マナーとエチケットの違い
マナー研修の場でマナーとエチケットはどうちがうのですか?と聞かれることがあります。よく質問を受けるということは、それだけ境界がわかりにくいからなのでしょう。私が参考にさせていただいているのは、古い文献ですが、アメリカの女性い作家エミリー・ポスト(エチケットの権威と呼ばれる女性)が書いた大ベストセラー『エチケット』です。
この本のことを紹介している『100%好かれる1%の習慣※』によると、「エチケットは、他人への思い遣りに基づく行動の規範であり、良いマナーとは、この規範に則って生活しようとする人々のあたたかい心、善意のあらわれである」とあります。分かりやすく言い換えると、エチケットは「型」であり、マナーは「相手を気づかう心」なのだと。
「良いマナーとは、この規範に則って生活しようとするあたたかい心、善意のあらわれである」とのことですが、では、二人で食事をしているとき相手の膝の上にのせてあったナプキンがするりと床に落ちたら、あなたはどうしますか?①見て見ぬふりをする、②「落ちましたよ」と、教えてあげる。③落ちたナプキンを拾ってあげる。
参考文献(※)によると、食事のマナーとして最もふさわしいのは①だそうです。さらに、マナー上級者であれば、自分も相手と同じようにナプキンを落とし、あくまでも「自分のために」さりげなく給仕を呼ぶでしょうと。ここまで心得ている方となかなか出会うのは難しいかもしれません。なお、②③は相手に恥をかかせてしまうことになります。
先日、当ブログに小笠原流礼法33代目・小笠原忠統(ただむね)氏の「『こころ』を大切にする人が『かたち』を身につけると、自然で美しい立ち居振る舞いができるようになる」との教えを紹介しました。自己の内面から発せられる真摯な心遣いが、美しい立ち居振る舞いとあいまって日常生活を満たすのは東西を問わず共通しているようです。
ところで、エチケットという言葉はどのようにして誕生したのでしょうか。これはフランスのベルサイユ宮殿であるハプニングに由来します。ルイ14世の時代に、ベルサイユ宮殿の庭には美しい花園があったそうです。ところが、ある時、この花園を心ない者(貴族階級の若者たちが酒の勢いで)たちが踏みにじってしまいました。
この様子に宮殿の庭師が腹を立て、「立入禁止」の札を立てました。はじめは無視されたのですが、ルイ14世が立て札を守るよう命令を出してから徹底されたとのこと。この立て札のことをフランス語でエチケットといい、後にこれが転じて「心の花園を荒らすな」という意味に用いられ、やがて現在のように「礼儀作法」を示すようになったそうです。
参考文献:『100%好かれる1%の習慣』/『世界史は化学でできている』/『セールスセンスを磨く プレゼンテーション術』
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