プレゼンテーション研修

2015年11月29日 (日)

稀有な存在(イサム・ノグチ)に思いを馳せる  緑のプレゼンテクニック(5)

本稿を書いている最中に、しきりとイサム・ノグチ氏のことが思い出されました。氏は、昭和の時代に多方面で活躍した人で、一般的には彫刻家として知られています。しかし、氏には、パリ・ユネスコ本部に日本庭園の作品があり、札幌市にある広大なモエレ沼公園もデザインしています。まさに大地の彫刻家を目指した人だったのです。

「閑(しず)かさや 岩にしみいる 蝉の声」(松尾芭蕉)
これは『奥の細道』に出てくる山形の立石寺で詠まれた有名な句です。この句の影響もあるのですが、筆者は石の彫刻を虫目線で見てしまいます(イサム・ノグチさんごめんなさい)。これに対して氏の日米の2つの美術館と、パリ・ユネスコ本部の日本庭園は魚目線。そして、札幌市のモエレ沼公園を鳥目線で眺めているように思います。

イサム・ノグチの日米の2つの美術館
香川県高松市牟礼町に(氏が1969年から20年間にわたりアトリエにしていた場所)イサム・ノグチ庭園美術館があります。展示物は150点余りの彫刻作品。自ら選んで移築した展示蔵や住居イサム家、晩年制作した彫刻庭園など、全体が一つの大きな「地球彫刻」あるいは「環境彫刻」となっています。

ニューヨークのクイーンズには、やはりイサム・ノグチ氏が自ら構想し作品の配置まで行ったという貴重な美術館、ノグチミュージアムがあります(ここもノグチ氏のアトリエのあったところ)。そこは独特の癒しの空間となっており、日本人観光客はもとより、ニューヨーカーもよく訪れる名所の一つになっています(氏の母親は米国人)。

イサム・ノグチ氏の遺作「モエレ沼公園」が2002年のグッドデザイン大賞
札幌市東区にあるモエレ沼公園はイサム・ノグチ氏が亡くなって17年後(1995年一部開園、2005年に全面開園)に完成しました。188.8haの広大なスペース(東京ドームの40倍の広さ)にはガラスのピラミッド、サクラの森、モエレビーチなどが見事に配置されています。この公園が2002年度のグッドデザイン賞に輝いたというのは驚きです。

●今回のブログシリーズはプレゼン資料を作成するうえで参考になればと『緑のプレゼンテクニック』を取り上げましたが、自然がテーマだったからでしょうか、発想があちこちに拡散し、思いもかけぬ方向にペンが向かってしまいました。
イサム・ノグチ庭園公園のHPに「この地が未来の芸術家や研究者、そして広く芸術愛好家のためのインスピレーションの源泉になることをイサム・ノグチ氏が強く望んでいた」とありますが、まさに自然や質の高い芸術は人の心を揺さぶるようです。

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2015年11月26日 (木)

スライド作成に必要な 虫の目・魚の目・鳥の目  緑のプレゼンテクニック(4)

ものを捉える視点として「虫の目」「鳥の目「魚の目」」が喩えとしてよく取り上げられます。今回の「緑のプレゼンテクニック」を書いていて感じたのは、大自然が対象ということもありますがこの3つの視点の大切さでした。プレゼン資料を作成するに際して、大事なポイントでもありますので、ここでおさらいをしておきます。

意外と知られていない「魚の目」が未来を見通す
「虫の目」とは、身近なものを正確に観察する視点。「鳥の目」は、一段高い位置から物事を概観する視点。これらに対して「魚の目」は、時間や空気の流れを読む視点といえます。大きな流れを感じながら未来を見通すのが「魚の目」と解説する方もいらっしゃいます。この3つの視点を併せ持つことで、物事はうまく運ぶことが多いのです。

参考資料で「虫の目・鳥の目・魚の目」が明確に対比された箇所 
これからのスケッチでは、二つの視点が求められるそうです。造園スケッチにおいては、単にアイレベル(虫の目)の完成予想図を描くばかりでなく、人間・空間・時間を的確に捉えた技術(鳥の目)、すなわち、造園空間が成長するプロセスを理解した上での筆さばき(魚の目)が求められます。

大自然に抱かれた社寺、鑑賞主体の庭園、人工的な都市公園ではそれぞれの空間の位置づけ、コンセプト、管理形態が異なることから、タッチはおのずと異なります。ここを(「虫の目」「魚の目」で)描き分けなければならないのです。ランドスケープデザインでは、鳥になった気分で俯瞰(鳥の目)するように描く技術が求められます。

大地の眼差しを捉えるのは、流れを読む「魚の目」
スケッチを描く空間は、手つかずの原生的自然、里山の代表される二次的自然、造成された人工空間、そして草地が回復しつつある半自然空間と多様です。
潜在自然植生は何か? 陽射し、通風はどうか? 水脈はどうか? 土壌は植物に合っているか? 棲む生き物は何か? 10年後の周辺の土地利用はどうなるのか? 地域住民の年齢層は? こうした設計条件が大地の眼差し(魚の目)です。

ニーズは日々変化するので、その把握には「3つの目」が
スケッチのニーズは日々、高度化・多様化しています。社会動向はどうか、ファッションの変化はどうか、ベストセラーは何か。今日では環境問題が注目されています。何よりも大切なのは常にスケッチを学び、描くことを生業とするランドスケープアーキテクト、造園家の要望、そして利用者の声を聞くことです。

参考文献:『『緑のプレゼンテクニック』(柳原寿夫&中橋文夫著/学芸出版社)

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2015年11月22日 (日)

スケッチがうまくなる6つのステップ  緑のプレゼンテクニック(3)

スケッチがうまくなる方法 その1「観察力を養う」
スケッチを描く場合、空間の本質を描かない限り、人に感動を与えるのは難しい。造園は植物・水・土・石など多様な材料により空間をつくり、年月を重ねることにより侘び、寂などの味わいが深まります。自然、人工の造園、ランドスケープの空間を観察することにより本質を学び、素材の組み合わせ、空間構成のベストアングルを見出すのです。

スケッチがうまくなる方法 その2「マネをする」
有効な方法として「模写」があります。はじめは原画にトレッシングペーパーをあて、トレースして着色してください。専用のスケッチブックを常時携帯し、いつでも、どこでも描く練習をしましょう。そのうち、好きになります。毎日繰り返すことにより名人の腕前に到達します。これは才能がある人にも、ない人にも言えることです。

スケッチがうまくなる方法 その3「五感を研ぎ澄ます」
視覚的には空間そのものを姿に捉えます。季節感は植物の表情、生き物の飛来でわかります。聴覚は木々のざわめきが刺激し、落葉樹の描き方がポイント。味覚を表現するには美味しそうな果実を、触覚を伝えるには、植物や石などの表情を細かく描いてください。臭覚の表現は難しいですが、匂いがイメージされるには花を精緻に描くことです。

スケッチがうまくなる方法 その4「何でも描く」
上手になるコツは、簡単なものから描き始め、上達するにつれて描きづらいものを描くこと。生き物の瞬時の動態を描くのは難しいものです。苦手をつくってはダメ。常日ごろより描きにくいものを描くように心掛けてください。野球の達人に「ボールが止まって見えた」との名言がありますが、蝶々やトンボが舞う姿を描く極意も同じです。

スケッチがうまくなる方法 その5「時間を読む」
造園の世界では、「植物は小さく植えて、大きく育てよう」という格言があります。コストが抑えられ、植物が環境に適合し丈夫に育つからです。ナチュラルガーデンがそうです。郷土種による、風土に馴染む庭園が期待されており、これこそ植物の生長過程をマネジメントすることで修景効果の高い庭園や、拡張の高い公園に育つのです。

スケッチがうまくなる方法 その6「1000枚描く」
スポーツでは、練習を何度も繰り返すことにより上手くなれます。スケッチも同じで、1000枚描くつもりで繰り返し描き続けることにより確実に上達します。
1000枚描けと言われても気が遠くなることはありません。時間をかけて、描くプロセスを楽しみましょう。何事も楽しみながらやるのが上達のコツです。

参考文献:『『緑のプレゼンテクニック』(柳原寿夫&中橋文夫著/学芸出版社)

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2015年11月19日 (木)

プレゼンのスライドとなるスケッチの描き方  緑のプレゼンテクニック(2)

本ブログではプレゼンを何回か取り上げてきましたが(右欄INDEX参照)、ジョブズ氏や孫正義氏の回では、あまりスライドに頼らない方がよいと書きました。しかし、ケースによってはビジュアルが決定的な意味を持つことがあります。そうしたプレゼン資料の作成について、緑のプレゼンテクニックは多くの啓示を与えてくれます。

スケッチの基本 「すぐにペンを持たない」
スケッチを描く場合、すぐにペンを持つのではなく、常日ごろからの生活にスケッチがうまくなる基本的な行動、所作、信条などを、どれだけ取り入れられているかが課題です。何事も基本が大切で、やみくもにスケッチを描くのではなく、常に社会をみつめ、文化にふれ、人と交流することにより、スケッチを描くための基本的な知識とセンスが備わります。

スケッチを描く準備 その1「常日ごろから心がけること」
常日ごろから心がけることは、よい空間・人間とふれあうことです。庭園、公園、建築、名勝、古刹から風光明媚な景観、ならびに絵画、彫刻、工芸などにふれ、そして芸術家、デザイナー、エンジニア、学者、文筆作家などと交流を深め、語り合うことです。感性が磨かれ、知らぬ間にスケッチを描く勘所が身につきます。

スケッチを描く準備 その2「大地の眼差しを捉える」
スケッチを描く空間は、手つかずの原生的自然、里山の代表される二次的自然、造成された人工空間、そして草地が回復しつつある半自然空間と多様です。このような空間をスケッチする場合、大地の眼差しを注視しなければなりません。

潜在自然植生は何か? 陽射し、通風はどうか? 水脈はどうか? 土壌は植物に合っているか? 棲む生き物は何か? 10年後の周辺の土地利用はどうなるのか? 地域住民の年齢層は? こうした設計条件が大地の眼差しです。それを予想して素材を選び、生長、エイジング、場の使われ方などを考え、10年・20年・100年後の空間を描くのです。

スケッチを描く準備 その3「ニーズの把握」
スケッチのニーズは日々、高度化・多様化しています。社会動向はどうか、ファッションの変化はどうか、ベストセラーは何か。今日では環境問題が注目されています。何よりも大切なのは常にスケッチを学び、描くことを生業とするランドスケープアーキテクト、造園家の要望、そして利用者の声を聞くことです。

参考文献:『緑のプレゼンテクニック』(柳原寿夫&中橋文夫著/学芸出版社)

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2015年11月15日 (日)

「造園」と「ランドスケープスケッチ」の違い  緑のプレゼンテクニック(1)

ブログ筆者(山本)は地域活動の一環として、仲間と地域の清掃活動に取り組んでいます。そんな関係もあり、広尾の都立中央図書館に出かけた折、緑地はどのように管理されているのかを知りたいと思い、そちら方面のコーナーに出向いたところ、感動的な本(※)と出会うことができました。まずは、緑の空間設計の基礎知識から。

造園設計は、目の行き届く範囲で樹種などの区別ができる住宅や神社仏閣の庭園設計を原点としているそうです。造園空間を広く流域で捉えた場合、里山・田畑・森・川・池・道・公園などが対象で、面積は0.5haまでくらいになります。これらの設計を提案する技術が造園スケッチなのです。

一方のランドスケープスケッチは、わが国の造園事業において、国土交通省の国営公園を始めとした都市公園事業、都市整備機構(UR)の団地の園地事業、高速道路会社NEXCOの道路緑地事業などが柱となり、今日の発展につながっています。共通するのは0.3haから20ha程度と扱う面積が広いことです。

また、緑の基本計画などの法定計画では都市全体の鳥瞰図が求められるようになりました。そこには広々とした空間のプラン・デザイン力が求められ、スケールも公園・街並み・山並み・海などが一体化した都市レベルとなります。造園スケッチとは描くスケール・視点が違います。

参考文献の筆者によると、これからのスケッチでは、この二つの視点が求められるそうです。造園スケッチにおいては、単にアイレベルの完成予想図を描くばかりでなく、人間・空間・時間を的確に捉えた技術、すなわち、造園空間が成長するプロセスを理解した上での筆さばきが求められます。

大自然に抱かれた社寺、鑑賞主体の庭園、人工的な都市公園ではそれぞれの空間の位置づけ、コンセプト、管理形態が異なることから、タッチはおのずと異なります。ここを描き分けなければならないのです。一方、ランドスケープデザインでは、広々とした空間を描く場合、鳥になった気分で俯瞰するように描く技術が求められます。

●次回からブレゼンに関する具体的解説を紹介しますが、その前段として、どうしても造園とランドスケープの違いを伝える必要を感じたので、いつもの当ブログの展開とはいささか異なりますが、今回の「緑のプレゼンテクニック」のイントロとさせていただきました。次回以降の、これこそ正にブレゼンといえる内容にご期待ください。

参考文献:『『緑のプレゼンテクニック』(柳原寿夫&中橋文夫著/学芸出版社)

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2015年1月22日 (木)

5W1Hで「聴く力」 黒柳徹子さんのこと(5)

会話が進んで、さらに相手の事情を知りたい場合、有効な質問法があると『プレゼンテーションの技術※』の著者は書いています。「なるほど、で5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)」がそれです。「間」を外さず、「なるほど」「まさか」などの後に、5W1Hを状況に合わせて挿入すると会話がスムーズに進行します。

『徹子の部屋2』(黒柳徹子著)から、遠藤周作氏との対談でこれを扱っている場面を引用させていただきます(カッコ内およびアンダーラインは参考文献著者記入)。

徹子 でも、また『好奇心のかたまりだ』っていう本を出して…。
遠藤 ええ。ですから、何かがあると、すぐ飛んで行くんですよ。
徹子 面白そうなことがあると?(中略)

遠藤「だから高知で、たとえば少年たちが空飛ぶ円盤を拾ったっていうと、わたし、私費を出してでも飛んで行きますからね」
徹子「いらっしゃったんですか」(支持+明確化)
遠藤「はいはい。その少年たちに会いに」
徹子「で、どうでした?」
遠藤「彼らは拾って、風呂敷の中に入れて、バケツの中に入れてんですよね。20人くらいの少年たちと会いましたけど」
徹子「で、その、ものはごらんになりました?」
遠藤「いや、それが、風呂敷に入れて部屋ん中に置いとくと、忽然として消えることが3回」
徹子「(なるほど、で)それはかけら? それともそのものなんですか?」
遠藤「いや、ちっちゃな円盤ですよ、云々・・・・・」

なるほど、で+いつ? どこで? 誰が? 何を? なぜ? どのように? と短く投げかける言葉は、さらにその質問の回答を要求する作用をしているのがよくわかります。黒柳さんは感覚で使い分けていらっしゃるのでしょうが、参考文献の著者が指摘する通りの「質問法」を実践されているのが、本当にすごいですね。

※参考文献には 遠藤「だから高知で、…」からしか記載されておりませんでしたが、お話の輪郭を理解いただくために、ブログ筆者が上段の3行をつけ加えています。

※:『プレゼンテーション技術』(森田琢夫著/井上書院)

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2015年1月18日 (日)

小学1年生のトットちゃんが学んだ傾聴 黒柳徹子さんのこと(4)

お正月明けの8日に黒柳さんのことを書きはじめたら、その翌日の朝日新聞朝刊に彼女が大きく取り上げられました。そして前回の柏木由紀子さんの原稿を書き上げた翌日(10日)、今度は柏木さんが朝日夕刊に登場です。何か運命的なものを感じて、本当に久しぶりに『窓ぎわのトットちゃん』を読み返してみました。

対談楽しむ私はトットちゃん(2014年1月9日朝日朝刊「人間力を学ぶ」より)
人間は素晴しいもの、優しいものを持っている。それを引き出したい。「番組を見て嫌いだった俳優さんが好きになった」と聞くとうれしくなります。そもそも私自身がマイナスの多い人間でね。小学1年で退学になったような子ですから。(中略)転校先の旧制小学校「トモエ学園」で小林宗作校長に会わなければどうなっていたか。

小林先生にはとにかく話を聞いていただきました。初対面の日なんて4時間ですよ! 6歳のとりとめのないおしゃべりを、よく聞いて下さったと思います。(中略)だから私、校長先生に「見てください」と言いたいんです。「あなたに教育を受けた私は今、人の話を聞いていますよ。あんなに人の話を聞かなかった私が」って。

参考までに、トットちゃんの退学理由は…(『窓ぎわのトットちゃん※』より)
ママはトットちゃんの担任の先生に呼ばれて、はっきり、こういわれた。
「おたくのお嬢さんがいると、クラス中の迷惑になります。よその学校にお連れください!」。若くて美しい女の先生は、ため息をつきながら、繰り返した。
「本当に困っているんです!」

「まず、授業中に、机のフタを、百ぺんくらい、開けたり閉めたりするんです。そこで私が、『用事がないのに、開けたり閉めたりしてはいけません』と申しますと、おたくのお嬢さんは、ノートから、筆箱、教科書、全部を机の中にしまって、ひとつひとつ取り出すんです。たとえば書き取りをすると、「ア」だけ書いて鉛筆をしまい…。

「よく注意しますから」とママは言った。ところが、先生は、それまでの調子より声をもう少し高くして、こういった。「それだけなら、よろしいんですけど!」
「机で音を立てないな、と思うと、今度は、授業中、教室の窓のところ立っているんです。ずーっと! それもチンドン屋さんを呼ぶ込むために」

昨日は、窓ぎわで大きな声でいきなり「ねえ、なにしているの?」を続ける。誰に話しかけているかと思えば、教室の屋根の下に巣をつくっているつばめにですよ!」
それから、こんなことも・・・と続くのでした。トットちゃんケタ外れの凄さですね。
(注)スペースの関係で短くまとめていることを、お断りいたします。

※:『窓ぎわのトツトチャン』(黒柳徹子著/講談社)

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2015年1月15日 (木)

“相づち”“沈黙”による「聴く力」 黒柳徹子さんのこと(3)

本ブログは“相づち”について幾度となく取り上げています。2010年11月13日の「相づちは魔法のツール」(5例)と、2014年11月9日の「察しの文化(5)」(10例)が代表例でしょうか。それほどコミュニケーションの場で大切な“相づち”や“沈黙”を、見事なまでに使いこなす黒柳さんの対話力の神髄に少し触れてみます。

人望のある人の共通点は“相づち”の打ち方がうまい!(※1)
話し方の本には「ここで相づちを打つと話がはずむ」などと書いてあったりしますが、相づちのタイミングばかり計っていると、相手の話はしっかり聞けません。本当の相づちはおのずと出るものです。聞き上手になるための第一は、本当の相づちが打てるように熱心に聞くことです。それはまた人望のある人の共通点ではないでしょうか。

トーク番組「徹子の部屋」で黒柳さんはしばしばこんな声をはさみます
「ほおー」「まぁー」「そぉー」長く引く感嘆調の相づちを惜しまないので、ゲストは気をよくして大いにしゃべります。一般的な相づちに「ふんふん、わかった」という感じのものがありますが、人望のある人の場合は黒柳さんのように息を引く「ふうーん」と相手の言葉を受け入れている感じがともないます。

「なるほど」「たしかに」「…ですね」などのような『わかった』という相づちも悪くないのですが、上出の「ほおー」「まぁー」「そぉー」のような『わかるような気がします』と言う方が、「あなたの話をちゃんと聞いていますよ」というメッセージを含むことになるのではないでしょうか。

坂本九氏未亡人・柏木由紀子さんが事故の10年後「徹子の部屋」で語ったこと(※2)
「上を向いて歩こう」のヒットで知られる坂本九氏が日航機墜落事故で亡くなったとき、柏木さんはつらくてつらくて、この気持ちを誰かに話したくてしょうがなくなり、時もわきまえずに真夜中に電話しました。闇の中を虚しく響くベルの音、受話器を置こうとした矢先、「もしもし」と優しい声で答えてくれたのが黒柳徹子さんでした。

堰を切ったように今の思いを何時間も話しました。このとき徹子さんは、ただ「ウンウンわかるワ」といってずっとただ聞いてくれたそうです。
柏木さんは、「あの時私はどれだけ救われたことか」と、熱い涙でお礼を述べていました。聞いてあげることは、簡単なようでとても難しいことなのです。

(※1):『なぜあの人は人望を集めるのか』
(※2):『笑いの研究』(井上宏&織田正吉&昇幹夫共著/日本実業出版)

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2015年1月11日 (日)

謙虚さによる「知識を吸収する力」 黒柳徹子さんのこと(2)

以前観たことのある『世界ふしぎ発見!』では、黒柳さんの正解率が際立っていました。あまりの博学ぶりに、事前に問題をご存じではないかと錯覚するほどでした。しかし、番組をゼロから立ち上げたプロデューサー的役割と司会者を兼ねた草野仁氏の『話す力』を読んで、その理由がよくわかりました。

草野氏は、『世界ふしぎ発見!』のレギュラーにユニークな人をと考えた
草野氏は、番組の目玉になるレギュラーには、他のクイズ番組には出ていないユニークな方を据えたいと考えていました。調べてみると、信じられないくらい思いがけない人が候補に挙がったのです。それが黒柳さんでした。軽妙洒脱、当意即妙、どう見てもクイズ番組にはぴったりと思われるキャラクターなのになぜ?

黒柳さんがクイズ番組に出なかった理由
黒柳さんは「これまでさまざまな活動をしてきたが、歴史や地理などの知識が薄い分野もある。それが露見すると恥ずかしいからクイズ番組には出ないと決めている」とのことでした。ご本人にとって言いづらいであろうこの理由を語らせたのは、草野氏の著書のタイトルの通り「話す力」があったのと、そのお人柄なのでしょう。

草野氏の粘り強い交渉の結果“光明”が・・・
再交渉に訪れた草野氏に、黒柳さんはこんな言葉で語りかけました。「あれから1週間、自分がこれまで蓄えてきた知識について検証してみました。その結果、『このまま黒柳徹子という人間の人生を終わらせてはいけない。勉強するいいチャンスだ』との結論に達した」と。しかし、番組に出演するにはひとつだけ条件があるとも・・・。

「1週間前にテーマを教えてほしい」
その条件とは。「1週間前に次の収録のテーマを教えてほしい」ということでした。質の高い真面目な番組を構想していただけに想定外の申し出でしたが、草野氏は番組関係者と相談しました。その結果出演者全員に、収録1週間前に「古代ヨーロッパ」などの次回の大まかなテーマを伝えるようにすることで問題を解決しました。

断トツ正解率の背景にある圧倒的な読書量(1週間で16冊のときも)
以来、黒柳さんは1週間前にテーマを伝えられると、図書館で資料を探し、あるいは事務所のスタッフに頼んで書店で関連本を探してもらったりして、平均して毎週5、6冊の本を読んだそうです。「音楽家をテーマにします」と伝えられたときには、1週間に16冊もモーツアルト関連の本を読んだといいます。

参考文献:『話す力』(草野仁著/小学館)

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2015年1月 8日 (木)

豊かな感性による「話を紡ぐ力」  黒柳徹子さんのこと(1)

時間が不規則な仕事柄あまりTVを見ることがないので、紅白歌合戦で久し振りに黒柳徹子さんを拝見しました。人の心を掴んで外さないあの当意即妙さは、研修講師の多いなる研究テーマでもあります。そこで今回から、これまでピックアップしておいた材料から黒柳徹子さんのパフォーマンス力の源泉に迫ってみたいと思います。

草野仁さんが『世界ふしぎ発見!』のイントロケで、ニューデリーからタージマハルまで片道5時間半ほどバスに乗ったとき、彼の1列前に黒柳さんが座わっていました。彼女はその間、隣の付き人の女性を相手にずっと話しをしていました。その内容は、まるで連想ゲームのように、縦横無尽だったそうです。

日本から持参したおまんじゅうをほお張りながら
「やっぱり、おまんじゅうは絶対、粒あんね」
あんこは、十勝でとれた小豆が最高ね……」
十勝といえば、あそこは梅雨がなくて緯度が高いから、日照時間の長さが全国でもトップクラスなんですって。(中略)そのうち十勝は日本の食糧供給基地に……」

十勝って帯広が中心だけど、帯広っていえば、なんたって豚丼よね……」
帯広っていえば、池田町のワインも有名よね。私はアルコールはダメだけど……」
池田町で思い出したけど、冬のオリンピックで話題になったカーリング。池田町って日本のカーリング発祥の地らしいわよ……」(*これには諸説あり:山本注)

「氷っていえば、冬に池田町に行ったとき、近くに然別湖っていう湖があって、凍結した湖の上に氷上露天温泉がつくられていたの。私は入れなかったけど……」
然別湖には熱気球があってそれに乗ったの。ロープで何十mの高さに固定してあるんだけど、そこから見た広大な景色、素晴らしかったのよ……」(延々と続く)

●読者はすでにお気づきと思いますが、黒柳さんのお話のすべてが、前のお話のなかに出てくる固有名詞(太字)から始まる話題でつながっています。一箇所だけ「カーリング」から「氷っていえば」に飛躍しますが、イメージは完全につながっています。ここは同じ池田町の話題なので端折ったのかもしれませんね。

●物語がプレゼンテーションでは大事です。データ中心のプレゼンは、その場では説得力を持ちますが記憶には残りづらいからです。その点、私たちが子どもの頃に読んだおとぎ話や童話はいつまでも記憶から失われることはありません。プレゼンに役立つ物語の紡ぎ方のヒントが、黒柳さんのおしゃべりの中にあるように思われます。

参考文献:『話す力』(草野仁著/小学館)

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