電話応対研修

2010年3月27日 (土)

イチロー選手の心構え②「準備を怠らない」

電話応対研修の必須項目に「事前準備」があります。経験の浅いスタッフにとっては、努力すればできる最大の自助活動といえるでしょう。そして、これができているかいないかで、応対のクオリティは大きく変わります。プロ中のプロといわれ、完璧な準備を心掛けるといわれるイチロー選手の「準備に対する考え方と姿勢」を学ぶことにより、その重要性を再確認してみたいと思います。
※文中「プレー」と「プレイ」の異なる表現が出てまいりますが、出典が異なるため、原文尊重で、そのまま掲載しております。

『夢をつかむイチロー262のメッセージ』より 準備について
ハイレベルのスピードでプレイするために、
僕は絶えず体と心の準備はしています。
自分にとっていちばん大切なことは、試合前に完璧な準備をすることです。
【2002年、準備について尋ねられたときの言葉】

やれることはすべてやったし、手を抜いたことは一度もありません。
常にやれることをやろうとした自分がいたこと、
それに対して準備ができた自分がいたことを、誇りに思っています。
【2002年9月、200本安打を達成したあとの言葉】

イチロー選手の食事に対する徹底した姿勢
「レストランで注文を取りに来る前に出される水は飲まない。しっかりしたシェフがいないと判断した店では生ものは口にしない。それなのに、1999年春、オリックスのコーチ2人(星野伸之&佐藤義則)とのマリナーズ体験キャンプ中にスペアリブで食あたりした。弘法にも筆の誤り、とはまさにこのことだった。」『イチローの流儀』より。

イチロー選手の同僚は「あいつを見ているだけで疲れてくるよ」と
「イチローは試合に臨むに当たって、現在でも、もっともよく練習し、準備する選手です。本拠地のシアトルのセーフコ球場で試合が行われるときは、試合開始の約6時間前に動き始めるようです。
ランニング、柔軟体操、ストレッチを行い、ウェイトリフティング、マッサージ、チームとの合同練習、室内練習場での打ち込み、そして、対戦相手チームのプレーをビデオで見ます。同僚は『あいつを見ているだけで疲れてくるよ』と評しています。」『イチローの脳を科学する』より。

このイチロー選手の周到な準備は家庭教育の賜物ともいわれています。父親の宣之氏によれば「次の試合会場となる球場にはほとんどイチローと二人で下見に行っていた」そうです。そうした習慣が
「常に、先のことを予測する習慣をつけることは、大事だと思います。その習慣が、一瞬の大事なときに生きます。ムダになることもたくさんありますし、自分が絡んでいないプレイでたくさんの予測をしているとすごく疲れるのですが、自分が疲れるからといって投げだしてしまっていてはプレヤーとしての能力を止めてしまいます」という本人の言葉に昇華しているのではないでしょうか。

最後は、イチロー選手がまだオリックス所属の10年以上も前の話です。「合宿所でも、メジャーリーグ仕様の一回り大きなボールでキャッチボールをして、来るべき日に備えていた。
ある年のオープン戦で、イチローが明らかなボール球を打ちにいくので、不思議に思って聞いてみたところ、『僕にとってはストライクなんですよ』という答えが返ってきた。『向こうではあのコースはストライクです』と。
イチローはストライクゾーンをアメリカ式に広げて、日本ではボールと判定されるところまでも打ちにいく練習を、実戦形式の中で練習していたのだ。」と、『遙かなイチロー』という本の中に書いてありました。
お見事! 感服! です。私も、今からでは遅いかもしれませんが、少しは心を入れ替えて、次回以降に取り組まねばと・・・。

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2010年3月20日 (土)

イチロー選手の心構え①「道具を大切にする」

~聴くStory~音声版はこちら

電話応対研修の際、冒頭に「電話機の扱いを丁寧にしましょう」と語りかけるようにしています。社会人として当たり前のことですので、みなさん納得顔で聞いてくださいますが、どちらかというと「そんなこと、今さら言われなくても、わかっています!」の印象が大半でした。ところが、先月の研修でイチロー選手の道具の取り扱い方を例にとり解説したところ、これまでとは明らかに違う肯定的な反応が見られました。テーマに合致した「エピソード」が、いかに聴く側の“共感” を呼ぶかを体験しましたので、今回は、そのお話を紹介いたします。

見習いたいイチロー選手の道具に対する思い
「道具を大事にする気持は野球がうまくなりたい気持ちに通じる」とイチローは言った。丹念にグラブを磨くことで、一つひとつの自分のプレーにかける思いは強まり、道具作りにかかわった人たちへ感謝の念が湧いた。」『イチローの流儀』より。
続いては、『夢をつかむイチロー262のメッセージ』より
「手入れしたグラブで練習したことは、体に、かならず残ります。記憶が体に残ってゆきます。」2003年のシーズン終了後の言葉。

バットメーカー製造担当者にイチローから謝罪メッセージ
「あれだけのバットを作ってもらって打てなかったら自分の責任ですよ」とイチローは語る。実は1996年7月6日、近鉄戦で左腕小池秀郎に三振を喫して思わずバットを叩きつけたことが一度ある。その後、我に返って久保田(後出)宛に謝罪のメッセージを送っていた。
『何人かの選手から、自分の手掛けたバットについてお礼を言われたことは過去にもありました。でも、バットへの行為そのものを謝罪されたのはあの一度だけですね』と伝説的なバット職人は語った。道具に対する意識の高さはイチロー流準備の特徴だった。

名工を感激させたイチロー流のバット取扱い
「そんなプレミアムバットを1995年頃から特性のジュラルミンケースに入れて持ち歩いている。ケース内には乾燥剤を入れるポケットがあり、湿気による重量増を防いでいる。この特殊ケースを使い始めるまでは、晴れた日にバックネットで天日干ししていた。
2004年、マリナーズのアリゾナキャンプを訪れた久保田五十一(いそかず、ミズノテックス所属で、イチローのバットの製作者。2003年11月、厚生労働省認定の現代の名工100人に選出。2005年黄綬褒章受章)には印象的なシーンがある。フリー打撃を終えた選手たちがそれぞれのバットを芝生の上に平気で放り投げる中、イチローだけがバットをグラブでそっと包み、まるで眠った赤ん坊をベットに横たえるように置いていた。」本文および本文上段ともに『イチローの流儀』より。

イチロー選手は、試合後ロッカーに向かって座り、アンダーシャツのまま、「一日の反省はグラブを磨きながら、昨日試合後に何を食べたか、よく眠れたのか、というところから、実際にゲームが終わるまでに起こったすべてのことをよく振り返って考えてみる」のだそうです。そして、黙考が終わるとグラブを丹念に磨き直し、小さな棒器具を使って足裏をマッサージした後にシャワーに向かうとのこと。

反省しながらクラブを手入れし(実は、試合前にも入念に磨くそうです)、明日以降の準備に取り掛かる。常に準備万全といわれるイチロー選手の一面が垣間見られるシーンですね。そのシーンの中に食事の話がありましたので、次回は、そんなお話をまじえながら、ナイスプレーの原動力といわれる「準備についての心構え」に迫ります。

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2010年2月27日 (土)

プロとして、ハートで語る②電話応対研修での〈石川遼選手と語りのプロのこと〉

前回、『プレゼンテーションの教科書』(脇山真治著・日経BP刊)をもとに、石川遼選手の話すスピードが1分間に365カナ文字と書きました。ある意味、コール(コンタクト・カスタマー)センターの電話応対者も語りのプロ(現実的にはセミプロクラスが多いかも)といえます。コミュニケーション研修で参考にさせていただいた同著書の中から、大変興味深い資料を紹介いたします。

NHKのアナウンサーは1分間に350~400文字
この数字は、日本語音声分析の権威のお見立てですが、人が一分間に話す速さは下記事例のようにさまざまです。ニュースについてはその性格から多少テンポを速くするといわれていますが、ニュース番組を担当する下記アナウンサーはいずれも500~600(かな)文字で、ズバリその通りの結果が出ています。また、民放のアナウンサーは、相対的にNHKのアナウンサーより話すのが早いといわれてきましたが、その傾向もはっきり出ていて面白いですね。

1分間の発話のスピード比較(かな換算)
阿部渉(アナウンサー)文字数492 おはよう日本(NHK)09/6/30~ 
畑山智之(アナウンサー)文字数510 週刊ニュース(NHK)06/4/29~
武田真一(アナウンサー)文字数490 ニュース7(NHK)09/6/29~
石川遼(プロゴルファー)文字数365 全英オープン前インタビュー09/6/30
上沼恵美子(タレント)文字数788 おしゃべりクッキング(テレビ朝日)09/6/29~
東国原英夫(宮崎県知事)文字数762 日本青年会議所スピーチ(延岡市)09/6/28
古舘伊知朗(キャスター)文字数524 報道ステーション(テレビ朝日)06/4/27~
小宮悦子(キャスター)文字数585 ニュースJチャン(テレビ朝日)06/4/27~
細木数子(占い師)文字数233 幸せってなんだっけ(フジテレビ)06/4/21~
三宅正治(アナウンサー)文字数637 すぽると(フジテレビ)06/4/25~
二宮清純(スポーツライター)文字数628 サンデープロジェクト(テレビ朝日)06/4/23~
須田慎一郎(ジャーナリスト)文字数622 サンデープロジェクト(テレビ朝日)09/6/29-11:00~
※久米宏(キャスター)文字数580 ニュースステーション(テレビ朝日)04/3/12~
『プレゼンテーションの教科書』より。(※)久米宏さんについては、同書の文中より山本追記。

上沼恵美子さんは細木数子さんのほぼ3倍!
上の一覧でスピードが一番早いのは、上沼恵美子さんの788(カナ)文字です(やっぱり)。これは細木数子さんのほぼ3倍です(何となく納得)。私が同書の文中より追記した最後の久米宏さんについて、著者は「彼は原稿を忠実に読むだけでなく、アドリブや『えー』『あー』など、つなぎの言葉を挿入するので、数字に表れる速さをさほど感じさせない心地よさがある。報道は雰囲気よりもむしろことばと内容の正確さを要する番組だが、多くの視聴者がこのスピードを許容していると考えられる。」と述べていらっしゃいます。久米さんの実際の語りのスピードは、上記アナウンサーより格段に早かったのでしょうね。

では、ジャパネットたかたの高田社長は何文字?
ここには登場しませんが、現代のスーパー語り手ともいえるジャパネットたかたの高田社長は537(かな)文字(『ジャパネットたかた…』より)だそうです。古舘さんと同じくらいですね。ちなみに、これは振り込め詐欺とほぼ同じスピードと、前出の鈴木氏が「一般の人にわかりやすいように」との断わりを入れて述べていらっしゃいます。古今東西、悪事を働く人は、相当に勉強熱心のようですから、よほど注意しないと騙されてしまうかもしれません。大いに用心いたしましょう。

電話応対では、話すスピードが大事なポイントとなります。最初の15秒(真実の瞬間といわれる)や、双方で理解し合えている事柄についてはアナウンサーがニュースを読む(伝える)程度のスピード感があった方が、聞き手には心地よいでしょう。そして、肝心な商品紹介や、状況説明のシーンでは、石川遼選手のマスコミに対する語り口(1分間に350~400かな文字くらい)が安心感を与えるように思います。

話し方は、上の一覧にもある通り、キャラクターが出ますので、一概にどのスピードがベターかは判断しかねますが、自身の言葉の歯切れなどを考慮し、標準から大きくずれない範囲で自分の形を確立していただければと思います。さて、次回は、スポーツから学んだ別のお話から「プロとして、ハートで語る」を考えてみたいと思います。

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2010年1月16日 (土)

プロとして、ハートで語る①

さて、今回は前回予告の通り、“プロとして”の話し方と、“ハートで語る”を、プロ中のプロで講談師という伝統話芸の達人・一龍斎貞水(いちりゅうさい・ていすい)氏の著書『心を揺さぶる語り方 人間国宝に話術を学ぶ』(日本放送出版協会刊)から、7章構成のタイトルの中より4つ選んでご紹介いたします。

「表現力」を高める準備と工夫
本当にその人の心から出ている言葉には、
直接的に相手の心を動かす力があります。
それに近いものを
自分の中に養うことが大事です。

どんな「心」に向けて語るか
人の心が動くのは、
詳しく説明されたときとは限りません。
共感したり、自分で考えたり、
我が身に置き換えて想像したりしたときです。

「花鳥風月」と「心」の色合い
心にも色合いというものがあると思います。
多彩な絵の具や繊細な筆のような言葉を
たくさん持っていることが、
その色合いに気づく心の繊細さを育てます。

話術を上達させる近道
現場で役立つ話術は、現場でしか学べません。
それをいかに集中して見て「盗む」か。
その真剣さによって、
上達の早さが違ってくると思います。

私がこの本に魅かれたのは「心を揺さぶる語り方」というタイトルでした。講談は漫才や落語よりはなじみが薄いと思いますし、実のところ私もよく知りません。しかし、読み進んでまいりますと、忠臣蔵にまつわる話や松下幸之助氏のパナソニック(旧松下電器)創業前の苦労談など、話術以外にも興味深いお話が盛りだくさん。そして、今回是非とも取り上げさせていただこうと思ったのは、「話術には『人を思いやる心』が重要」と書かれていたからでした。
著者はこの他に、

詰め込み過ぎ、先を急ぎすぎではいけません。
「間」がなさすぎる話では、
お客様が心を動かされる暇もありません。

とも書かれていますが、この辺りは、【話術を上達させる近道】で取り上げた「現場で役立つ話術は、現場でしか学べません」と同じく、丸々コール(コンタクト・カスタマー)センターの電話応対に当てはまる内容ですね。話術のプロから学びつつ、コールセンターのオペレーター(TSR・エージェント)が、プロでなければ通用しない時代の“良き教材”と思いご紹介いたしました。

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2009年12月26日 (土)

なるべく使いたくない否定・非難・批判語(3)

皆さんのコール(コンタクト・カスタマー)センターにも、きっと色々な「無理」や「難題」を持ち込まれるお客さまがいらっしゃることでしょう。応対者側の常識からすると「嘘だろ」「考えられない」「よく、そんなこと言うよね」等々。なかには、笑ってしまうような〝奇想天外〟なできごともあろうかと。
今回は、前回予告の以下の「英文」解釈から始めます。

欧米のコールセンターでは「お客様はいつも正しい」!?
「お客様はいつも正しい」の英文は「CUSTOMER IS ALWAYS RIGHT」です。テレマーケティング協会のスタッフ研修で活躍中の後藤啓子さんの著書『すごい!電話術』には、「これは相手の話の内容が正しいという意味ではなく、『お客様がそう思っていることが正しい』ということを意味します。」と解説しています。

『すごい!電話術』より「相手の話に共感、受容する」
相手はわざと間違ったことを言っているのではなく、勘違いや今までの経験、ちょっとした行き違いで「そのように思っている」ということです。「お客様は間違っている」という思い込みからスタートすると、「そうではありません」という会話になりますが、「お客様がそう思っていることは正しい」と考えれば、「なぜそのように考えたのだろうか」という気持ちになり、「もっと相手の話を聞こう」という会話になるはずです。この会話が相手の話に共感や受容を表現することになります。

「相手の話を否定、拒否、批判しない」
引き続き『すごい!電話術』より。
「お客様がそう思っていることが正しい」と考えることで、頭から相手を否定したり、拒否することがなくなります。ただし、相手の内容が間違っていることは訂正しておかなくてはなりません。「商品の使い方がわからないのですが」という問い合わせに、「説明書に書いてありますけど」と伝えると、「なぜ説明書を読まないのか」と批判されているように相手は取ってしまいます。「はい、商品の使い方ですね。それでは説明いたします。今お手元に説明書はございますか」と手元で説明書を見てもらいながら、快く説明しましょう。

必ず「YES & BUT 方式」で応対しましょう
まったく見当違いのことを言われたときに、「それは違います」「できません」と言いたいところですが、そこはぐっと言葉を飲み込んで、とにかく「そうですか~」「そうですね~」と相手の話を聴くようにしましょう。そして、ある程度話を聴いてから、「大変申し訳ございませんが、私どもとしましては・・・」と切り返します。

繰り返し説明する場合は、異なった表現を心掛ける
「ですから」「だから」「なので」「何度も申しあげておりますが」
何度言ってもお客さまにご理解いただけない場合、このような言葉がつい口から出ていませんか? 同じことを繰り返し説明する場合は、言葉を変える必要がありますし、かみくだいた優しい言葉を選んで話す工夫もしてみてください。

前々回、山本志のぶ「木の葉」ブログ が50回となり、私の思い入れから、少々長めのシリーズで3回書いてまいりました「なるべく使いたくない否定・非難・批判語」を今回で終了します。専門用語が飛び交い、読みづらいところがあったと思いますが、お付き合いありがとうございました。次回から正常ベースに戻すとともに、年が改まったところで、新しい分野への取り組みにもチャレンジしたいと思っております。
新年もどうぞよろしくお願いいたします。

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2009年12月19日 (土)

なるべく使いたくない否定・非難・批判語(2)

今回も、区切りの50回の続きです。あるビジネスセミナーで、アイデアの発想法について質問を受けたことがあります。その際、有力な手法としてA・F・オズボーンが考案したブレーン・ストーミングを簡単に紹介しました。実際にこの手法を使ったことはなくても、名称はご存知の方も多いと思います。

アイデアを生む集団活動の場での否定・非難・批判を考える
ブレーン・ストーミング法(以下BS法)は5~8名(8~15名などいろいろな説あり)のメンバーで行う集団技法です。ちなみにBSという名前は、脳(ブレイン)から発想する対象に向かって強襲する(ストーミング)ことに由来するそうです(これを「精神に異常をきたした患者さんの錯乱状態における発作」の意と解説した本もありますが・・・)。

BS法には議論を進める上で4つの規則があります。1つ目は、とにかくたくさんのアイデアを出すことが大切との観点から「アイデアの質の良し悪しを問わない」。2つ目は、感情を抑圧しないために「人の発言を決して批判しない」。3つ目は、先入観や固定概念にとらわれない「自由な発想をする」。そして4つ目は、メンバーから出てきたアイデアを結び付けたり、アイデアそのものを練り上げる「結合改善を図る」。

この4つの中でもっとも重要視されるのが2つ目の「人の発言を決して批判しない」です。人の脳には、批判されると効率が一気に鈍る傾向があるそうで、普段から自分でも気づいていない潜在したアイデアを、各人から引き出すことを目的にしたBSでは最大の障害になります。

BS法のような利害関係を伴わない集団活動でも、ひとたび発言を批判されると、思うようにアイデアを出すことができなくなってしまいます。これが、対面、もしくは電話での会話であれば、批判を受けた側のダメージは想像をはるかに超えたものになるでしょう。

そして、私たちがさらに理解すべきことは、この手法がビジネスの場はもちろんのこと、日常会話でも「YES」「NO」のはっきりしたアメリカで開発されたということです。否定・非難・批判に慣れているであろう、彼の国の人々に対しての必須ルールなのだということです。

最近出版された塩澤実信著『ベストセラーの風景』(展望社刊)に石原慎太郎氏と盛田昭夫氏との対談『「NO]といえる日本』(光文社刊)のことが書かれていました。この本はバブル経済に浮かれる時期に出版された「日米関係」に関する警告の書だったそうです(なんか、現在にも当てはまりそうな内容ですね)。

その中に、盛田氏のこのような発言があるそうです。
「・・・・日本人というのは儒教の影響でしょうか、人間関係の中で『ノー』ということをはっきり言いにくいバックグラウンドがあります。
上下の序列関係等縦の線では、下は上に『ノー』と言うことが失礼にあたると考える。上も下の『ノー』を生意気と捉えるような雰囲気がまだ根強く、身分制度の残滓(ざんし)のように存在します・・・」。

世界を股にかけた(一年の三分の一は米国にいらっしゃたそうです)偉大な経済人の言葉には説得力がありますね。そして、改めて電話応対での〈否定・非難・批判〉の重さを感じさせられました。

テレマーケティングの先進国(主に欧米)のコールセンターでは「お客様はいつもに正しい(CUSTOMER IS ALWAYS RIGHT)」という言葉がよく語られます(次回で詳述)。
日本でも似たようなニュアンスの言葉を聞くことがありますね。すでに亡くなって久しいかつての大物歌手が「お客様は神様です!」と舞台で見得を切りました。最近では、渡辺謙・樋口可南子共演で映画になった『明日の記憶』の作者でもある荻原浩著『神様からひと言』の中に出てきました。
食品メーカーの〝お客様相談室〟をメイン舞台とした興味深い作品(2006年にTV放映)ですが、この会社の社訓が何と「お客様の声は、神様のひと言」でした。
日米欧、共通して「お客様は神様」のようですので、敵(かな)わないのは当然です。どうか皆さんも、どんなひどいことを言われても、神様(お客さま)に逆らわないように、これからも電話応対頑張ってくださいね。

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2009年12月12日 (土)

なるべく使いたくない否定・非難・批判語(1)

おかげさまで、研修講師として独立半年後(2008年12月)から始めた“山本志のぶ「木の葉ブログ」”が、今回で50回目となりました。この間の研修講師としての活動を振り返りながら、私にとっては記念碑的なこの回を、少し趣向を変えて書きたいと思います。よろしくお付き合いください。

コーチングの観点から否定・非難・批判を考える
最近、官庁の役職者を対象にしたコーチングの研修を担当させていただきました。その際、部下指導時のコミュニケーションの場面で語った、「対立のコミュニケーション」と今回のテーマが共通するように思いますので、少し解説してみます。

たとえば、相手の言っていることに〈賛成か、反対か〉の意思を示すシーンを考えてみましょう。どちらの立場をとるにせよ、その行為そのものが自身の判断を下していることになります。

この場合、賛成であれば問題はなさそうですが、それでも独自に判断(相手を評価)したことで対立の構図は生まれてしまいます。ましてや、反対の立場でアドバイスするとなると、その根拠を示さなければならず、それは相手の立場を否定するメッセージとなります。自分が信じられていないと感知した瞬間、相手の心は閉ざされてしまいますので、その後は、思うようなコミュニケーションをとることができなくなってしまうのです。

専門家の言葉を借りれば「私たちは〈自分と違う選択や考え〉を、無意識で〈間違っている〉〈悪い〉〈不十分〉と傷つけようとします。そんなとき自分の内側の〈発信〉に意識が向かいがちになり、対立のコミュニケーションをするのです。」

この「対立のコミュニケーション」の結果を、相手は自分が〈否定された〉〈非難された〉〈批判された〉と受け止めます。電話応対の基本は、お客様の申し出を伺う立場です。コーチングにあてはめれば、いささか大仰な物言いになりますが、応対者側がお客様のホンネを引き出すコーチの役割となります。となれば、努めて「対立のコミュニケーション」は避けなければなりません。そうならないためには、傾聴のスキルを身につける必要があります。

カウンセリングの観点から否定・非難・批判を考える
伸び盛りの中堅企業の風土調査の依頼があった時のことです。職場が暗いことの原因が、どうも上下間のコミュニケーション不足と判断し、直属の上司に部下の評価を確認してみました。ところが、驚いたことに、まったく部下を評価していなかったのです(一般的には、仕事のできる方、ご自身に自信のある方に多い傾向)。

そこで、再評価のために個人面談をお願いし、その際、留意いただきたいことは ①部下の立場を尊重し対等の立場で(受容)、 ②部下の話を途中で遮らず全部聞く(傾聴)、 ③ただ聞くのではなく、部下の〈立場・気持ち〉になって聴く(共感)。 そして、④意見やアドバイスは必ずその3つを実践してからにする。の4点でした。
実は、①~③はC・Rロジャースのカウンセリング手法からの応用です。彼は、
カウンセリングの3原則を【受容】【共感】【自己一致】としています。概略は以下。
【受容】相手の言うことを批判的な態度ではなく、先入観にとらわれずに受け入れること
【共感】あたかも相手の立場になって自分が感じるように相手の感情や苦しみを感じること
【自己一致】あるべき自分と現在の自分の差がない状態にあろうとすること

上記3原則以外に、C・R・ロジャースの著書によく出てくる言葉に【傾聴】があります。3原則の最初の二つ【受容】【共感】と、【傾聴】、このカウンセリングのキーワドを並べてみて思いつくのは、電話応対、特にクレーム応対時に求められる応対者の基本姿勢と全く同じだということです。
前の「コーチングの観点から否定・非難・批判を考える」で、電話応対者は“コーチする側の立場”に近いと書きましたが、クレーム応対時の応対者には“カウンセラーとしての立場”が求められている、ということになりそうですね。

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2009年12月 5日 (土)

文末表現を崩さない・語尾伸び(3)

前回〈で止め〉〈も止め〉〈が止め〉の「途中止め」について書きましたが、これに関連して、第31回 「電話応対技術編」“馴れ馴れしい言葉”で触れた語尾伸び(※)が、〈で止め〉〈も止め〉〈が止め〉と組み合わされて使われると、聞き手にさらに悪い印象を与えることになりますので、簡単に解説します。
※根本的に改めなければいけないのは語尾伸び「~まーす」でしょう。これは失礼を通り越して軽薄な印象を与えてしまいます。

語尾伸び、言葉不足は相手に突っ込まれやすい
「~ですがー、」「~ですけどもー、」と文章がまだ続くかのような語尾伸びの後、読点〈、〉で終わらせる話し癖の人がかなりいます。場合によっては“馴れ馴れしく”も聞こえ、間延びした感じで絞まりがありません。この話し癖のある人は、その後に続く言葉が不足しているため、相手に突っ込まれやすい傾向があります。

担当者が外出で20分後に戻ってくる場合の応対事例
応対者「申し訳ございません、担当の○○は外出しておりますがー、」ですと、
お客様「急ぐんだけど、連絡取ってくれる」などと切り返され、依頼を受けてしまうことになりかねません。20分後ですから、説明次第で担当者からの「折テル」で了解いただける場合でも、改めて連絡を入れる手間が一つ増えてしまいます。

きちんと状況説明すればご納得いただけるケースは多い
応対者「申し訳ございません、担当の○○は外出しておりますが、30分後には戻ってまいります。戻り次第ご連絡させていただきますが、いかがでしょうか?」と明確に言えば、お客様「まぁ20分なら、いいか」となり、
お客様「はい、ではお願いします」で収まるケースも多いでしょう。
 
〈が止め〉と〈語尾伸び〉で言い訳に聞こえてしまうことが・・・
「~だと思うんですがー、」「~のようなんですがー、」
コール(コンタクト・カスタマー)センターの研修の場では、さすがにこのような表現をする人はほとんどいませんが、実際の電話応対をモニタリングしてみると、長い会話の最後の方や、難しい局面で結構つぶやかれているようです。

クレーム応対の鉄則「言い訳や責任逃れをしない」
「謝罪する」「迅速に対応する」「たらい回しをしない」などのクレーム対応の中でもこの鉄則は、相手が信頼できるかどうかの“判断基準の最上位”にランクされているのではないでしょうか。応対者に「言い訳」や、それに類する気持ちがなかったとしても、お客様にそのように受け止められるリスクは高いといえます。

電話では、こちらの思いと相手の思いが違ったとき、大変苦労することがあります。出来る限り、最後の提案まできちんと話す癖をつけましょう。その際、文章で話すフィーリングを大切にすると、丁寧さが出てきて好感度が増します。皆さんもワンランク上の電話応対を目指して、文章イメージを強化してください。

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2009年11月28日 (土)

文末表現を崩さない・途中止め(2)

前回は、「途中止め」の〈体言止め〉を取り上げましたが、今回は〈で止め〉「~ですので」、〈が止め〉「~なんですが」、〈も止め〉「~なんですけども」についてです。最後を省略するこの文末のゆるみは、その続きを相手に振ったようにも受け止められたり、会話が途切れるばかりか心証を害することにもなります。

最後まで言わずに「途中で終わらせてしまう」〈で止め〉
「~ということで」の例で、〈です〉〈ます〉を考えてみましょう。これは
→「~ということですね」または
「~ということでございますね」と言うと数段丁寧になります。また、お聞きした内容の「確認」の意味が含まれるので、行き違いを防ぐこともできます。

清水義範著『大人のための文章教室』(講談社現代新書)より
著名な作家でもある著者が、〈です・ます〉の使い方について、次のように書いていらっしゃいますので、参考にしてください。
「普通には、〈です・ます〉体のほうが当たりが柔らかで、丁寧な表現だと受け止められている。〈です・ます〉は敬語表現だから、相手への気遣いや遠慮のある言い方になるのだ。」 

「その後の対応」が必要となる可能性が高い〈も止め〉
「○○は、まだ戻っておりませんけれども」
何度もかけ直していただいている場合は、その間隔がある程度、相手の緊急度の目安となります。前の電話も同一人が30分以内に受けているのなら
→「何度もお電話を頂戴し申し訳ございません。○○はまだ戻っておりませんが、お急ぎでしょうか?」と、相手に対する配慮を示す必要があります。
その上で、緊急度に応じ次のような申し出をする必要があるでしょう。①名指し人に連絡を取る。②ご用件を承る。③戻り次第折テルのメモを残す。等々。

「期待」を抱かせてしまう中途半端な〈が止め〉(も止め)
〈が止め〉〈も止め〉については、拒否の姿勢をなるべく婉曲に伝えるため意図して使うこともあり、使い分けが難しいところもありますが、対応が不可の下記のようなケースでは誤解を招きやすいので注意しましょう。
「○○の受付は終了いたしましたが」「・・・は終了しましたけれども」
このような応対だと、相手に「でも、なんとかなる?」と期待を抱かせることになりかねませんので、「○○の受け付けは終了いたしました」と言い切りましょう。

清水先生の『大人のための文章読本』より引用させていただいた〈です・ます〉のお話は分かりやすかったと思います。文末をゆるめないためには、文章を意識して語ることが大切です。親しい間柄で頻繁に交わされるメールも、きちんと綴ることで文章感覚が培われますので、なるべく丁寧な表現を心掛けたいですね。

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2009年11月21日 (土)

文末表現を崩さない・途中止め(1)

今回から、久しぶりに再び「電話応対技術編」です。コール(コンタクト・カスタマー)センターの電話応対研修で実感することですが、文末に「けじめをつけて話す」ことができない人が多いようです。代表的な例が「途中止め」で、これには〈体言止め〉及び〈で止め〉〈が止め〉〈も止め〉があります。今回は文学作品の表現を借りて〈体言止め〉と読点〈、〉について書きます。

文学では感動を与える〈体言止め〉ですが・・・
今年(2009年)は太宰治の生誕100年で盛り上がりましたが、彼の代表作である『人間失格』の最後の方に、この文章(一行目が体言止め)があります。
「人間、失格。
もはや、自分は、完全に、人間ではなくなりました。」

「感情を伝えきれない言葉」は電話応対ではタブー
「体言(名詞)止めは言葉では表現しきれない感情を伝える手法として用いられますが、本来は名詞の後に何らかの記述が続くものを、あえて省略し、感極まったという気持ちを投影させる技法です」(中村明著『センスをみがく文章上達事典』より)。電話応対では、この使い方を誤りクレームに発展させてしまうことがあります。

マスコミ報道が〈体言止め〉表現を誤解させる一面も
2002年7月太陽企画出版刊『電話王の話す技術・聞く技術』斎藤ますみ著に以下の記述があります。
「たとえば、『稲葉様でいらっしゃいますね』といわず、『あ、稲葉様』で終わってしまう〈体言止め〉もその一つで、お客様に対して丁寧さに欠ける印象になります。(中略)テレビや雑誌のインタビューなどでは、こういったスタイルが多く見られます。時間や紙面に制限がある中で、より多くの情報を伝えたいため、できる限り省いてもいい言葉はカットし、本題のみが浮かび上がるようにしているのです。
つまり、そこには、インタビューされる人よりも、視聴者や読者を〝お客様〟とする考え方があります。第三者的立場の人がいる場合なので〈途中止め〉が許される、
例外的なケースといえます。」

お客様から「電話番号」「名前」をお聞きする応対例
「お電話番号は 0000‐0000、それでは~」と、なりがちですが、
→「お電話番号は 0000‐0000でございますね(ですね)、それでは~」
「お名前は○○ △△様、それでは~」と、してしまいそうですが、
→「お名前は○○ △△様でいらっしゃいますね、(ですね)それでは~」と、電話番号や氏名を復唱するときは、最後までしっかりと話しましょう。

不用意な読点〈、〉は会話を途切れさせる
〈体言止め〉ほどではありませんが、会話の最後が不用意に読点〈、〉の場合
会話が途切れ、お客様に不快な印象を残すことがあります。『人間失格』の二行目は最初の9文字に読点〈、〉3個です。目で見れば感動も伝わるでしょうが、これを耳で読まされたら、理解できないばかりか、不快を感ずるかもしれません。

今回、木の葉のブログとしては格調高く、太宰治の代表作に素材を求めました。「書く文章」と「話す文章」の違いを知り、併せ、真似てはいけないところを示すことで、電話応対における文末表現の大切さを解説しようとの試みでしたが、背伸びした分、少々消化不良気味になってしまった感は否めませんね。次回は「途中止め」〈で止め〉〈が止め〉〈も止め〉について具体的に書きます。

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