今回のシリーズでは、参考文献に紹介された「22のプレッシャー解消法」に対して、『イチロー思考』から、もっとも近いと思われるイチロー選手の言葉を対応させました。しかし、参考文献『プレッシャーなんてこわくない』の中にある解消法を紹介しないのはいただけませんので、参考資料としてその概略を記すことにします。
プレッシャー解消法(18) プレ・ルーティンを決める(一部紹介済み)
ある企業の広告担当部長はこんな話をしてくれた。「商談の10分前に自分のオフィスに入り、ドアを閉め、ブラインドを下ろしたら、さあ開始!――数分のあいだ、モハメド・アリになりきるんです。頭を小刻みに動かし、自分の主張を通すつもりでジャブを入れます。そして、蝶のように舞い、蜂のように刺している気分になったら、商談の準備は完了です。『よし行くぞ!』と自分に言い聞かせます」
この広告担当部長が使っているプレッシャー解消法(プレ・ルーティン)は、プロのスポーツ選手、俳優、音楽家のほとんどが使っている方法である。
プレッシャー解消法(19) 思考を減速させる
思考を減速させると、ストレスや不安によって作業記憶を圧迫されずに済むようになる。ストレスや不安は理解力や判断力を低下させ、結果として無益な反応を引き起こす。
1980年代、心理学者のミッキー・チーは、人びとがハイプレッシャーな状況で困難な問題解決に成功したり失敗する原因を調査した。彼女は、一連の基礎的な物理学の問題を、物理学の教授グループ、博士課程の大学院生グループ、学部生グループに出題した。学部生たちは物理学の一学期の課程を終了したばかりだった。
予想どおり、教授と大学院生の成績は学部生を上回っていた。意外だったのは、教授と大学院生が問題を解き始めるまでにかかった時間は学部生より長かったということだ。
鉛筆を用紙に走らせる前に、教授と大学院生はしばし間をとり、問題と基本原理について考えていたようだ。いったん問題を把握すると、彼らはすばやく正確に解答することができた。
一方の学部生たちは、よく考えずにいきなり問題に取りかかっていた。これによって、彼らはどうでもいい細かい点に気をとられるようになった。不正解の直接の原因の多くはそこにあった。彼らは作業記憶を圧迫されていたのである。
思考を「減速させる」癖をつけ、1分であろうと1日であろうと、自分に時間を与えよう。たとえば、重要な試験を受ける場合は、脇目もふらずに問題を解いたり小論文を書いたりせずに、落ちついて取りかかったほうがいい。2分かけて問題を検討し、小論文の要旨を考えるのだ。
プレッシャー解消法(20) 呼吸をととのえる
心拍、体温、呼吸などの身体機能は自律神経に制御されている。自律神経系に制御される機能は不随意であるために自覚されることはないが、そのような機能のなかで自分でコントロールできるものの一つが呼吸である。
不安を感じると呼吸が速く、浅くなる。意識的に呼吸のスピードを落として横隔膜呼吸をすれば、すぐに気持ちを落ちつけることができる。
プレッシャー解消法(21) 自分の出番を一番にする
サッカーのワールドカップやアイスホッケーリーグの研究によれば、PK戦では統計的に見て先行のチーム(または選手)が非常に有利であることがわかっている。選手への追跡調査のデータが裏づけているように、最初にシュートする選手が感じるプレッシャーは2番目の選手に比べて少ない。(中略)
自分が最初にやってしまえば、前の人のパフォーマンスを見ることで起こる雑念を持たずにすむ。あなたの作業記憶は目下の作業だけに集中することができるのだ。
また、最初にやってしまえば自分と他人を比較しなくてすむため、競争意識も小さくなり、他人を打ち負かそうとすることではなくベストを尽くすことに集中できるようになる。他人を打ち負かそう思っていると、パフォーマンスを悪化させてしまう場合が多い。
先行者になることはプレッシャーの軽減に役立つだけではない。勝負のかかっている状況では、自分の後に続く人びとに大きなプレッシャーをかけて優位に立つことができる。
ただし、この方法が使えるのは、慣れ親しんだ作業をするときにかぎられる。やりつけない作業では、先行者の作業を見ることで勝手がわかるなら、2番手にまわったほうが得策かもしれない。先行者のやり方を見て不安が軽減され、自信がわいてくるだろう。
プレッシャー解消法(22) 自分の気持ちを誰かに打ち明ける
さまざまな研究でわかっているように、つらい気持ちを分かち合う行為には不安とストレスを軽減する効果がある。自分の気持ちを人に話すと、それについてよく考えたり、プレッシャーのかかる状況を現実的に判断したりするきっかけになる。たいていの場合、話した相手は、状況を広い視野で見るための有益なヒントや方法を与えてくれるからだ。
目前に迫ったプレゼンテーション、締め切り、重要な商談などにプレッシャーを感じたら、友人や同僚、あるいは顧客や上司にその気持ちを伝えよう。(中略)
多くの研究でわかっているように、日記であれ独りごとであれ、感情を言語化する行為には不安やストレスやプレッシャーを軽減する効果がある。
プレッシャーを感じるのは不名誉なことではないが、感情を分かち合わずにいると、自分がプレッシャーに不名誉な思いをさせられることになる。
念のために言っておくが、以上の22のプレッシャー解消法はすべて短期的な戦略である。これらは「対症的な」解消法であり、目の前のプレッシャーを何とかしようというときに役立つものだ。長期的な解消法を身につけたければ、COTEの鎧を構築しなければならない。※Confidence(自信) Optimism(楽観的) Tenacity(ねばり強さ) Enthusiasm(熱意)
参考文献:『プレッシャーなんてこわくない~誰でも本番で勝てるメンタル強化術』(ヘンドリー・ウェイジンガー著/早川書房)
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