管理職研修

2022年11月10日 (木)

稲盛和夫氏の著書『実学』から学んだ3つのこと

稲盛氏に「夜泣きうどんの屋台を引く」というたとえ話があります。「しばらく会社に出てこなくてもよろしい。屋台一式を貸すから5万円の元手で1カ月間、毎晩京都のどこかでうどんを売ること。そして、1カ月後いくらにし持って帰って来るかが実績だ」というものです。これを実践すれば、コスト意識の高い経営幹部が育つ子とのご見解でした。

「夜泣きうどん」の屋台を引くためには、まず仕入れをどうするか?うどん玉を買うには、製麺所で調達する、スーパーで生麺を買う、固い干し麺を買って湯がいて出すなどが考えられる。次に、いい味を出すための出汁のために高い鰹節を買う。鰹節を削っているところで屑をもあらうなど、原価を安くしていかにいい味を出すかの創意工夫が必要となる。

「かまぼこ」や「揚げ」や「ネギ」にしても、スーパーマーケットで買う、工場や農家から直接仕入れるなど、いろいろなやり方がある。そして肝心なのが売値。一杯300円の「夜泣きうどん」も500円も選択自由。安ければいくらでも売れるだろうが、利益を得ることはできない。お客さんをどう満足させて売れるベストの値段を探し出さなくてはならない。

「このようにうどんの屋台ひとつでも、いろいろな選択肢がある。一晩に出てくる差はわずかでも、年間にすればものすごい差になってくる。また、屋台から大きなフランチャイズ・チェーンに発展させる人もいるし、何十年屋台を引いても何も財産を残せない人もいる。いい商売、悪い商売があるのではなく、それを成功に導けるかどうかなのである」と。

先日のテレビ番組では稲森氏の「土俵の中で相撲をとる」を取り上げていました。これについて同氏は、「土俵際でなく、まだ余裕のある土俵の真中で相撲をとるようにする」ことを心掛けるべきだと。なぜなら、土俵に追い詰められ、苦し紛れに技をかけるから、勇み足になったり、きわどい判定で負けてしまうことがあるからだと。

それよりも、どんな技でも思い切ってかけられる土俵の真中で、土俵際に追い詰められたような緊張感を持って勝負をかけるべきだ、というのです。これは企業財務に関して言えば、「つねにお金のことについて心配しなくても、安心して仕事ができるようにすべきだ」に通じ、そのような強い思いが、京セラを速い時期より無借金経営に導いたのだと。

稲盛氏の経営哲学の根底にあるものは、「人の心をベースとして経営する」ということでした。人の心は大変大きな力を持っているが、ふとしたはずみで過ちを犯してしまうという弱い面も持っている。人の心をベースにして経営していくなら、この人の心が持つ弱さから社員を守るという思いが必要で、これがダブルチェックシステムを始めた動機だと。

そして、そのような保護システムは厳しければ、厳しいほど、実は人間に対し親切なシステムなのだと繰り返されます。「ダブルチェックの原則」を間違いの発見やその防止のためのテクニックであると考える人もいるかもしれない。しかし、このような厳格なシステムが必要な本当の目的は、「人を大切にする職場をつくるためなのである」と。

参考文献:『稲盛和夫の実学』

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2022年9月12日 (月)

改版辞書・辞典の「言葉」「表現」「用語」からジェネレーションを知るⅡ

今回取り上げるのは、言葉の解説が時流に合わせてかなり深堀されたと思われる2022年1月改定の岩波『広辞苑第7巻』です。例えば、料理時の「炒める」は、これまでの「食品を少量をの油を使って加熱・調理する」が「熱した調理器具の上に少量の油をひいて、食材同士をぶるけるように動かしながら加熱・調理する」と変わりました。

この変化を教えてくれたのは、図書館で読んだ『いつもの言葉を哲学する』(古田徹也著/朝日新聞社出版)でした。確かに料理初心者には「炒める」という行為が伝わらず、満足な料理に仕上がってなかったように思うのです。

この解説に至るまでの編集者の苦労談「炒めるの真髄を見極めるべく、日々炒め物を作りまくり、料理をしていないときも、エアフライパンを片手に、炒める動作をしまくった。そうして、悩みに悩んだすえ、ついに天啓が降ってきて、前記の解説になった」が、『船を編む』の三浦しおんさんによる『広辞苑をつくる人』でした。

『広辞苑7巻』には他に、

「こする」:押しつけて摩擦する。すりみがく。⇒物と物とをぴったりとつけて、繰り返し触れ合わす。押しつけたままうごかす。摩擦する。

「なでる」:手のひらでやさしくする。⇒手のひらなどで優しく触り、形に添って一度または何度か動かす・・・なども新しい解説に変わっています。

『広辞苑』の丁寧でわかりやすい表現への変換を見て、研修講師の私が思ったこと。それは、多くの職場の上司たちが、きちんと受けとめられていないにもかかわらず、辞書編集者の方たちが、若い世代の多くが見たり習ったりして学ぶのではなく、マニュアルで技術の習得をすることが出来るように変化をきちんと読み取られていたことへの敬意の念でした。

最後に毎年11月頃に、自由国民社から発行される『現代用語の基礎知識』に触れます。これは毎年改定され、現代人として必要と考えられる用語にマスコミなどで使われる新語を加えて編集された辞典・用語辞典の一種で、年鑑の性格も持つそうです。1984年から、その年の世相を反映した新語・流行語大賞を選定して発表しています。以下に、印象深いものを紹介します(敬称略)。

1994年 同情するならカネをくれ(安達祐実)

1996年 自分を自分でほめたい(有森裕子)

2005年 想定内(堀江貴文)

2008年 アラフォー(天海祐希)

2013年 いまでしょ!(林修)

2017年 インスタ映え(Can Cam it girl)

2019年 ONE TEAM(ラグビーW杯2019 日本代表)

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2022年9月 8日 (木)

改訂版辞書・辞典の「言葉」「表現」「用語」からジェネレーションを知るⅠ

昨年の暮れから本年初頭(20212022年)にかけて、日本を代表する辞書・辞典(『三省堂国語辞典 第8版(小型)』『岩波・広辞苑第7巻(中型)』)が改版されました。中学や高校で用いられるのが「小型」で、「中型」は『広辞苑』をはじめ、『大辞林』とか『大辞泉』など。「大型」に分類されるのは、小学館の『日本国語大辞典:全14巻』。

ご存じのように辞書は、改訂のたびに、使われなくなった言葉を削り、その間に新たに使われ始め、世の中に定着した言葉を追加する、という地道な作業が繰り返えされます。この辺りの事情は、10年前本屋大賞に選ばれ、映画にも、アニメ化されてテレビでも放映された三浦しおんさんの『舟を編む」に詳しく書かれていました。

さて、『三省堂国語辞典 第8版』では約1100の古い言葉が消えた一方で、約3500の新しい言葉が追加掲載されています。2022822日放映の日本テレビのバラエティー番組「月曜から夜ふかし」で、削除された「コギャル」「タカラジェンヌ」「着メロ」「マイナスイオン」などが取り上げられWeb上で注目を集めました。

新しく取り上げられた言葉を三省堂のHPから10語ほど抜き書きしてみましょう。「ガールズバー(女性中心のショットバー)」「自分事」「聖地巡礼」「センベロ(千円で酔える酒場などの俗称)」「ソーシャルディスタンス」「ゾーンに入る」「猫パンチ」「腹落ち」「ホニャララ」「マリトッツォ(生クリームを挟んだスイーツ)」。()は筆者注。

上記には取り上げませんでしたが、新掲載語の中に「赤信号みんなで渡ればこわくない」が入っていたのには、少々驚かされました。この言葉は今から約30年も前にツービート(漫才コンビ)が流行らせた懐かしいギャグで、日本では既に死語化していましたが、10年ほど前に中国で脚光を浴びたことが関係しているのかもしれません。

なお、辞書には新しい言葉と並行して、新しく追記された語義も掲載されます。その対象例は、完封(箸)/クラスター/誤爆/塩(対応)/巣ごもり(消費)/忖度/つらみ/(新曲が)尊い/とろみ(ブラウス)/なんなら/~ペイ/(まつたけ)祭り/目詰まり/リモート(飲み会)などですが、「忖度」が入っているのは意味深ですね。

今回は、「言葉」「表現」の変化で知るジェネレーションⅠ として、『三省堂国語辞典 第8版』を取り上げましたが、次回は、これのⅡとして、岩波『広辞苑』の旧版と新版の時代の変化を的確に捉えた「表現」の違いを。また、自由国民社の『現代用語の基礎知識』から年ごとの特徴的な「用語(新語・流行語)を取り上げます。

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