コミュニケーション研修

2017年4月22日 (土)

社員一人ひとりと向き合うコミュニケーション

このところ、山本はコミュニケーション研修が続いておりますが、21011年に「日本で一番大切にしたい会社」大賞の中小企業庁官賞を受賞された日本レーザーの近藤宣之社長の記事をよく目にします。今回は、MEBO(経営陣と従業員による買収)で日本電子の子会社から独立し、徹底したES(従業員満足)で、リストラなしで23年間黒字を維持してきた近藤社長のコミュニケーション術に迫ります。

社員一人ひとりの思いを知る工夫、フロアで社員への声がけを!
社員一人ひとりがどのようなことを希望しているのかを普段から把握しておくことが大事と考え社長室をつくらず、社長がフロアを歩き回り、社員とさりげない会話を交わされているのだとか。その際には社員はいちいち立ち上がる必要はなくデスクに座ったまま話をすればいいそうです。「だって社員の仕事を中断させているのは社長なんですから」と。

「今週の気づき」を社員とメールで双方通行コミュニケーション10年の取り組み
一人ひとりと向き合う仕組みとして成功したのは社員が仕事で気づいたことや家庭での出来事など何でもいいので感じたことを毎週メールで送ってもらうようにしたこと。その際人の批判はしないことと、気づきの中に問題点が含まれているなら解決策も併記することがルール。これまでのやり取りは約6万通にもおよび、すべてPCの社員別フォルダに整理されているそうです。

あいさつも大事、しかも挨拶は上司から先にすることが肝要
「あ」は明るく、「い」はいつも「さ」は先に。いつも明るく自分から挨拶をする。一番大事なのが「つ」。これは「続けて一言」の「つ」。「〇〇さん、おはよう、今週も頑張ろう」だけでは物足りなく「〇〇さん、おはよう、先週はお子さんが熱を出して大変だったね」近藤社長は「今週の気づき」を読んでいるので全社員の様子が分かるそうです。

人事評価は業績主義、でも、それだと単独行動になりがち、そこで…
社内にはラウンジがあり3つの冷蔵庫はいつも缶ビールで一杯。「一人飲み禁止」「飲んだら仕事に戻らない」というルールさえ守れば、終業後には自由に飲んでよいことに。また、社員の誕生日には近藤社長直筆の誕生日カードとギフトカタログを贈ったり、社員の家族あてに教養雑誌を贈ったりして、とても喜ばれているそうです。

言いたいことが言えない会社は活力がなくなり業績が下がる
「会社に危機が訪れた時、どれだけの社員が当事者意識を持ってことにあたり、火事場のばか力を出してくれるのか。それが会社を救う鍵になります。言われてムッとすることがありますが、3秒間置いて落ち着きます。言いたいことが言えるかどうかは社長次第。まず社長が変わらなければいけません。すべては社長の責任なのです」

出典:『衆知』特集「おもてなしの真髄」2017.1-2(構成:荒木さと子/株式会社PHP研究所)

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2016年5月29日 (日)

『コクヨのコミュニケーション仕事術』が教えてくれる3つのこと

前2回では、『販促会議』の特集版から「企画実現のための社内調整お悩み相談室」を9問取り上げました。今回は、相談室の回答者であるコクヨ スキルパークシニアトレーナーの下地寛也(しもじかんや)氏の著書『コクヨのコミュニケーション仕事術(※1)』から、ビジネスに役立ちそうな3つの極意を紹介いたします。

報連相の「報」の極意 「ほしい時間」と「論点」をまず言う
ほしい時間は、単なる報告でOKだけほしいときは1分、選択肢があり相手が考えてから選んでもらうときは3分くらいで言ってみましょう。そのくらいなら、比較的その場で時間がもらえます。また、論点を言うことで、話を聞きたいと思わせます。人は中途半端な状態が嫌いで、すぐ済むならその場で処理したいと思うからです。

忙しそうな報告相手には、一言だけ決めて相手の前に立って待つ
よい例:「お忙しい中恐縮ですが、(ほしい時間)1分、報告時間いただけませんか? (論点)来週のイベントのスケジュール変更の確認の件です」
悪い例:「ちょっとよろしいでしょうか? 報告したいことが、いくつかありまして」
この違いは大きいですね。予告時間の効果については次のお話が参考になります。

池上彰氏のアドバイス(参考文献巻末の「名言一覧」より) 
「何分間お話します」と予定時間を告げるなんて細かい、と感じられるかもしれません。ですが、こうすると、聞き手に対して心理的効果があります。事前に予定表が配られていない場合、最初に「この話は何分までです」と触れるだけで、不思議なものですが、落ち着いて聞けるようになるのです(※2)。

会議の極意 板書すると会議の時間は3分の1になる
人間はそれほどたくさんのことを覚えらません。有名なエビングハウス(ドイツの心理学者)の忘却曲線では、人は20分経つと42%を、1時間たつと56%のことを忘れてしまいます。このため板書されていると同じような意見がくり返されることが少なくなり、また文字は誤解を生みにくいので議論がスムーズに進むそうです。

読書の極意 書籍から何かを知りたいときは、同時に3冊以上の本を買う
1冊目は「その世界で一番有名な昔からある本」(その世界の本質をとらえる)
2冊目は「一番、簡単そうな本」(内容は深くないが全体像を掴むのに適する)
3冊目は「前の2冊と反対のことを言っている本」(多面的な視点を身につける)
この読書法でいくつかの視点から物事を学び、真似して試しているうちに、自分に合ったスキルだけが生き残り、オリジナリティのある人材になれるそうです。

※1:『コクヨのコミュニケーション仕事術』(下地寛也著/総合法令出版)
※2:『わかりやすく〈伝える〉技術』(池上彰著/講談社)

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2016年5月26日 (木)

ズバリ解決‼ 企画実現のための社内調整お悩み相談室(2)組織内調整編

前回の【お悩み】は、「部門横断のプロモーションがうまくいかない」「デザイナーとうまく意思疎通が図れない」「各店舗に新しい販促企画を浸透させるのが難しい」「商品のイメージ変更がうまくいかない」でした。さて今回は、上司・部下・トップとの関係での困りごとです。どちらの組織にもありそうな【お悩み】ばかりです。

【お悩み】 上司が怒りっぽく、皆、委縮してしまい困っています。
上司への相談が遅れて企画が滞り、結果トラブルになることもあります(小売・営業企画部)。
→「上司を観察し、こだわりポイントを探る」「簡潔なメモを常に作って相談する」
解決の糸口:上司を観察して、こだわりポイントを洗い出そう

【お悩み】 企画について上司に許可を得るタイミングが難しくて困っています。
早い段階で企画の承諾をもらおうとすると、決められたことしかできないですし、〆切間近で話すと大幅な変更をしなければいけないことがあります(広告会社・営業担当)。  →「承認までの3ステップで報告を使い分ける」「上司はどのような視点でチェックするのかを理解する」 解決の糸口:途中段階の企画を細かく報告しよう。

【お悩み】 トップの思いついた企画を実現するのに困っています。
トップの意見ですから実現しなければいけませんが、要求事項が抽象的で漠然としていて苦労します(小売・企画担当)。 →「トップは〈目的〉を、担当は〈手段〉を考える」「企画は〈目的→手段→目的〉で伝える」
解決の糸口:トップから指示があったら、その場で予算とジャンプ度合いを確認。

【お悩み】 多くの人の承認が必要で企画が進まず困っています。
キーマンが多すぎて説得に時間がかかります。企画の承認を得るまでに多くの人のチェックが必要です。人によって言うことも違い、企画が思うように進まないのが悩みです(メーカー・宣伝担当)。 →「承認する側も、どこまで口を出していいか悩むもの」「〈この部分を見てください〉と承認をもらう部分を細分化する」
解決の糸口:何をチェックしてほしいのか、具体的に依頼しよう。

【お悩み】 他部門横断のプロモーションの実施で困っています。
会社の周年企画を担当していますが縦割り組織で意識の共有が難しく、依頼しても、なかなか返答がなく協力してもらえません(メーカー・周年事業担当者)。
→「他部門が協力しないホントの理由」「リーダーとして仕事を楽しむ雰囲気を出しているか」 解決の糸口:楽しそうに仕事をしていると人は自然と集まる。

※1:『販促会議~実際に提案された企画書・販促アイデア20事例&ノウハウ大公開!』(㈱宣伝会議『販促会議』編集部編集/宣伝会議)

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2016年5月22日 (日)

ズバリ解決‼ 企画実現のための社内調整お悩み相談室(1)販促部門編

販促担当者へのアンケートでは、6割が「社内調整」に課題を感じているそうです。
上司、他部署への依頼・交渉をもっとスムーズにしたい! そんな販促担当者のリアルな悩みに対し、コクヨ スキルパークシニアトレーナーの下地寛也(しもじかんや)氏が、『販促会議』の企画書に関する「特集号(※1)」で対応策を示しています。

本ブログでは、【お悩み】の内容と、それに付随するコメント。さらに社内コミュニケーションのヒントになるであろう解説文中の2つの「小見出し」を→後に、そして、まとめ的に書かれた解決の糸口を紹介します。ご関心を持たれた方は、雑誌を購入なさるか、下地氏の著作『コクヨのコミュニケーション仕事術(※2)』をご覧ください。

【お悩み】 デザイナーとうまく意思疎通が図れず困っています。
デザイナーから期待したものとは異なるものが上がってきてダメ出ししたところ、その後は指示されたとおりにしか作ってくれず困っています(メーカー・販促担当者)。    →「任せるが〈任せる幅〉は提示する」「過去の自分(デザイナー)のデザインと勝負(比較してみる)」 解決の糸口:4象限を使ってデザインの方向性を伝えてみよう
※→後2つ目の「」内の(デザイナー)(比較してみる)は山本注

【お悩み】 各店舗に新しい販促企画を浸透させるのが難しくて困っています。
企画がちょっとでも複雑になると、現場のスタッフ間でうまく共有できません(小売・販促担当者)。 →「複雑な企画でも全体像を示す俯瞰図を必ずつくる」「写真や動画で上手くいく雰囲気を伝える」
解決の糸口:1店舗で先行実施し、画像をうまく使おう

【お悩み】 部下がアイデアを出すのですが、その先に進まず困っています。
よいアイデアを出してくれる部下がいるのですが、いざ実行となると先延ばしになってしまいます(小売・販促担当者)。 →「部下の発想力に上司の実現力を加えよ」「仕事の優先順位設定と、調整業務が上司の役目」
解決の糸口:部下の立場では難しい調整業務を実行しよう

【お悩み】 商品のイメージ変更の提案で、社内の抵抗が大きくて困っています。
売り上げが伸びない商品のブランドイメージやデザインを変えようと提案しています。しかし、今までかかわってきた関係者の抵抗が大きいのが現状です(メーカー・営業担当)。 →「無意識のうちに相手のプライドを傷つけていないか?」「理屈で攻めるより、事例で攻める」 解決の糸口:相手の不安を取り除くプロセスが必要

※1:『販促会議~実際に提案された企画書・販促アイデア20事例&ノウハウ大公開!』(㈱宣伝会議『販促会議』編集部編集/宣伝会議)
※2:『コクヨのコミュニケーション仕事術』(下地寛也著/総合法令出版)

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2016年3月20日 (日)

相手が黙り込む質問を恐れない   『聞く力、話す力』より(5)

このシリーズの最後は、インタビュアーだった著者が思い入れのあるテレビ番組から、2つのショッキングな質問を取り上げます。ひとつは討論番組中に高校生が発した「なぜ人を殺してはいけないんですか」。もうひとつは、マフィアのボスに対する「あなたは人を殺したことがありますか」です。

「なぜ人を殺してはいけないんですか」
いきなりそう聞かれたら、あなたはどう答えるでしょうか。これはあるテレビニュース番組の中で実際に飛び出したものです。終戦記念日にちなみ高校生を集め、いろいろな議論をしているとき、一人の男子生徒が口にしたのです。ところがスタジオにいた大人たちが、その問いかけにきちんと答えられなかったと話題になりました。

この問いかけに、なぜ大人たちはきちんと答えられなかったのか?
おそらく「人を殺す」という行為はいけないことだ、という了解が誰の心のなかにもあり、それは問う必要もないほど当然のことだったからでしょう。人を思わず黙らせてしまう質問。そんな問いはほかにどんなものがあるのでしょう。「私たちはなぜ存在するのか」「なぜ勉強しなければいけないの」「友情とは何か」そして…

「あなたは人を殺したことがありますか」
これは著者が初めて聞いたとき、耳を疑った質問で、質問したのは、マイク・ウォレスという名のインタビュアー。『60ミニッツ』というアメリカの報道番組でのことでした。質問をぶつけた相手は、マフィアのボス。
にこやかに進んでいたインタビューの場は、この質問で一瞬、凍りつきました。

かすかな間があいたあと、マフィアのボスはにやりと笑って言った
「いいえ」。そしてこう言い放ったのです。「嫌いな奴をのぞいてはね」。聞くほうも聞くほうなら、答えるほうも答えるほうです。こう質問されたら、相手はふつう答えないか、話をそらすものです。でもマフィアのボスは逃げなかった。いや逆に言えば、マイク・ウォレスは相手を逃がさなかったのです。

聞くことは賢くなること、人間力を養い、人間として成長すること
さらりと「あなたは人を殺したことが…」と問いかけ、答えさせる。マイク・ウォレスの人間力がそれを可能にしたのでしょう。この人にはちゃんと向きあわなければいけない、そう思わせるものが彼には備わっていたのです。聞く力を磨くことは、人間力を養うということ、つまり何より人間として成長することではないでしょうか。

参考文献:『聞く力、話す力 ~インタビュー術入門~』(松原耕二著/河出書房新社「14歳の世渡り術シリーズ」)

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2016年3月17日 (木)

問われることで救われることもある   『聞く力、話す力』より(4)

アメリカにラリー・キングという名前の名インタビュアーがいたそうです。番組の名は『ラリー・キング・ライブ』。政治家、経済人、スポーツ選手、ハリウッドスターから芸術家、さらには事件の渦中にいる人間など、ありとあらゆる分野の人をゲストとして呼び、1時間にわたって話を聞くスタイルでした。

彼はしゃべり方が早く、矢継ぎ早に質問をあびせた
これは、参考文献の著者が初めて番組を観たときの驚きの感想です。ゲストから見れば、まるでラリー・キングの質問がシャワーのように降り注いでくる、という状況に置かれるのです。これではゲストは神経が参ってしまうだろうから、みな一度経験したら出演するのが嫌になるだろうと思ったそうです。

ところがそれはまったくの見当はずれだった
めったにテレビに出ないのに、彼の番組なら、といって出演するゲストも少なくないというのです。どうしてなんだろう? 著者には理解できませんでした。でもしばらく見続けているうちに、だんだんその理由がわかるような気がしてきました。たとえばスキャンダルが発覚し、批判にさらされていた女優がゲストに出たときのこと。

彼女が失意のどん底にあっても、ラリー・キングは辛辣な質問を浴びせる
ラリー・キングは遠慮するどころか、いつもと変わらず質問をぶつけ、相手はそれに答えていきました。1時間たっぷり、ふたりのやりとりが繰り返されたあと、著者は彼女の表情を観てはっとしました。失意のなかにいたはずの彼女が、どこか晴々とした顔をしていたからでした。

ラリー・キングのカウンセリングのようなインタビュー
遠慮ない質問が、あなたの身に起きているのはたいしたことじゃない、大丈夫だというメッセージを、結果的に相手に送り、そのことで相手の女優も自分は肯定されていると感じることができたのではないかというのです。そして洗いざらいしゃべることで、気持ちが落ち着いたのではないだろうか、と。

問われることで救われることもあるのかもしれない
インタビューは、癒しになることもあるのです。それはどこか精神科医によるカウンセリングにも似ています。日常生活でも深刻な話をするのは面倒だから、ついあたりさわりのないことばかり話す。でも人に話すことが癒しにもなる。自分ひとりでは出口が見えないときは、思いきって誰かに話を聞いてもらってはどうでしょうか。

参考文献:『聞く力、話す力 ~インタビュー術入門~』(松原耕二著/河出書房新社「14歳の世渡り術シリーズ」)

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2016年3月13日 (日)

問われることで発見することもある   『聞く力、話す力』より(3)

わたしたちは人から何かを問われ、それに応える中で、これまで気づかなかったことに思いが至るということあります。そのことに関して劇的なインタビューが紹介されています。インタビュアーとしての著者の相手は、イギリスのロイヤルバレエ団*のプリンシパル(主役を踊るダンサー)を長くつとめたバレリーナ―の吉田都さん。
*:バレエの本場であるヨーロッパで1、2を争う代表的なバレエ団。

誰にも負けないほどの高い技術と繊細な動きが彼女の武器だったが・・・
でもその一方で、もっと表現力を豊かにすることを求められていました。
彼女を育てた世界的な振付家であるピーター・ライト氏は言いました。
「妨げになったのは、日本人特有の控えめな性格です。都はシャイで自分を表現できずに苦労していました」

でもあるときから、彼女は大きく変わった
このことは、先の指摘をした振付家のライト氏も同じように感じたそうです。なぜ彼女はこれまで以上に人を感動させることができるようになったのか。
そして人を感動させるものとはなんなのでしょうか。彼女にインタビューしたところ思い当たることがないというのでしたが…。

この素晴らしい変化を彼女にもたらしたものは、故障のブランクだった!?
アクシデントは、彼女にとって重大な局面で起こりました。イギリスのテレビ局BBCが10年ぶりにロイヤルバレエ団の公演を生中継し、彼女の文字通り晴れ舞台になるはずの前日、彼女はひどく腰を痛め、動けなくなってしまったのです。腰はダンサーの命であり、突然踊ることができなくなった彼女はひどいショックを受けました。

もう踊れないのではとの恐怖から彼女を救い出してくれたのは
そのとき、すべてを犠牲にしてバレエを優先してきた彼女の心のなかに変化が起きます。「ずっとバレエが一番でした。でもわかりました。バレエよりも大切なものがあることを。家族や友人、そして人が何より大事だと」
彼女は穏やかな表情で続けました。「バレエが一番じゃなくなったんです」

バレエより大切なものを見いだした瞬間、その踊りは観客たちをより魅了した
このことに彼女は、著者のインタビューの中で気づいたのだといいます。インタビューというのは相手の頭のなか、心のなかに既にあることを引きだすものだと思っていたのです。しかしこの吉田都さんへのインタビューをきっかけに、著者は相手のまだ気づいていないことを引きだすことがあることを発見したのです。

参考文献:『聞く力、話す力 ~インタビュー術入門~』(松原耕二著/河出書房新社「14歳の世渡り術シリーズ」)

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2016年3月10日 (木)

反対の立場から尋ねてみよう   『聞く力、話す力』より(2)

「2位でいいじゃないか」と言う人は、きっと2位にもなれません。絶対にトップを取ると決めている人でないとトップにはなれません。これは社員教育業の女性経営者が書いた『仕事ノート(※)』の中の一節です。ところが同じような表現でも物議をかもすことがあります。以下に紹介するのは、まだ記憶に新しいあのシーンです。

「2位じゃダメなんでしょうか?」
国の財政が悪化していくなか、予算が正しく使われているかきちんとチェックして、減らすべきものは減らしていこう。そうした考えのもと、行われた公聴会の場で、ある女性の政治家が「世界一になる理由は何があるんでしょうか」と言った後、こう聞いたのです。「2位じゃダメなんでしょうか?」

これはすごい質問です
科学技術の分野で世界一を目指すということは、異議を申し立てにくい質問だからです。いっせいに各方面から反発が起こりました。「技術がまったく分かっていない人間の質問だ」「1位を目指さなければ、2位も3位も取れない」「そんなことを言っているから、日本は後れをとってしまうんだ」等々。

同じ質問でも相手の受け止め方でニュアンスが変わる
反発が起きたのは、質問が人の神経を逆なでするような聞き方だったこともありますが、何より質問した議員が「1番でなくてもいい」と考えている、と思われたことでしょう。この結果、「1番でなくてもいいとは何ごとか」、「この女は何もわかっていない」といった感情的な反応が引き起こされたのです。

「2位ではダメなのかと聞かれたら、どう答えますか」と聞いていたら・・・ 
ただ、たとえ自分で思っていないとしても、問いを発したとたんにそれは自分の意見であるとみられるリスクがあるのは確かです。そうなると会話にならず、感情的な反応を引き起こすだけで終わってしまう恐れがあります。それを避けるために、「2位ではダメなのかと聞かれたら、どう答えますか」といった聞き方もあったはずです。

逆の立場から、尋ねてみる
仮定の話にしてしまうか、第三者の声としてぶつけてみるのです。そうすれば少なくとも「てめえ、そんなこと言いやがって」という直接的な反発は避けられるのではないでしょうか。逆の立場から、尋ねてみること。それは本質を引きだすきっかけになりうるのです。

参考文献:『聞く力、話す力 ~インタビュー術入門~』(松原耕二著/河出書房新社「14歳の世渡り術シリーズ」)
※:『仕事ノート』(朝倉千恵子著/プレジデント社)

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2016年3月 6日 (日)

答えは過去、問いは未来   『聞く力、話す力』より(1)

学校で勉強ができるといわれるのはどんな生徒でしょうか? と参考文献の著者・松原耕二氏は問いかけます。それはたぶん、先生の質問にちゃんと答えられたり、試験でいい点をとったりする生徒のことと考えられがちですが、それでは試験でいい点をとる、ということは何を意味しているのでしょうか?

試験の正解とは?
たとえば、国語の試験でこんな質問が出たとします。「文章を読んで、作者が言いたかったことを、二百字以内でまとめなさい」。この場合の正解とは何でしょうか。
時に作家がエッセイなどに書いています。自分の文章を問題に使われたけど、その答えとされているものは自分の言いたかったことじゃない、と。

学校で勉強ができるといわれるのはどんな生徒でしょうか?
試験の正解とは「出題者が正解だと思っている」答えのことであって、本当に正しい答えとは限らないということです。
勉強ができる人というのも、先生が想定する答えにすばやくたどりつける、期待されている答えを答案用紙にかける能力を持っている生徒といってもいいでしょう。

大事なのは疑問を持つこと、「問いを発する」こと
学校の試験で正解とされていることを書けば、点数もいいし、ほめられるでしょう。もちろん先人たちが発見してきた心理や法則を学ぶことはとても大切です。でも覚えなければならない知識の海でおぼれてしまうくらいなら、自分の興味のある分野で、問いを立て、深くそのことについて考える習慣をつけた方がいいように思います。

大人たちを見てください
偉そうに言ったって、彼らとて先のことなどわからない。これが正解だ、などと簡単に言えない時代に入っているのです。
著者の経験では、学校で正解とされる答えを答案用紙にかける能力があった人ほど、社会に出ても同じ成功体験を求め続けようとするように見受けられるとのこと。

ですが、過去に分野に属する答えを手際よくさばくことができる能力と、経験したことがない出来事に対して自分の頭で考え、新しい知恵を生み出す能力はまるで違うのです。正しい答えをだすよりも、正しい問いを発すること。そのことのほうがずっと大切だと、著者は若者たちに呼びかけます。

参考文献:『聞く力、話す力 ~インタビュー術入門~』(松原耕二著/河出書房新社「14歳の世渡り術シリーズ」)

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2016年3月 3日 (木)

他の変数の統制 それは本当の原因ですか?

朝ご飯食べた? 『原因を推論する』より(5)
文部科学省の平成25年度「全国学力・学習状況」では、朝食を食べないことがある小・中学生の割合は、小学6年生で11%、中学3年生で16%に達しています。そしてその調査では、朝食をとるかとらないかで、勉強のできが違ってくるというのです。少なくとも試験前には朝食をとった方がよさそうですね。

朝ご飯を食べない子どもが増えています
平成24年版『食育白書』では、「子どもたちが健やかに成長していくためには、適切な運動、調和のとれた食事、十分な休養・睡眠が大切。しかしながら、最近の子どもたちを見ると、「よく体を動かし、よく食べ、よく眠る」という成長期の子どもにとって当たり前で必要不可欠である基本的な生活習慣に乱れが見られます。

朝食を摂らないことによって起きる身体的変調
朝食によるエネルギー補給がないと、不足分を補うため肝臓から取り出されたグリコーゲンや、筋肉のタンパク質中のアミノ酸をそれぞれ糖に変え脳に供給します。この結果イライラや攻撃性・興奮・ストレスに関与するアドレナリン、ノルアドレナリンや副腎皮質ホルモンの分泌が、精神的に微妙な影響を与えるのです。

非行少年は明らかに朝食をとっていない場合が多い
内閣府が行った「第4回非行原因に関する総合的研究調査」(平成22年3月)は、朝食をとっているかどうかと非行に走るかどうかが関連しているとの結果を発見しています。この調査は、全国の公立小・中・高生と公立大学生、そして補導された少年、少年鑑別所に入っている少年を対象とする大規模なものです。

朝食を摂らないことの因果推論の検討
非行で補導される少年は、夜遅くまで街で遊んでいたりするでしょう。その結果、朝起きられなくて朝食を抜くこともあるかもしれません。この場合は、非行行為が原因となって、朝食を抜いてしまうという逆の因果関係が存在することになります。そうだとすると、朝食を一所懸命とらせても、非行はそれほど減らないかもしれません。

用意された朝食に目もくれずに出かける家庭もあれば、朝食が用意されない家庭もあるでしょう。家庭環境が、朝食を食べる子どもと食べない子どもで異なっている可能性があります。家庭環境の違いが、非行に影響しているのかもしれません。そうすると、朝食と非行の共変関係、相関関係は、偽りの相関関係かもしれないのです。

※:『原因を推論する』~政治分析方法論のすすめ~(久米郁男著/有斐閣)

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