしょうか。

団塊以降の世代の営業マンに「応酬話法」という表現にアレルギーがあったかも
2000年代に入ると、「応酬話法」に比べ「セールストーク」ではインパクトが弱いとの判断が働いたのでしょうか、「切り返し」を盛り込んだタイトル本が8冊出ています。このジャンルの本のタイトルの移り変わりを見るだけで、マーケットが生き物だということを実感させられますね。

さて、本のタイトルは「セールストーク」「切り返し」に変わっても、その中に書かれているトークの核心部分はいずれも「応酬話法」そのものです。永年にわたり訪問販売、電話営業、コールセンターの現場で培われてきたノウハウは、以下のように「8つの応酬話法の基本型」としてまとめられているケースが多いようです。

「8つ応酬話法の基本型」とコメント例(※1)
①オーム返し法:「さようでございます。ですから、もっと・・・・・」
②逆転法(イエス・バット法、または肩すかし法ともいう):「はい、その通りです。しかし・・・・・」
③抹殺法(黙殺法、聞き流し法、またはお惚け法ともいう):これは、相手の状況をよく判断してやらないと失敗することがあるので、よほど注意しなければならない。
④否定法(正面撃退法):「ご冗談でしょう」「いや、そうではありません」などと相手の意見を否定して、こちらの正しい意見を述べる方法であるが、これも注意しないと失敗する。
⑤質問法(聞き返し法):「なぜでしょうか」「どうしてでしょうか」「・・・・・とおっしゃいますのは」「どのような理由で」と質問をして、さらに真意を探り出す方法をいう。
⑥例話法(※第三者話法):「お隣の○○さまには、たいへん喜ばれておりますよ」など、他の例を持ち出して気をひく。
⑦資料転換法:「これをご覧ください」などと、注意を手元の資料に向けさせる方法。
⑧ピストン話法:「ところで○○さま、・・・・・のようですね」と、まるで違った話を始め、一度はずして、また前に戻って続ける方法。

上記8つの応酬話法のうち、③抹殺法、④否定法、⑦資料転換法については、対面営業が前提になるでしょうから、コールセンターではよほどのことがない限り、この話法を使うことはないと思いますので、この点誤解のないようにお願いいたします。なお、⑥例話法ですが、参考文献に第三者話法は記載されておりませんでしたが、山本の判断で注記しました。コールセンターでは「第三者トーク」と表現し、スクリプトに盛り込まれているところが多いのではないでしょうか。
次回は、この8つの応酬話法について、具体的事例をそえて詳しく触れることにいたします。

※1『実例応酬話法』(吉岩松男=著者代表/河出書房)

ホームページ https://www.leafwrapping.com/

■本ブログ内容とは別に、お問い合わせ・ご質問等ございましたら、【プロフィール】(画面左顔写真下)の〈メール送信〉からお願いいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧