メンタルヘルス研修(セルフケア)

2023年7月 2日 (日)

精神科医療の新しい流れを構成する諸要素について

『アニメ療法』という本が202212月に光文社から刊行されました。著者はパントー・フランチェスコというイタリア人です。彼は、子どもの頃から日本のアニメやゲームなどのいわゆる「オタクカルチャー」に接し、自身が救われた体験を持つことから日本での医療従事を決意したとのこと。そのオタクカルチャー体験を転記すると、

ポケモンをボールに収め、絆の旅に出た。セーラームーンと一緒に凛々しいヒーローに変身して、スーパーパワーで弱者を救った。

『犬夜叉』を見て戦国時代へタイムスリップして、自分自身の二面性を受け入れられるようになった。

『地球少女アルジュナ』で生死の意味、自然と愛の不可解さを知った。

CLANNAD AFTER STORY』のキャラクターと一緒に、家族の絆に気づいて泣いた。

『東京マグニチュード80』で自然の残虐さと、儚い絆の強さを感じた。

『魔法少女まどか☆ガギカ』で無慈悲の宿命の中でも美しい光があることを目撃した。

この世にはカッコ悪い自分しかいないと思った時に

『ゼルダの伝説』のリンクになって勇ましく剣を振り回し、己の存在を叫んだ  こうした経験から、筆者は日本のポップカルチャーの秘める力を知った。そして精神医学の道に進んで研究を重ねれば重ねるほど、「物語」が精神的なサポートをできることを、日本の文化財産とも言えるアニメやゲームに大きなヒントがあることを強く感じるようになり、きちんとした効果検証をした上で、臨床現場にも導入できるのではないかと。

精神科医がすすめる日本のアニメ・漫画  ゲームというデジタル介入の形式以外にも、日本の漫画やアニメには娯楽を超えるポテンシャルも持った作品がいくつかある。精神科医の立場から、理想的な内容を持つと感じる作品を一部紹介すると、『空中ブランコ』『新世紀エヴァンゲリオン』『蟲師(むしし)』『宝石の国』『コードギアス 反撃のルルーシュ』『ONE PIECE(ワンピス)』

6 つの作品はいずれも漫画、アニメ作品。作品とインタラクトする性質は持たない。非フィードバック型のアニメ療法に該当するといえるとのこと。こうした作品の鑑賞はカタルシスをもたらし得る。私たちは無意識的に過去のトラウマや苦悩を抑圧してしまう傾向があるが、カタルシスでその感情を排出すれば、心の緊張がほぐれるようになる、と。

筆者はアニメ療法を含め、エンターテインメントとメンタルヘルスの交差する場面こそ未来の精神科医、若者向けの臨床心理、人間の心のケアに携わる活動のコアになると予測しておられます。それには「患者」ではなく「みんな」のための、予防としての心のケアという概念が当たり前になることが欠かせない、と。

参考文献:『アニメ療法』(パントー・フランチェスコ著/202212月光文社刊)

著者略歴:ローマのサクロ・クオーレ・カトリゥク大学医学部卒業後に医師免許を取得してから来日。筑波大学大学院博士課程を経て、現在は慶応大学病院を拠点に、複数の医療機関に赴き、精神科医として活躍中。

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2023年2月28日 (火)

節目となる30代、50代、70代の健康管理について

この稿は『PRESIDENT』の23日号の、「最新ビッグデータで判明 体調不良を感じやすい病気と予防策2023」から、主に30代、50代、70代に関する記述をピックアップしてまとめています。本誌の当該特集の冒頭に、「各年代によって注意すべき「厄」が変わる! とあり、本厄を男女別に下記のように定義しています。

男性 不摂生の厄:平成11年生まれの24歳、ストレスの厄:昭和61年生まれの37歳、肥満の厄:昭和48年生まれの50歳、更年期の厄:昭和35年生まれの63歳。

女性 不摂生の厄:平成10年生まれの25歳、婦人病の厄:昭和59年生まれの39歳、更年期の厄:昭和46年生まれの52歳、ロコモの厄:昭和35年生まれの63

上記を踏まえると、男性は37歳が「ストレスの厄」に該当しますので、ここでは男性の30代を取り上げます。「30代で血圧や血糖値、肝機能の検査値に異常が見られる方は、5060代に大きな病気になるリスクが高くなります。この段階でしっかり体のケアをするかどうかで、その後の人生大きく左右するといっても過言ではありません」とあります。

次は、50代です。この年代で多く見られるのは糖尿病ですが、この病気は一般的に食べ過ぎと運動不足が要因といわれます。糖尿病は20歳ぐらいから発症率が緩やかに上がって、50歳から急上昇する傾向があるそうです。そして、一度発症すると食事制限などが大変なので、50歳で改めて生活習慣の見直しを専門医がお勧めしています。

また、50代男性が注意すべき病気のもうひとつが脳血管疾病です。脳梗塞や脳失血などの総称が脳血管疾病ということになります。この病気は40代から少しずつ発症リスクが高くなり、50代に入ると加速度的に上昇するそうです。同じように、心筋梗塞など虚血性心疾患が発症するのも50代です。

一方、女性は55歳を境に動脈硬化が加速すると言われています。女性の厄年はこれまで数えで19歳、33歳、37歳、61歳とされてきましたが、本誌の解釈は上記の通り。こうした考え方によると、従来の37歳の本厄が今は52歳に当たるので、この年代に動脈硬化に対する予防を心がけるべきと専門家がアドバイスしています。

70代以降に発症することが多いアルツハイマー型などの認知症も、50代前後から若年性発祥のリスクがあるそうなので、気をつけたいですね。50代は「もう若くない」との後ろ向きの心が病気に表れるそうです。前向きな生き方や心の持ちようが病気の予防に役立つようですから、多少不調を感じても決して後ろ向きにならないようにしましょう。

最後に70代。ハーバード大学が75歳に30年前の仕事に戻ったと仮定し、当時の映像や新聞の中で1週間暮す実験をしました。すると、全員の体力や認知機能が改善され、見た目も若返り、行き「車いす」帰り「歩き」まで起きたそうです。若返り策の好例は同窓会だとか。なるほど、高校の同窓会に行くと、たしかに18歳のときの気持ちに戻ります!

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2023年2月 6日 (月)

怒りを収める「呼吸法」と「漸進的筋弛緩法」

あなたは、怒りを感じたとき、どんなふうに表現しますか? 『感情の問題地図』(技術評論社)には以下の5例が紹介されています。「カッとする」「はらわたが煮えくりかえる」「頭に血がのぼる」「目くじらをたてる」「へそを曲げる」。どうでしょう、何か思い当りありませんか? そう! 身体の部位が含まれている表現が多いのです。

怒りを感じると身体は闘争モードになって、覚醒度が上がります。大事なものを守るためにはエネルギーが必要不可欠ですが、覚醒度が高い状態では冷静な判断力が失われています。せっかくのエネルギーを「机を叩く」などの衝動的な行動で消耗してしまうのではなく、冷静さを取り戻せるクールダウン法に振り向けるのが正しい対処法とのこと。

冷静な判断力を取り戻すためのクールダウン法について、同著では「呼吸法」「漸進的筋弛緩法」「カウンティング(数を数えて時間を稼ぐ)」「イメージ法(怒りが和らぐイメージ)」「リマインダー法(魔法の言葉)」の5種類が紹介されていますが、本稿では職場でもすぐにできる、「呼吸法」「漸進的筋弛緩法」の2つを取り上げることにします。

呼吸法は、「吸う」と「吐く」の長さの比率をコントロールすることで心を調節するものです。吐く秒数が長くなるほど、副交感神経が優位になりやすく、心身のリラックスができるようになります。『心の整えかた トップアスリートならこうする(NHK出版)』には「吐く」を長くするケースと、「吐く」を短くする 2つの呼吸法が紹介されています。

「吐く」を長くして、より深くリラックスする:緊張していたり、体が堅くなっていたりするときは、息を吸う割合と吐く割合を12にします。息を吸うときは4秒かけ、息を吐くときは8秒かけて、吐く時間を倍にするということです。最初は3回から5回ほどやってみましょう。副交感神経が優位になり、心や体が深く落ち着く方法です。

「吐く」を短くして、やる気を引き出す:落ち込んで、やる気が出ないときは、浅く速い呼吸をすると、交感神経が優位になり、やる気を引き出すことが可能になります。呼吸の比率を2対1に変えます。息を吸うときは4秒かけて、吐くときは一気に2秒以内で吐き出しましょう。これを3回から5回ほど繰り返してみます。

どちらの呼吸法も、慣れるまでは、秒数を数えることに集中してしまうかもしれませんが、練習を続けていくと意識的に数えなくても効果的な呼吸ができるようになるそうです。呼吸法とあわせて実践したいのが、筋緩和法です。これは、一つひとつの筋肉を意識的に収縮させ、その後で緩めていくリラクゼーション法です。

リラックスした身体の状態を認識するために最初に筋肉を収縮させます。例えば、「肩の力を抜いて!」と伝えても、「え、抜く? すでに肩の力は抜けていると思いますけど」という人が多く、なかなか力を抜けません。まず意識的に体に力を入れ、そして力を抜く。これを繰り返えすことで体の力が抜けている状態が理解できるようになるそうです。

参考文献:『過剰の問題地図』(関屋裕希著/技術評論社) 『心の整えかた』(田中ウルヴェ・京著/NHE出版)

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2022年10月20日 (木)

色違いによる効果的なリノベーションとは?

テレビ番組やコマーシャルの世界で使われる「クール」という表現は、日本の放送業界で使われる専門用語で、1年を1月から12月までの四半期、つまり3か月単位の4クールに分け番組編成を行うという習慣に基づいて使われてきた表現です。このクールが変わる時期には、全シーン図に放映された番組の評価があちこちで語られることになります。

ところで、2022年7月18日(月)~2022年9月19西(月)までフジテレビ系で流された番組に『魔法のリノベ』があり、それなりの評価を得ていたようです。リノベはリノベーションの略で、復元を目的としたリフォームと異なり、マンションを含む中古住宅に新しい空間を創造することを目的とする手法で、一部で人気になっているようです。

さて今回は、カラーコーディネーションで住まいの環境が大きく変わる可能性について、色に関する専門書からいくつか取り上げることにします。まずは入口から「玄関がオレンジ色だと温かみを感じる」と『彩流ハッピーライフ』という本にありました。オレンジ色はカジュアルで親しみやすく、家庭的なぬくもりを感じさせる色との評価です。

次はリビングです。ある実験では、四方を温かく感じるオレンジ色などの暖色系に塗った部屋と、見るからに寒く感じるブルーなどの寒色系に塗った部屋では、ドアを開けたときに瞬間的に感ずる温度差が、イメージとして3~4度もあるという検査結果があります。そして、暖色系の強い部屋にいると、実際より長い時間そこに居たと錯覚します。

そして、勉強部屋や書斎です。実は記録に大きな影響を与えます。受験勉強では暗記が必要な科目もありますが、こうした科目の学習効果は本人がリラックスできる環境(青を基調とした室内)にいると55~78%も向上するそうです。また、暗記力だけでなく、理解力の向上にも室内の色使いが影響し、理解度が73%も上がることがあるそうです。

最後はベッドルームです。こちらも勉強部屋や書斎と同じように青色系がおすすめです。青は副交感神経に働きかけ、血圧、脈拍、呼吸数などを低下させて心を落ち着かせる働きがあります。毎日しっかり寝ても疲れがとれない人は、「メラトニン」というホルモンによって調整される体内時計G乱れている可能性があると『彩流ハッピーライフ』に。

このメラトニンがしっかり分泌されていないと快眠できません。青は、メラトニンの原料になっている脳内物質「セロトニン」の生成を促進する効果があります。セロトニンが十分あればメラトニンもうまく生成され、しっかり分泌されれば快眠へと導くことが出来るので、ベッドカバーやシーツ、パジャマやカーテンに青色を取り入れるのがよいようです。

参考文献:『彩流ハッピーライフ』『色の秘密』『色の雑学辞典』『色の力』

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