言葉の「言葉遣い」「言い換え」「文字表現」
最初は「言い回し」です。結婚披露宴のスピーチでは、離婚を想像させる「(縁が)切れる」「別れる」などは、忌み言葉として使ってはいけません。何度も結婚することを想像させる重ね言葉、「皆々様には…」「ますます…」もNGです。では、結婚披露宴などで、以下のような意味のことを話そうとするとき、どのように言い換えればいいでしょうか。
*「本日はお忙しい中…」→「本日は、ご多用中の中…」(「忙」の字の「りっしんべん」は「心」を表わします。「忙しい」は「心を亡くす」の意味になるので。
*短い時間ではありますが→つかの間ではございますが/*冷めないうちにどうぞ→温かいうちにどうぞ!/*ケーキをカットします→ゲーキに入刀します
*スタートを切ることになります→スタートラインに立ちます/*実家を離れてから→一人暮らしを始めてから/*試合に負けたとき→試合に勝てなかったとき/*受験に落ちてしまい→受験がうまくいかず/*忘れないでください→お心にとどめていただけますよう/*くれぐれもよろしくお願いいたします→今後ともよろしくお願いいたします。
次は「言い換え」です。「ご苦労さまです」と「お疲れさまです」について、『president』2023年4月14日号に言語学者の金田一秀穂先生の「日本一わかりやすい『日本語』の取扱説明書」中にこれに言及する箇所がありました。その内容は、これまでの研修講師としてマナー教育で語ってきたことに、修正を加える必要を感じさせるものでもありました。
該当箇所は以下の通り。「実際によくある敬語の間違いを紹介しましょう。たとえば目上の人に対して『ご苦労さまでした』というのは厳禁です。『ご苦労さま』が失礼だとわかる人が『お疲れさまでした』と使うケースもありますが、それも不適当です。目上の人に対して、労ったり慰めたりすること自体が敬意を欠いています」。
最後は、日常で使用頻度の高い「ください」の仮名表記と漢字交じり表記の違いにつてです。この二通りの書き方に大きな違いがあることを教えてくれる好事例があります。たぶん昭和生まれの方には馴染のある、飴の専門店・榮太樓本舗での実話です。このお店は新商品の認知度を高めるためにSNSも活用したキャンペーンに取り組みました。
そんな折、Twitterに書き込みがありました。それはカタログやSNSに「是非ご賞味下さい、と漢字で『下さい』と書くのは、お客様に対して上から目線の書き方だ。江戸の老舗菓子店が使う言葉ではない」というものでした。榮太樓本舗では、このご指摘を真摯に受け止め、即座にカタログをはじめすべての媒体表現を「ください」に変更しました。
公益社団法人日本広報協会によると、漢字を使う場合は、「飲み物をクダさい」といった実質動詞(「くれ」の尊敬・丁寧表現)の場合は、「下さい」と漢字書きにします。仮名書きにする場合は、「お飲みクダさい」といった補助動詞(何かをお願いするときや、敬意を表す尊敬・丁寧表現)の場合は、「ください」と仮名書きにします。
参考文献:『相手のことを思いやる ちょっとした心くばり』(岩下宣子著/三笠書房刊)
『愛されるマーケ嫌われるマーケ』(日経クロストレンド編/日経BP刊)(1336字)
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